第十七話「南の島へ」
ユーキたちは南へ向けて大空を飛翔していた。非公式な使者として南の国、クワクリルトン諸島共和国に派遣されることとなったのだ。
途中、南の気候特有の巨大な積乱雲を避け変針を余儀なくされたが、空の旅は快適だった。
完全域まで魔力を充填された転生人のユーキと、全ての魔法を飛行だけに注ぐ三人の魔法少女たちとのパーティーは長大な航続距離を誇る。
そして才能ある彼女たちの魔法回復力は、枯れることを知らない泉のようなものだ。ユーキの戦闘力と相まってこの四人は世界最強レベルの強行偵察部隊と言えた。
海の色が明るい青色に変わり始め、水平線に島影が見える。
島の中央にある首都、シヴァドゥン上空を過ぎ一行は更に南を目指す。
島の南端の街にギルドの建物を見つけると、屋上には一人の影が見てとれた。
「お出迎えだね」
「はい、着陸します」
こちらの接近を察知して、待機しているこの国の冒険者に違いなかった。ユーキら四人は速度を落として降下を開始、ふわりと着陸した。
「ようこそ、クワクリルトンへ。私の名前はゾーイです」
ユーキたちはそれぞれ名前だけの自己紹介を返す。一応、立場は密使だったからだ。
「これから南端の島まで飛びますが魔力は足りてますか?」
「大丈夫です」
フィローラたちから声が上がらないのでユーキが肯定の返答を返す。
「では……」
ゾーイの後に続きユーキたちも空へ飛び上がる。魔法を使いそして腰に差している剣でも戦う。女性の魔導闘士は珍しい存在だった。
しばらく飛び、一行は島の南端の先にある島、海沿いのリゾート施設の中に降り立つ。
「こちらです」
ゾーイに促されユーキたちはバンガローの点在する敷地の中を歩く。南国の風景に三人娘はキョロキョロと辺りを見回している。
「ここが皆様用の宿泊場所になります。中央に無料のレストランとプールがあるのでおくつろぎ下さい」
ゾーイはそう言ってその方向を伸び指す。
「ビーチは少し先にあります。すぐ近くですね。――入りましょう」
扉を開けて中に入るゾーイに、ユーキたちも続いた。大きなリビングにはソファーセットにミニキッチン、冷蔵庫、ダイニングのセット、寝室が二部屋。一見して長期滞在型の宿泊施設だと分かる。
「クローゼットには、このリゾートでの正装が用意してありますから、自由にお使い下さい」
ゾーイが寝室に進みクローゼットを開け放った。
「きゃ~~っ!!」
フィリスが悲鳴を上げる。中には色とりどりの水着と、その上に着る上着が並んでいたからだ。
「私はすぐ隣のバンガローを使います。着替えてきますから少しお待ち下さい」
ゾーイはそう言って部屋を出て行った。三人娘ははしゃぎながら水着や上着を引っ張り出して、あれだこれだと物色する。
「僕は隣の寝室に行ってみるよ」
この部屋はツインでエキストラベッドが一つ追加されている。
隣の部屋はツインのままだった。クローゼットの中には男性用の水着や上着が掛けられている。
しばらくして迎えに来たゾーイは、水着姿に裾の長い上着姿であった。
「ここでの正装です。皆さんも同じように着替えて下さい」
皆、各自の部屋に戻り同じような姿に着替える。ユーキはどうしようかと思い剣を持ってリビングに出た。
「この街では武器の携行は禁止されています。魔具もです」
「まあ、それはそうだよなあ……」
ユーキは部屋のクローゼットに剣をしまった。
「ちょっと恥ずかしいですね……」
フィローラがおずおずと部屋から出て来た。マリエッタとフィリスの二人は元気いっぱいでお互いのビキニ姿を冷やかしている。
「行きましょうか」
ゾーイの先導でユーキら五人はレストランに入り席に着く。昼時は過ぎていたので客はまばらだった。
「ランチのコースでよろしいですか?」
「うん、いいね」
ゾーイがウエートレスを呼びランチと飲み物をオーダーする。
ほどなくして運ばれてきた料理は豪華なシーフード料理で、まるで地中海リゾートの食事を思わせた。ユーキたち次々と料理を平らげる。
「ところで、ここのリゾートはどんな人たちが利用しているの?」
「他国も含めた貴族と成功した商人たちですね。政治家や行政官もいますよ」
「お金持ちのエリアって訳だ」
「西側にはダウンタウンがあって手ごろなホテルやお店があります。東側は高級別荘地ですね」
仕事と遊びの切替がなかなかに大変そうだ。自分は仕事に徹して娘たちには楽しんでもらおう、などとユーキは思った。




