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宇宙の虚無

無の定義にはお偉い方々も悩んでいるハズです。多分。

 宇宙旅行と言うのは、誰がどう考えても非日常だろう。


 地球を離れ、重力を忘れ、無の中を泳ぐ。


 それなりの対価を払ってできるこの体験はとても特別だ。日常を全て置いて行き、未知の神秘へと手を伸ばす。今の時代に生まれなければ、こんな事はできなかっただろう。


 時代と言えば、大昔の地球には魔力が無かったそうだ。化学だけが人間の武器だった時代。道具が無ければ個人は何もできない時代。僕には想像ができない。


 だけど、緻密に計算された化学は魔法と同等以上の力を発揮する。意思とか関係なく動く世界の摂理は安定性に優れていて、僕が乗っている宇宙船もほとんどが化学の力で動いている。案外、魔力が無くてもそんなに不自由は無いのかもしれない。


 でも、やっぱり魔力が有ると安心する。魔力は意思が引き起こす力だ。心次第で無限の可能性が生まれる。可能性は希望となり、希望によって魔力は増幅する。正のスパイラルだ。


 さて、そうこう考えているうちに星へ着きそうだ。今回の宇宙旅行の大目玉、魔法が存在しない星へ。生命活動に魔力を使っていない僕なら、無事到着する事ができるだろう。正直、不安だけど。


 宇宙船が、地に降りる。最新の技術で着陸の衝撃はほとんど無い。拍子抜けする程静かに、僕は魔無しの土地へと足を踏み入れた。宇宙服越しに見る景色は、間違いなく珍しいけれど、綺麗とは思えなかった。


 なんだか寂しい。共に宇宙旅行をしている観光客は何人か居るけれど、孤独感が拭えない。


 ふと、自分の中を見つめた。虚無だ。何も無い。さっきまで何かあったはずだけど、今は無い。……そうか、魔力が無くなったんだ。


 原因はこの星に満ちる虚無属性の魔力だと、僕は知っていた。しかし、「知っていた」と「体験した」の間には大きな違いがある。「知っていた」にはクオリアが欠けているんだ。だから、僕は不安を感じていた。魔力が無くなる感覚がわからなかったから。結果を知っていても、過程を知らなかったから。


 今の僕は、無力だ。大昔のヒトはこの状態で一生を過ごしていたのか。魔力を知ってしまった現代のヒトに、これを耐え続けられる者なんているのだろうか?


 早く、帰りた――


『ひゃぁお!! 魔力が無くなってるぅ!? すごいッ!』


 ……そうか。有毒だけどこの星には大気があるから、一応音は伝わるんだ。宇宙服の所為で声はくぐもるけど……。


『ミラクルサンダー! は使えない! ミラクルファイアー! も使用不可ァ! ミラクルレーザー!! 気合い入れてみたけどやっぱダメッ!』


 ……うるさいな、あの女の子。さっきまでの気持ちを返してよ。と言うか、ミラクルなんとかって何? 聞いたことないけど。オリジナル魔法?


『はあッ! せいッ! ほわっちょぉ! よし! 百パーセント魔力無しね!』


 なんかポージングし始めたぞ。宇宙服で。


『いやぁ、体が軽いわぁ。魔力が無くなったからかな?』


 いや、重力が軽いからだよ。


『よぉし! この星を堪能するぞー! めっちゃ楽しもう!』


 なぜ、あそこまでハイテンションなんだよ……!? 喪失感とかないのか……?


 あー、でも。あのヒト見てたら孤独感が紛れるかもしれない。観察しとこ。


宇宙は、広いです。

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