ペストマスクを被っていた男
適当にいきましょう。
とある昼下がり。親友同士の二人の男がのんびりと話をしていた。
一人はぶかぶかのトレンチコートを着た男で、ホットココアを飲んでいる。頭には小さなツノが二本生えており、その子供の様な姿からは小鬼が想起される。
もう一人は白衣を着た黒い肌の男だ。傍らにはペストマスクが置かれている。白衣の男はコーヒーをすすりながら、親友の話に耳を傾けた。
「ところでさ、何でこの前掃除箱に入ってたんだ? すっごいビックリしたんだけど」
「……どう言う事だ?」
「いやだから、一週間くらい前にさ、俺が掃除しようかなぁって思って掃除箱を開けたら中にそれ被ったお前が居たんだよ」
ペストマスクを指差しながら、小柄な男は言う。
「済まないが、心当たりがない」
「えー、うっそー。ウソはダメだよ、れ――」
「嘘ではない」
食い気味に白衣の男は答えた。場に不穏な空気が流れ始める。
「え、マジなの? じゃあ俺があの時見たのは?」
「幽霊じゃないか?」
「何でペストマスク被ってたんだよ」
「ホラー演出だろう」
「仕事熱心だなおい」
しかし、不穏な空気は適当に流された。
「それで、幽霊に何かされなかったか?」
「幽霊確定なんだ」
「他可能性もあるがわざわざ俺の天才的頭脳を使いたくない」
「んまぁ、別に被害があった訳じゃないしな。幽霊でいいや。あ、そう言えば掃除機を渡してもらったな」
「どんなやつだ?」
「最近買ったアレ」
「ああ、最新型のなんか凄いアレか」
最新型のなんか凄いアレは、とにかく凄い掃除機である。アレを使えば、僅か数十秒で部屋のゴミを全て駆逐できるのだ。
「そんで、普通にバババンッと掃除して、掃除箱に直そうとしたら居なくなってたな」
「何だったんだそれは」
「俺に聞かれても困る」
白衣の男はコーヒーを一口飲んで、提案する。
「念の為に例の掃除箱にお札を貼っておこうか?」
「どんな感じに?」
「こう、掃除箱の外側のランダムな位置に、ランダムな角度で五十枚くらい……」
「逆になんか出てきそう」
「だったら幾何学模様を描く様に……」
「そう言う問題じゃない」
結局何もわからないまま、グダグダと話は続いた。
この小説では人名が出ないのですよ。今更ですが。




