第77話:伝説の副船長と『元見習い』の涙の再会!〜レベル100の首輪をぶち壊す【覇権(ヘゲモニー)】の秘密を知り、大暴動の地上へ突撃する〜
レベル・オメガの重苦しい沈黙を破っていたのは、ソーンの荒い息遣いだけだった。
海中で『災厄』として恐れられるレベル118の傷だらけのネズミの獣人が、両膝をついていた。
ほんの数瞬前までその瞳に燃え盛っていた獰猛で不屈の光は完全に消え失せ、熱く止めどない涙が、泥と乾いた血にまみれた毛むくじゃらの鼻面に綺麗な筋を描いて流れ落ちていく。
アリックは無言のまま宙に浮いていた。
霊体の副船長は、ひざまずく巨獣をじっと見つめていた。
アリックは生前の記憶――すべての戦いと、かつてのクルー全員の顔を完璧に覚えていた。ただ、目の前にいるこの巨大で残忍なレベル118の戦士と、50年前に自分が救い上げたあのちっぽけで飢えたネズミとが、その言葉を聞くまで結びつかなかっただけなのだ。
「アリック船長……」
ソーンの声がひび割れた。その声には、二人を隔てる50ものレベル差など無意味にするほどの深い畏敬の念が込められていた。
「俺です……北のドックの凍てつく海から、あんたが引き上げてくれたあの小さなドブネズミです。見習い水夫だったソーンです。あんたが俺に最初の短剣をくれた。俺は……あの夜、あの船に乗ってたんです。『霊霧の覇王』が俺たちを待ち伏せした、あの夜に。呪いが甲板を直撃する直前、あんたが俺を海へ投げ飛ばしてくれたおかげで、俺だけが生き残った。必ずあんたの仇を討てるくらい強くなるって誓ったんです。だが俺はまだガキで、正確な場所すら覚えていなかった……この何十年もの間、どうしてもあの海域を見つけ出すことができず、最後には……諦めるしかなかったんです」
アリックのエーテルの体が微かに震えた。
彼から放射されていた絶対零度の冷気が、突如として柔らかく和らぐ。
亡霊は前へと滑るように進んだ。海の伝説は一言も発さず身を屈めると、凍てつくも優しい霧の手を、ソーンの傷だらけの頭の上にそっと置いた。
霊体の副船長の燃える眼窩から、純粋な氷でできた輝く涙が二粒あふれ出し、火山岩の床に落ちてカランと澄んだ音を立てた。
それは、50年の時を超えた船長と船乗りの再会だった。
すぐ近くに止まっていた巨大な【影を刈る鴉】が、感動したようにしゃがれた声で鳴いた。
その光景に胸を打たれ、その白い瞳から一筋の黒い「涙」が滑り落ちた――それは液体でも固体でもなく、床に触れる前に霧散する濃密な黒煙の塊だった。
ソーンは目を閉じ、何十年にもわたる「生き残ってしまった罪悪感」がついに洗い流されるのを感じながら、長く震えるため息を吐いた。
レオンは数歩後ろに立ち、レザーコートの上で腕を組みながらその光景を眺めていた。
8人目の人間の異常ではなかったという事実は、一瞬だけ苦い失望をもたらした。だが、目の前のレベル118の巨獣を見つめる彼の鼻面には、再び捕食者の笑みが戻っていた。
転生した魂は見つからなかったが、彼は同盟のために怪物的な戦力――『覇権』を持つ味方を確保したのだ。しかも、完全にタダで。
「感動的だな。実に俺の海賊の心が温まるぜ」
レオンはいつもの実利的で傲慢な口調で割り込んだ。
「つまりお前も、見習いだった頃はアリックにこき使われてたってわけか? 安心しろ、ネズミ。今あいつは、自分を呪った張本人を直接こき使ってるからな。『霊霧の覇王』なら俺たちの船に乗ってるぜ。今じゃそいつが見習い水夫だ――アリックが毎日欠かさず甲板のモップがけをさせてるよ」
ソーンは目を大きく見開き、そのあまりにもデタラメな事実を処理しようと瞬きをした後、胸の底から豪快で解放的な笑い声を爆発させた。
『災厄』は立ち上がり、鼻面を拭った。そして、かつての船長を従えるこの威圧的な犬の獣人に視線を固定し、その王者の風格と権威を肌で感じ取った。
「で、あんたは何者だ?」ソーンは深く好奇心に満ちた声で尋ねた。「名前はなんていう?」
「レオン。【海賊王】だ」
犬の獣人は誇らしげな笑みを浮かべ、彼を値踏みしながら答えた。
ソーンは純粋な敬意を込めてゆっくりと頷いた。「わかったぜ、レオン。先導してくれ」
「お前ら5人、出口まで案内しろ。行くぞ」レオンは服従させた海兵たちに命じた。
一行はレベル・オメガの暗闇を後にし、上昇を開始した。
脱獄した囚人たちがすでに道を切り開いていることを知りながら、果てしない石の螺旋階段を登っていく。
第5階層の重厚な鉄の扉を抜けると、ブロック全体が完全に無人になっているのが分かった。
回廊のど真ん中、破壊された武器庫の瓦礫の近くに、鋼の床へと重々しく突き刺さったままの「超巨大な武器」がそびえ立っていた。
ソーンは獰猛な笑みを浮かべて近づき、その柄を掴んだ。そしてたった一度の豪快な引き抜きで、重さ500キロはあろうかという黒鉄の怪物――自身の巨大な両刃の斧を床から引き抜いた。
「どうやら逃げ出した囚人どもの中には、こいつを持っていける奴はいなかったみたいだな」
ネズミの獣人はクスクスと笑い、そのマストドン級の武器を信じられないほど軽々と肩に担いだ。「哀れなレベル100風情には、重すぎたってわけさ」
彼らはさらに階段を登り続けた。第4階層、第3階層、第2階層。
第4階層から上は、背筋も凍るような惨状だった。回廊はどす黒い血で塗りたくられていた。独房の青いエネルギーガラスは粉々に砕け散り、エリート海軍看守たちの死体が至る所に転がっている。
サイの獣人、クロコダイル船長、そして激怒した緑の虎が率いる暴動は、止められない肉挽き機のようにすべてをなぎ倒しながら上層階へと突き進んでいたのだ。
血塗られた第2階層の不気味な静寂の中を歩いていると、天井から埃を振り落とすような、深くリズミカルな振動が響き始めた。
ドォォォン! ドォォォン!
地震ではない。地上で重砲が火を噴く、くぐもった轟音だ。
何千人もの人間、獣人、そしてモンスターたちの雄叫びが、岩盤を通して下まで響いてきていた。
「暴動が地上の中庭に到達したな」ソーンが傷だらけの耳をピクッと動かして言った。「海軍の奴ら、要塞を封鎖して重攻城兵器を展開し、囚人たちを押し戻そうとしてやがる」
「完璧だ。外は全員戦うのに大忙しってわけだな」レオンはポケットに前足を突っ込みながら微笑んだ。「おかげで、俺たちはおしゃべりする時間ができた」
レオンは隣を歩く巨大なネズミの獣人へとわずかに首を向けた。
「よし、ソーン。説明してもらおうか」海賊王は黄金の瞳を細めて要求した。「お前のステータスを見た。お前には異常の特性がない。俺みたいに別の世界から転生してきたわけでもない。なのにお前は『レベル100の壁』を突破している。【覇権】ってのは一体何だ?」
ソーンは前方の回廊に視線を固定したまま、押し潰されたロボット歩哨の残骸をまたいで進んだ。彼は低く、砂利を擦るような声で笑った。
「レベルってのは確かに存在する、レオン。嘘なのは『レベル100』の方だ」
ソーンは空っぽのホールに声を響かせながら語り始めた。
「あれは生物学的進化の頂点なんかじゃねえ。このクソみたいな水槽を作った奴が、全員を管理下に置くために課した檻――精神的かつ肉体的な『首輪』なんだよ。海賊やモンスターがレベル100に達すると、そいつの脳みそは勝手にシャットダウンしやがる。『お前は完成した。これ以上成長することはできない』ってな。そして、この海にいる99.9%の生き物はそれを信じ込む。それ以上先へは行けないと諦めて、足掻くことすらやめてしまうんだ」
ソーンは足を止め、レオンの方へと向き直った。
「【覇権】ってのは、概念的な限界突破だ。純粋で、絶対的な『傲慢さ』の証明なんだよ」ソーンは巨大な爪で自分のこめかみをトントンと叩きながら説明した。
レオンは眉をひそめ、真剣に耳を傾けた。
「限界を破るには、お前自身の魂が、目の前に浮かんでる青い数字よりも遥かに『重い』ってことを悟らなきゃならねえ」ソーンは濃密で息詰まるような重圧のオーラを脈打たせながら続けた。「この監獄を作った奴に、成長するための『許可』を乞うのをやめるんだ。覇権とは、お前自身の存在そのもので現実を上書きし、周囲の世界にお前の絶対的な意志をねじ込む力だ」
ネズミの獣人は一瞬言葉を切り、マストドン級の両刃の斧の致死的な刃を親指で撫でた。
「だがな、レオン。勘違いするなよ。天井をぶち破るってのは、ただスイッチをパチンと切り替えるような単純なもんじゃねえ」ソーンはしゃがれた声で笑いながら唸った。「首輪を引きちぎったまさにその瞬間、システムはお前の内側にどれだけクソでかい『飢え(渇望)』があるかに基づいて、お前の価値を再計算することを強制される。俺は限界を破っても、100からたったの101や102にしか上がらなかった獣どもを見てきた。そいつらの野心はその程度のちっぽけなもんだったってことさ。ただ縄張りの岩を守りたいとか、路地裏の喧嘩で生き残りたいとか、その程度の渇望には、システムも小銭しかよこさねえ」
ソーンは黄色い牙を剥き出しにし、誇り高く獰猛な笑みを浮かべた。
「だが、俺の飢えは『世界を喰らい尽くすこと』だった。俺が覇権を解放した時、俺の傲慢さはシステムをバグらせ、一息で100から『108』まで俺を跳ね上げさせたんだ」ソーンは鋼の胸当てを重い拳でドンと叩いた。「そして一度そのクソったれな上限が外れれば、もう限界なんて存在しねえ。あの日以来、俺は海中でモンスターや大将どもを八つ裂きにし続け、戦いから戦いへと一滴ずつ経験値を積み重ねて、今日の『118』まで登りつめた。覇権はお前の首輪を外す、レオン……だが、最初の飛躍を決めるのはお前の『傲慢さの大きさ』であり、その後どこまで登り続けられるかはお前の『飢え』次第だ」
ネズミの獣人はレオンを見下ろし、海賊王の威圧的な巨躯をじっと見据えた。
「お前はすでにその境界線に立っている。お前が俺の独房に足を踏み入れた瞬間から、俺にはそれを感じ取れた。お前は刃を抜くことすらなく、他人の精神を屈服させる『支配』を持っている。王のオーラを纏っている。お前にはもう、誰の許可も必要ないはずだ、レオン。必要なのは、たった一つの『覚醒』だけだ。お前のクルーだけでなく、世界そのものにお前の意志にひれ伏すよう命じるんだ」
レオンは無言のまま、ソーンの言葉の重みをすべて吸収していた。
レベル100の限界は、魚をおとなしくさせておくためのただの嘘だった。最初の飛躍も、その先の無限の上昇も、すべては己の魂をどこまで押し上げたいかという「渇望」だけに懸かっている。
電撃のような期待の震えが、レオンの背筋を駆け抜けた。
彼の犬の鼻面が、ゆっくりと、壊滅的な笑みに歪んでいく。
「いいことを聞いたぜ」
レオンは新しく恐ろしい光に燃える黄金の瞳で、静かに囁いた。
彼らは回廊の突き当たりまで進んだが、扉を壊す必要すらなかった。
地上1階と彼らを隔てていた巨大な強化鋼の扉はすでに蝶番から完全に外れ、緑の虎、クロコダイル、そしてサイの壊滅的な腕力によって外側へとグシャグシャにひしゃげていたのだ。
そのねじ曲がった金属の敷居の向こう側、開けた空の下には、全面戦争の光景が広がっていた。解放された何千人もの囚人たちが、海軍の大隊や攻城兵器と凄まじい暴力で激突している。カオスは絶対的だった。
レオンは敷居の上で足を止め、【暗黒の短剣】を抜き放った。その胸の中で、深紅のオーラが猛烈に脈打ち始める。
「空を拝みに行こうぜ、野郎ども」レオンは唸った。「【海賊王の鼓動】!!」




