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第59話:【運】の極致が生んだ奇跡の石ころ!〜怒りでバグステータス【支配】が発現し、海軍大将をひれ伏させ無血開城させました〜

首を刎ねられたエリアスの死体は、すでに黄金の灰となって凍てつく海風に吹き飛ばされていた。


だが、岩だらけの海岸に訪れた静寂は、ほんの一瞬しか続かなかった。


基地の中央広場から、武器の激突音、スキルの炸裂音、そしてクルーたちの咆哮が、先ほどよりもさらに凄まじい勢いで響き渡ってきたのだ。


「ぐぅッ……!」


突然、鈍い痛みがレオンの胸を貫き、彼は歯を食いしばってうずくまった。

彼の【絆(BOND)100】のステータスは、一切の休息を与えてはくれなかった。


槍の突き、斬撃、クロスボウの矢。

彼のクルーの鱗や装甲で砕け散るすべての衝撃が、苦痛の波となって彼に直接伝達されていた。


【海軍支配の盾(イージス)】によって未だ狂信的な力に燃える海兵たちは、容赦なくモンスターたちを包囲し、叩きのめしている。

そしてレオンは、その一つ一つの痛みを自らの細胞の隅々で感じていた。


(俺の甘さのせいだ……クソッ!)


レオンは黒い血の塊を吐き捨て、誰も殺すなと命じた己の決断を激しく後悔した。


彼のモンスターたちは犠牲者を出さないよう手加減し、操られた無実の人間を守るために、敵を吹き飛ばすか武装解除するにとどめていた。

だが、イージスの狂信に駆られた海兵たちは「殺すため」に戦っている。


その名誉ある命令が、今や死刑宣告になりつつあった。

彼の軍隊が受ける致命的なダメージは、すべて船長であるレオンの体へと注ぎ込まれていたのだ。


◇ ◇ ◇


一方、湾に密かに停泊している弩級戦艦(ドレッドノート)の上。


麻痺して動けないポールとアナベルを警護していた2体の【マストドン捕食キノコ】は、ある重大な変化に気づいていた。


操り人形師エリアスの死により、二人の士官の目を覆っていた乳白色の膜が完全に消え去り、彼らの瞳が透明な本来の輝きを取り戻したのだ。


マインドコントロールは解けた。

残るは、キノコ自身が放った胞子による筋肉の麻痺だけである。


2体の巨獣は巨大な傘を素早く収縮させ、濃密な【回復胞子】の雲を放出した。

黄金の粉がポールとアナベルの体に吸収され、瞬時に麻痺を無効化する。


「はっ……!?」


二人の士官は方向感覚を失ったまま飛び起きた。


一体何が起きたのか、どうやって頭の中の霧が晴れたのかも理解できないまま、彼らはキノコたちが踵を返し、広場に向かって猛ダッシュで船を降りていくのを見た。


一秒後、大地を揺るがすような凄まじい轟音が響く。

仲間たちの咆哮と、海軍との激しい戦闘の騒音だ。


「悠長にしてる暇はありません!」ポールがサーベルを抜き放ちながら叫んだ。


アナベルも力強く頷き、ポールの肩をしっかりと掴むと、ドラゴンの翼を広げて空へと飛び立った。


街の上空を飛ぶ彼らの目に飛び込んできたのは、止まらない装甲の波に飲み込まれ、極限の窮地に立たされている仲間たちの姿だった。

空中にとどまったまま、二人の士官は自らのスキルを融合させた。


ポールのサーベルが空気を切り裂き、深緑の破壊的な上昇気流を生み出す。

アナベルは短剣から、目を眩ませるような緋色の熱量を爆発させた。


「「【炎の嵐(ストーム・オブ・フレイムス)】!!」」


二人の声が重なる。

深緑の突風と真紅の炎が織りなすマストドン級の巨大なサイクロンが、広場の中央に真っ直ぐに墜落した。


だが、他のクルーたちとは違い、ポールとアナベルはレオンが「命を奪うな」と命令した時、気を失っていた。

海兵たちに慈悲をかける必要など、彼らは知る由もなかったのだ。


それは、純粋で無慈悲な殺意をもって解き放たれた攻撃だった。


着弾の衝撃は、まさに黙示録だった。


熱爆発が数百人の兵士を一撃で焼却・吹き飛ばし、モンスターたちを苦しめていた包囲網を、業火のインフェルノで一瞬にして粉砕した。


海岸にいたレオンの青いインターフェースが、その突然の巨大な大虐殺に反応し、勝利のチャイムと共に眩く発光した。


【 海軍大隊を討伐しました! 経験値を獲得! 】

【 総合レベルアップ! クルー全員が1レベル上昇! 】


【 キャプテン総合ステータス 】

名前: レオン | クラス: 海賊船長 | レベル: 93

HP: 765 / 765

攻撃力 (ATK): 665

防御力 (DEF): 530

速度 (SPD): 910

運 (LUCK): 200 (限界値、7つの海の指輪により2倍)

絆/シナジー (BOND): 100 (異常ステータス)

支配 (DOM): 100 (異常ステータス)

残りステータスポイント: 20


【 クルーステータス 】

最大容量:34 / 36 スロット使用(2スロット空き)

エンピリアン・ドラゴン - レベル: 94

インフェルナル・セラフ - レベル: 92

アリック (霊体の副船長) - レベル: 90

キング・トリトン - レベル: 90

ポール (精鋭戦士) - レベル: 90

アナベル (冥界の暗殺者) - レベル: 90

霊霧の覇王 - レベル: 90

原初の火山ヒドラ - レベル: 90

始祖の火山蜂 (x10) - レベル: 90

鉄茨のベヒーモス - レベル: 90

マストドン捕食キノコ (x2) - レベル: 90

悪魔のグール (x3) - レベル: 90

影を刈る鴉 - レベル: 90

深淵のオーク (x3) - レベル: 90

巨大な双子ドワーフ (x2) - レベル: 90

装甲ガニ (x4) - レベル: 90


レベルアップの黄金の波がレオンを洗い流す。

一瞬にして疲労は消え去り、共感痛(エンパシー・ペイン)によって引き裂かれた筋肉組織が再生し、HPが最大値まで回復した。


クルーが受けるダメージの急減と、システムによる回復。

再び肺に燃えるようなエネルギーを満たし、レオンは深く息を吸い込んで立ち上がった。


だが、危険は去っていなかった。


彼から数歩離れた場所で、エリアスの死による混乱からちょうど立ち直った狐の獣人(フォックスマン)大将(レベル95)がいた。


広場の轟音を聞き、破壊の光景を見た大将は、状況を完全に誤解していた。

レオンこそがすべての元凶であると確信した彼は、未だにイージスのバフを血に滾らせたまま、跳躍と共に剣を拾い上げた。


レオンが共感痛から回復する隙を突き、狐の獣人は致命的なスピードでダッシュし、船長の首に真っ直ぐに斬撃を放った。


レオンがそれに気づいたのは、最後の1ミリ秒だった。

910ポイントの速度(SPD)を注ぎ込み、彼は間一髪で【音無き暗殺者の短剣】を掲げた。


ガキィィィンッ!


耳をつんざくような金属音。

レオンは頸動脈のわずか1センチ手前で攻撃を防いだが、バフを受けた大将が放つ運動エネルギーは恐ろしいものだった。


残酷な衝撃により、船長は後方へ吹き飛ばされた。

火山岩の地面にブーツを擦り付けて踏みとどまろうとしたが、その反動の最中、レオンの踵(かかと)が、なんの変哲もない『出っ張った小さな石ころ』にガッツリと引っかかった。


「おっとぉ!?」


バランスが崩れる。両腕が不格好に宙を舞い、恐怖の海賊船長は、土埃の中に尻餅をつくという、あまりにも滑稽で悲惨な転び方をしてしまった。


狐の獣人大将は動きを止め、剣を下げて嘲笑を浮かべた。


「自分の影につまずくとはな、野良犬が」

狐は軽蔑の念を込めてシューッと息を吐き、鋭い目で彼をより注意深く観察した。


そして、その視線に認識の光が走る。


「待て……貴様、海軍が死体のみ・10万ゴールドで探しているあの『犬人』か。丁度いい、手加減はしないぞ」


レオンの心に、氷のような静寂が降りた。


クソみたいな石ころにつまずき、敵の目の前で尻餅をつき、嘲笑される。

その屈辱が続いたのは、ほんのコンマ1秒だけだった。


次の瞬間、それは純粋で、盲目的で、絶対的な『激怒』へと変わった。


レオンは勢いよく立ち上がった。長いレザーコートから土埃が滑り落ちる。

彼の犬の瞳は緋色の光を放って燃え上がり、大将を致死的な激しさで睨みつけた。


彼の新たな異常ステータス――支配(DOM)100――が、その抑えきれない怒りに反応し、血の中で振動し始めた。


「いい加減にしろォッ!!」


空気を震わせるほどの、絶対的な怒りに満ちた咆哮。


その怒りが触媒となった。

純粋な黄金のエネルギーの爆発が彼の胸から噴出し、目に見えない波となって狐の獣人を真っ向から直撃した。


眩い閃光が、大将の足をその場に縫い止める。

まるで怪物的な重力がのしかかったかのように、彼を地面に押し潰したのだ。


システムが船長の目の前で点灯し、勝利のチャイムを鳴らした。


【 異常ステータス共鳴(アノマリー・レゾナンス):支配(DOMINION) 100 】

【 新パッシブスキル解放:船長の絶対権限(キャプテンズ・オーソリティ) 】

説明:使用者の支配的なオーラが、絶対的な重力と精神的圧力を及ぼします。自身の領域内において、人間および知覚を持つ精神の意志を打ち砕き、服従させることが可能になります。


その波動をまともに受けたレベル95の恐るべき将校は、レオンから数歩離れた岩の上に膝をついていた。


先ほどまで海賊犬に対して抱いていた恐怖は、今や純粋で、明晰で、麻痺するような『絶対的服従』へと変わっていた。

彼はレオンの鼻面を見つめたまま、新しい黄金のオーラの重圧の下で筋肉一つ動かすことができなかった。


将校が自らの意志に屈するのを見下ろしながら、レオンの心に眩い閃きが走った。


(俺の『運』……)


レオンは目をわずかに見開き、悟った。


(偶然じゃなかったんだ。俺の運(LUCK)200が、わざと俺を石につまずかせた。この新しい異常(アノマリー)を共鳴させ、スキルを解放するためには、俺が本気で怒り狂い、屈辱を絶対的な『激怒』に変える必要があったってことを、システムは分かっていたんだ)


さらに、そのオーラが自分の呼吸の延長のように自然に広がっていくことに意識を集中させた時、彼は先ほど殺した操り人形師との能力の『質の違い』にも気づいた。


(この異常(アノマリー)は、俺のクラスに適応したんだ)


船長は拳を握りしめ、結論付けた。


(蜘蛛の獣人は、精神を操るためのアクティブスキルを発現させ、糸を物理的に作って操り人形をコントロールする必要があった。だが、俺は『海賊船長』だ。俺のステータス100は、小細工のように発動させる必要なんてない。これはパッシブな存在感であり、自分より格下の者の意志を否応なしに屈服させる、生得的で圧倒的な権威なんだ)


この啓示に満足し、自分の新しい絶対的な力に自信を持ったレオンは、三角帽子を被り直した。


無駄にしている時間はない。広場ではモンスターたちが血を流しているし、片付けなければならない問題がある。


「剣を拾え」


レオンは氷のように冷たく、絶対的な声で命じた。


一切の躊躇なく、狐の震える手が前に飛び出し、絶対的な服従の本能に従って岩の間に落ちていた武器の柄をしっかりと握りしめた。


「動け」レオンは唸り、電光石火のスピードでダッシュした。「司令官のところへ行き、この無駄な戦争を終わらせるぞ!」


音を立てることも許されず、船長の絶対権限のグリップに押し潰されたまま、大将は瞬時に立ち上がり、レオンの後に続いた。

二人は海岸から離れ、要塞へと向かって狂ったような絶望的なスプリントを開始した。


巨大な跳躍で指令塔の壁をよじ登り、レオンは上部のバルコニーに重々しく着地した。そのすぐ後ろに、服従した大将が続く。


そこでは、致死の吹雪と高圧の水の衝突の中、ペンギンの司令官がアリックを相手に絶望的な戦いを繰り広げていた。限界を超えて追い詰められているのは司令官の方だった。


レオンの到着が、その衝突を突然中断させた。


司令官は動きを止め、荒い息を吐いた。彼の信じられないという視線は、犬の海賊と、彼に忠誠を誓う猟犬のように無言で従順に立つ恐るべき狐の獣人大将の間を行き来した。


レオンの黄金のオーラが広がり、空気を飽和させ、ペンギンの肩に耐え難い巨石のようにのしかかる。

レオンは無慈悲な赤い目で彼を見つめ、絶対的な権威をもって言葉を紡いだ。


「ペンギンの司令官。この無駄な戦争を終わらせろ」


その逃れられない力と、服従した前衛の姿に完全に心を折られた司令官は、震えながら永久凍土の杖を下ろした。


眼下の基地全体に響き渡るよう軍事力で増幅されたひび割れた声で、彼は叫んだ。


「や、やめろ……! 全海兵に告ぐ……戦闘を停止せよ! 武器を置け!」

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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次回もよろしくお願いいたします。

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