第52話:俺の短剣で自分を刺しても痛くない!?〜【記憶の霧】にクルー全員が眠らされるも、無効化スキルの力で幽霊たちと対峙する〜
巨大な【魔導海賊弩級戦艦】は、起源の航路の暗い波を切り裂き、その後ろに真っ黒な煙の濃い航跡を残していた。
指揮甲板では、レオンが提督から奪った海図に身を乗り出し、爪でフクロウの獣人がいるというガラクタの島への航路をなぞっていた。
「この方角に真っ直ぐだ、アリック」
船長は霊体の副船長に地図を見せながら言った。
幽霊は無言で頷いた。その両目は強烈な氷の光を放ち、霧の両手はしっかりと操舵輪を握りしめていた。
少し離れた場所では、雰囲気はもっとリラックスしていた。ポールとアナベルは手すりにもたれかかり、心から笑い合っている。過去の戦いのアドレナリンは、ようやく訪れた安らぎの時間に道を譲っていた。
リザードマンの少女は甲板に即席の焼き網をセットしていた。彼女は自らの炎のスキルをごく微弱な力で巧みに操り、賞金稼ぎたちの船倉から略奪した巨大でジューシーなステーキを焼き上げ、船中に美味しそうな香りを漂わせていた。
「34体もの巨大モンスターの飯を作るなんて、まさに悪夢よ」
アナベルは文句を言いながら、焼けた巨大な海獣のステーキを背後へ放り投げた。
星の光とクリスタルでできた【エンピリアン・ドラゴン】が、飛んできた肉を深い好奇心で見つめていた。しかし、おやつをキャッチしようと口を開けた瞬間、誤って星の光のビームを極小出力で放ってしまった。ステーキは瞬時に原子レベルで消滅した。
荘厳なドラゴンは悲しげな鳴き声を上げ、かつて自分の食べ物があった空間をじっと見つめながら、目に見えて落ち込んでその輝く翼をだらんと垂らした。
一方、【祈りの炎のセラフ(インフェルナル・セラフ)】は、天使のような優雅さで背筋を伸ばして座り、両手を膝の上で重ねて忍耐強く自分の順番を待っていた。
すぐ隣で、3体の【悪魔のグール】たちが、路地裏の野良犬のように一本の骨を巡って激しく取っ組み合っているのとは、完全に場違いな光景だった。
「船長!」
ポールが嬉しそうに尻尾を振りながら声をかけた。
「この極上の肉を食ったら、海に飛び込んで少しレベル上げしませんか? 下の連中も十分休んだはずですよ」
レオンは姿勢を正し、操舵輪から離れると、得意げな笑みを浮かべて首を横に振った。
「今のところ、俺たちは十分に強いさ、ポール。今この瞬間に無理をする必要はない」
だが、彼の視線は突然、好奇心と打算に満ちたものに変わった。
「強いと言えば……ちょっと試してみたいことがあるんだ」
困惑する二人の士官の視線を浴びながら、レオンはベルトに手を伸ばし、グロッグの宝箱から盗んだばかりの致死の刃、【音無き暗殺者の短剣(品質:エピック)】を抜いた。
一切の躊躇なく、船長はレザージャケットの袖を捲り上げ、その黒い刃を自らの腕に突き立て、力強く押し込んだ。
「船長! いったい何をしてるんですか!?」
アナベルが悲鳴を上げ、危うく肉を火の中に落としそうになった。ポールの目もショックで見開かれていた。
しかし、刃は簡単には沈まなかった。力強く突き立てたにもかかわらず、レオンは自分の皮膚を貫通させるのに信じられないほど苦労していた。表面をかろうじて傷つけるのが精一杯で、血の一滴も流れない微小な切り傷しかできなかった。
まさにその瞬間、船全体を共有する「ビクッ」という痙攣が揺るがした。
ポールは本能的に自分の前腕に手を当て、「チクッ」とした痛みに牙を剥いた。アナベルも同じように自分の鱗に覆われた腕を見た。
彼らの背後では、眠っていた巨大な【鉄茨のベヒーモス】が重々しく唸り、全く同じ場所を不器用に掻いていた。
巨獣たちからなる巨大なクルー全員が、ほんの僅かな、ほとんど笑えるほどの痛みを感じたのだ。
船長は短剣を鞘に収め、自らの表面的な傷が瞬時に癒えるのを見た。彼の犬の鼻面は、驚愕の笑みに開かれた。
エピック武器による自傷ダメージが、文字通り細分化され、分割され、軍隊全員の計り知れないHP(体力)の蓄積によって吸収されたのだ。
「なんて素晴らしいステータスだ……」
レオンは無傷の腕を感嘆の目で見つめながら囁いた。
「もしこれを200まで引き上げたら、どうなるんだろうな?」
彼の戦術的な頭脳は、即座に計算を始めた。
彼の【7つの海の指輪】は、最も低い数値のステータスを自動的に2倍にする。これまでは、運(LUCK)が100でその対象だった。
しかし、グロッグの異常を取り込んだ今、絆/シナジー(BOND)もステータスの一部となり、同じく100になっていた。
最小値で並んだ今、レオンはアーティファクトに「新しい方のステータス」を選ばせるよう強制できるのではないかと期待した。BONDが200になれば、彼は不可侵の神になれると確信していた。
素早い動作で、船長はプラチナの指輪を指から外し、再び嵌め直した。
指輪の青いクリスタルが輝き、システムが目の前に開いた。
【 運(LUCK)と絆(BOND)の同値の最小値を検出しました。 】
【 オリジナル・アノマリーの優先計算:適用 】
【 運(LUCK):100 -> 200 】
【 絆/シナジー(BOND):100 -> 変更なし 】
レオンは青い画面を睨みつけ、鼻を鳴らした。グロッグのBONDは容赦なく100に固定されたままで、結局LUCKが2倍のボーナスを主張しに戻ってきたのだ。
「まあ、そう簡単にはいかないか……」
レオンは呟き、その考えを横に置いた。
しかし、再びくつろぐ暇はなかった。輝く朝の太陽が残酷に飲み込まれた。
不自然で濃密な、不気味なアメジスト色の霧が、カーテンのように海に降り注いだ。視界は一瞬にしてゼロになった。
突然、ドレッドノートの巨大な船体が激しい衝撃に見舞われた。
原初の木材が何か硬いものに激しく軋み、鈍い音と共に船が座礁し、クルーたちはよろめいた。
一瞬だけ霧の壁が晴れた隙間から、ギザギザの岩と何百隻もの腐りかけた難破船で形成された、予想外の不気味な【墓場島】のシルエットが浮かび上がった。
ポールがよろめきながら、精巧な黄金のアーティファクトを肉球に握りしめて彼の方へ走ってきた。
「船長! 座礁しました! デッドゾーンに入ったみたいです!」
猫の獣人は叫んだが、その声は突然、制御不能な欠伸によって遮られた。
「グロッグの船で見つけた魔法のコンパスが狂ってます……もう北を指してない……それに、なんだか急に、ものすごく眠くて……」
レオンは眉をひそめた。
「ポール、しっかりしろ。アナベル!」
船長はリザードマンの少女を振り返ったが、彼女は火鉢のそばにへたり込み、すでに深い眠りに落ちていた。
彼女の周囲では、鈍くリズミカルな重い寝息の音が船を満たし始めていた。ドワーフたちも、カニたちも、そしてアリックや巨大なエンピリアン・ドラゴンでさえも目を閉じ、木の甲板の上でカタトニア的な眠りに崩れ落ちていた。
青いインターフェースが微かに光った。
【 記憶の霧を検出。精神状態の改変(睡眠/催眠)の試み。 】
【 パッシブ「不朽の肉体」が発動。完全な免疫が付与されました。 】
「環境攻撃か……」
レオンは歯擦音を漏らした。
キノコの島で身につけた極限の耐性のおかげで、彼は文字通り、何マイルも続くこの海域で唯一意識を保っている存在となっていた。
地面に崩れ落ちたポールを起こす間もなく、霧が実体を持った。
紫色の煙でできた何十体もの空気のような人影が、蒸気の中から現れた。彼らには顔がなく、ただぽっかりと開いた口だけがあった。
インターフェースが暗赤色に変わる。
【 記憶喰らいの亡霊 - レベル65 】 x40
亡霊たちは音もなく甲板に滑り込み、何の労力もかけず、ポール、アナベル、そして眠っているすべての巨獣たちをその霧で包み込んだ。
彼らは物理的に船から全員を持ち上げ、墓場島の崖の方へと引きずり、暗闇の中へと消えていった。
「俺のクルーからその煙の手を離せ!」
レオンは唸った。
彼は前へダッシュし、【音無き暗殺者の短剣】を抜き放ち、アナベルを運んでいた亡霊を真っ二つに切り裂く致死の一撃を放った。
フッ。
エピック武器の刃は、まるで空を切るように亡霊の体をすり抜けた。衝撃はない。ダメージもない。
かつてアリックに挑んだ時と全く同じことが起きていた。
記憶喰らいの亡霊たちは、魔法に免疫がある彼を完全に無視し、島の中へと消え、彼の家族全員を連れ去ってしまった。
レオンはドレッドノートの無人の甲板に一人取り残された。彼は短剣を鞘に収め、歯を食いしばった。
彼には戦い方は分かっている。だが、一つだけ絶望的に苦手なことがあった。それは「方向感覚」だ。
ポールやアナベルがナビゲートしてくれなければ、右も左も彼にとっては完全に抽象的な概念だった。
「よし、論理的に考えよう」
レオンは自分に言い聞かせながら、グロッグから奪った地図を広げた。
彼は丸一分間、眉間にしわを寄せてそれを真剣に見つめた後、自分が地図を完全に「逆さま」に持っていたことに気づいた。彼はそれを丸めて霧の中に投げ捨てた。
「最高だ。あいつらがどこに行ったか、クソほども分からねえ」
レオンは自分自身に認めた。
彼は座礁した船から飛び降り、暗いトンネルと壊れた古いガレオン船の迷路のような、島の霧に包まれた岩だらけのビーチに着地した。
「右は開けた道。左は沼。よし、真っ直ぐ行こう」
そして彼は、最も茨の生い茂る難破船の塊の中へと直接飛び込み、完全に当てずっぽうに進み始めた。
それは悲喜交々の行軍だった。
彼は剥き出しの根につまずき、泥だらけの斜面を無様に転げ落ちた。霧の中に潜む影の敵を処刑しようと凶暴な唸り声と共に剣を抜いたが、自分がただの「特に不格好な腐った丸太」を威嚇しているだけだと気づいたこともあった。
「口の利き方に気をつけろよ」
レオンは丸太に警告し、再び歩き出した。
彼は三度も間違った方向へ進んだ。ようやく、岩の頂上に座礁した古いガレオン船の腐った木の甲板を発見した。
もっと見晴らしの良い場所に出ようと、レオンは上に登り、最も威圧的な『キャプテンのポーズ』を決め、緩んだ板の上に勝ち誇ったようにブーツを置いた。
バキィッ。
腐った木材は一瞬で崩れ落ちた。
英雄的な登場とは裏腹に、レオンは非常にみっともない悲鳴を上げながら、重力に引かれて虚空へと真っ逆さまに落ちていった。
ドサァッ。
レオンは腰をさすり、木屑を吐き出しながら立ち上がった。彼は天井を突き破り、島の【ボス部屋】のど真ん中に正確に着地したのだ。
壁はアメジストのクリスタルで覆われていた。
彼の目の前には、空中に浮かぶ霧の泡に閉じ込められたクルー全員がまだ深く眠っており、亡霊たちが彼らの記憶を貪り食おうと準備を整えていた。
レオンは自分が落ちてきた穴を見上げ、それからプラチナの指輪を見つめた。
彼は世界で一番方向音痴なナビゲーターかもしれないが、運(LUCK)200を持つ彼にとって、「適当に歩く」ことは統計的に最も確実な戦術なのだ。
40体の記憶喰らいの亡霊たちが彼の方を向き、怒りのシャーッという音を立てた。
最も巨大な一体が前に浮かび上がり、身の毛もよだつような、歪んだ無音の笑いをレオンの心に直接響かせた。物理的な武器が彼らの空気のような体には全く通じない、脆弱な肉の生き物を嘲笑う、精神的な冷笑の波だ。
レオンは長いレザーコートのほこりを払い、悪魔のような笑みを浮かべて背筋を伸ばした。
「お前らが笑うのも無理はない」
船長は彼らの無言の優越感を完璧に読み取り、そう認めた。
「俺の物理的な武器はお前らには何一つ通用しない。だがな……俺の『記憶』は完璧に機能しているんだ。前回、お前らみたいな幽霊どもをどうやってぶちのめしたか、正確に覚えてるぜ」
その傲慢さに激怒し、亡霊たちはもう待たなかった。
耳をつんざくようなヒス音と共に、彼らは犠牲者の本質そのものを食い尽くす幽霊の火、【暗黒の炎】の波を解き放った。
炎はレオンを真正面から直撃し、彼を致死の火柱で包み込んだ。幽霊たちは勝利の雄叫びを上げ、彼を焼き尽くしたと確信した。
しかし、炎の中心で、レオンは微動だにしなかった。
暗黒の炎による巨大で致命的な魔法ダメージは、彼の【絆(BOND)100】のステータスによって誘導され、瞬時に分割され、細分化され、泡の中にいる30体の巨獣たちの莫大なHPに再分配されていた。
すべてを考慮しても、レオンはただの少し煩わしい熱気を感じただけだった。
降り注ぎ続ける暗黒の炎を完全に無視し、レオンは前へダッシュした。
【無限跳躍】の進化版である【空の支配】を発動させ、船長はマナの円盤を実体化させ、対象の慣性と重量を完全に無効化した。
何トンもの質量を反重力で和らげながら、レオンは文字通り、眠っている3体の巨大な【深淵のオーク】を掴み、かつてない暴力で彼らを揺さぶると、洞窟の岩の上に重々しく落とした。
その衝撃は彼らを目覚めさせるのに十分だった。3体の巨獣は目を開き、装甲に覆われた頭を振って霧の昏睡から抜け出した。
「起きろ、このケダモノども!」
レオンは空気のような存在を指差して吠えた。
「奴らを引き裂け! 水を使え!」
眠っている間に誘拐されたことに激怒した深淵のオークたちに、二度命令する必要はなかった。
彼らはエラと顎を大きく開き、超高圧の【海の水】の弾丸を亡霊たちに向かって爆発させた。
短剣の鋼鉄とは違い、深淵の祖先の魔法は亡霊たちを壊滅的な力で打ち据え、彼らの空気のような体を悲鳴を上げる煙の雲へと散らしていった。
オークたちが敵を牽制して砲撃を開始する間、レオンは一瞬たりとも立ち止まらなかった。
【空の支配】の反重力を使い、彼は暗黒の炎の中を軽々と移動し、キング・トリトンを掴んで乱暴に揺すって起こし、すぐさまマストドン級の装甲ガニたちへと移っていった。
数秒のうちに、クルーの潜水強襲小隊全体が目覚め、激怒し、その呪われた島から幽霊たちを完全に根絶やしにする準備を整えた。
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