第36話:Lv68原初ヒドラを空中ワンパン!〜伝説の燃料石をゲットして戻ったら、海軍に愛船を木っ端微塵にされて船長のガチギレが止まりません〜
火山の火口への降下は、まさに地球の中心へと向かう真の旅だった。
玄武岩のトンネルの暗闇を深く進めば進むほど、空気は濃くなり、硫黄の匂いと肌を焦がすような熱気が立ち込めてきた。
しかし、レオンの軍隊にとって、その過酷な場所は単なる「狩り場」に過ぎなかった。
先陣を切るのは、10体の巨大な【始祖の火山蜂】だ。
彼らはマグマと灰の海を完全に我が物顔で飛び回り、光る毒針で暗いトンネルを照らし出していた。
その後ろには、攻城塔のような巨獣たちが続く。
鉄茨のベヒーモス、巨大な双子ドワーフ、そして装甲ガニたちだ。
レオンはその陣形の中央を、真の海の王としての自信に満ちた足取りで堂々と歩いていた。
彼が歩くたびに【斬り込み用の鎖鉤】の重い鎖がリズミカルな音を立てる。
「一番底にぶち当たるまで止まるな」
船長は命じた。
「陣形を崩すな。俺たちの行く手を阻むバカな獲物は、片っ端からすり潰せ」
火山ダンジョンは彼らを待たせなかった。
溶けた岩の壁から、巨大な精霊型モンスターたちが次々と姿を現したのだ。
青いインターフェースが点滅し、レオンの視界に深紅の文字で新たな名前が埋め尽くされる。
【 マグマゴーレム - Lv.61 】×8
【 黒曜石のサソリ(オブシディアン・スコーピオン) - Lv.63 】×6
「もはや、この程度の数字じゃ驚きもしませんね」
ポールが溶岩の光に照らされた猫の牙を覗かせてニヤリと笑った。
精鋭戦士に昇格した彼は、首をポキッと鳴らして剣を握り直す。
「さあ、掃除の時間です」
レオンは【船長の鼓動】を発動する必要すら感じなかった。
レベル50を超える30体の獣たちで構成された彼のクルーの火力は、すでに止められない災害と化していた。
新たな悪魔の姿とドラゴンの翼を得たアナベルは、マグマゴーレムの群れの中へ飛び込んだ。
炎属性のパッシブダメージが倍増した彼女は、敵の炎を文字通り吸収し、輝く【炎の刃】による致死のダンスで彼らの首を次々と刎ねていく。
その上空では、10体の火山蜂が黒曜石のサソリたちに濃縮された溶岩の雨を降らせていた。
そして、その殺戮の真っただ中で――彼らは信じられないほどリラックスしていた。
「もう、最悪……熱すぎて鱗がカサカサになっちゃうわ」
アナベルが敵の攻撃を避けながら、文句を言った。
その言葉を聞いた霊体の副船長アリックが、無言でスゥッと彼女の背後に近づき、冷たい氷のオーラを彼女の肩に吹きかけた。
「あ、ありがとう、アリック。すごく気持ちいいわ」
一方、ポールは倒したばかりの巨大なマグマゴーレムの背中(まだ赤熱している)の上に、巨大な海獣の肉を並べていた。
「船長、串焼きが焼けましたよ!」
ポールは【雷の刃】で器用に肉を切り分けながら、楽しそうに叫んだ。
「おう、サンキュー!」
レオンは飛んできた熱々の肉串を空中でキャッチし、それをムシャムシャとかじりながら、片手で鎖鉤を振り回して迫り来るサソリの頭を叩き割った。
「悪くない味だ。ちょっと焦げてるがな」
レベル60オーバーの死のダンジョンだというのに、彼らはまるで地獄でピクニックをしているかのようだった。
この灼熱の前室での一方的な大虐殺は、丸1時間続いた。
最後の黒曜石のサソリがベヒーモスの斧で八つ裂きにされた瞬間、黄金の閃光と共に経験値の波がグループを襲った。
【 マグマゴーレム×8 を討伐! 莫大な経験値を獲得! 】
【 黒曜石のサソリ×6 を討伐! 莫大な経験値を獲得! 】
【 クルーレベルアップ! 】
[キング・トリトン] がレベル56に到達!
[ポール]、[アナベル]、[アリック] がレベル55に到達!
[始祖の火山蜂]×10 がレベル61に到達!
その他のクルーもレベル55に到達!
【 船長レオンがレベル56に到達! 】(+3レベル)
癒しのエネルギーが疲労と擦り傷を洗い流し、彼らの筋肉を再び活性化させた。
「いい前菜だったな」
レオンは拳を握り締め、基礎ステータスの向上を感じながら言った。
「さあ、さらに下へ行くぞ」
彼らは最後に長く続く溶けた玄武岩のトンネルを抜け、ついに広大な地下洞窟へと出た。
それはまるで、空が逆さまになったかのような巨大な空間だった。
そこには床がなく、代わりに煮えたぎるマグマの巨大な湖が広がっていた。
溶岩湖の中央には、火山岩の細い橋で繋がった古い円形のプラットフォームがあり、その上にはルビーで装飾された巨大な祭壇が鎮座している。
だが、その宝は無防備ではなかった。
マグマの湖全体が渦を巻き始めた。
溶岩の中から、体長数十メートルにも及ぶ超巨大な影がゆっくりと姿を現した。
黒ダイヤの鱗に覆われた蛇のような巨体に、液体のような炎を滴らせる3つのドラゴンの頭。
【 原初の火山ヒドラ [ダンジョンボス] - Lv.68 】
「レベル68か……」
ポールが柄を握りしめながら息を呑んだ。
「船長、こいつはデカいですよ」
「デカければデカいほど、倒れた時の音も派手になるってもんだ」
レオンは牙を剥き出して笑った。
「【船長の鼓動】!!」
深紅の衝撃波が爆発し、30体のクルー全員のステータスを倍増させる。
ヒドラは3つの頭で威嚇するようにシューッと音を立て、戦艦すらも溶かすほどのマグマの濁流をトリプルで吐き出した。
「水と氷の壁だ! 今すぐ!」
レオンの命令に、キング・トリトン、深淵のオーク、そしてアリックが完璧な同期で動いた。
海の王の超高圧の津波がヒドラのマグマと激突し、そこにアリックの絶対零度が加わる。
その衝撃は爆発的な蒸気の壁と、ボスの攻撃を完全に逸らす瞬間的な黒曜石の防壁を生み出した。
「今だ! 空から行け!」
影を刈る鴉、悪魔のグールたち、そして10体の火山蜂が急降下する。
蒸気のカーテンをブラインド代わりにし、蜂たちはタイタンサイズの毒針を獣の鱗に突き刺し、炎と毒の万力でその動きを封じ込めた。
鉄茨のベヒーモスはこの隙を逃さなかった。
岩の橋を猛進し、【漆黒の炎】を纏った斧を振り下ろして、ヒドラの最初の頭を綺麗に切断した。
怪物は苦痛に咆哮し、ミノタウロスを吹き飛ばそうと巨大な尾を振り回す。
だが、極限まで高まった速度パラメーターにより電光石火の如く動くレオンは、すでに空中にいた。
【無限跳躍】を駆使し、炎の噴射をジグザグに避けながら空を駆け上がる。
残る2つの頭の上方に到達したレオンは、【斬り込み用の鎖鉤】の重い鎖を振り回した。
投擲ダメージを倍増させる【必殺の射手】のパッシブを利用し、彼はヒドラの無防備な胸、その輝くコアが光る場所へと真っ直ぐに武器を投げつけた。
ドグシャァッ!!
鎖鉤が獣の心臓部に深く突き刺さる。
「オラァッ!!」
獣のような凶暴な咆哮と共に、レオンは自身の落下の体重を利用して鎖を思い切り引き抜いた。
ヒドラのバイタルコアが、マグマと光の爆発と共に文字通り胸から引きずり出された。
獣の巨体が硬直する。
残った頭が力なく垂れ下がり、タイタンのような体は溶岩湖へと崩れ落ち、溶けた岩の津波を引き起こした。
レオンの首にかかった『EXP Plus Seal』が、目を眩ませるような光と共に爆発した。
火山の絶対的な支配者を倒したことで、軍隊全体の経験値の壁が完全に粉砕されたのだ。
【 原初の火山ヒドラ (Lv.68) を討伐! 神格級の経験値を獲得! 】
黄金の渦がレオンとモンスターたちを包み込み、彼らを新たな頂へと押し上げた。
【 超絶大規模・総合レベルアップ! 】
[始祖の火山蜂]×10 がレベル63に到達!
[キング・トリトン] がレベル60に到達!
その他のクルー全員がレベル59に到達!
【 船長レオンがレベル60に到達! 】(+4レベル)
レベル60の閾値に触れた瞬間、レオンのインターフェースが待ち望んでいた出来事を告げる澄んだ音を鳴らした。
【 レベル60 マイルストーン到達! 】
基本指揮能力がさらに1スロット拡張されました。
「海賊船長の帽子」の効果が適用(×2)。
現在の最大船員数(Max Crew Limit):32。
「さらに2枠の空きができたな」
石のプラットフォームの中央にふわりと着地したレオンは、自分の体に流れる新しく巨大な力を感じながらニヤリと笑った。
彼の軍隊は今や、レベル60を軽々と超える部隊を内包している。
船長は一秒も無駄にすることなく、ヒドラの巨大な死体が腹を見せて浮かんでいるマグマ湖へと向き直った。
これほどの怪物は、一生に一度のチャンスだ。
「このデカブツをここに置いていく気は毛頭ないぜ」
レオンは炎の死骸に向けて、海賊の権威のオーラを放った。
「お前。俺のクルーになれ」
【 原初の火山ヒドラ - Lv.68 】を雇用しました。
【 クルーステータス更新:31 / 32 スロット使用 】
洞窟を揺るがすような咆哮と共に、ボスの3つの頭が再び持ち上がった。
鎖鉤と斧によって与えられた致命傷は瞬時に塞がり、黒ダイヤとマグマの巨大な獣は、新たな主に向かって従順に頭を下げた。
これで、彼の軍隊の空きスロットは残り「1」つとなった。
満足したレオンは、古代の火山祭壇へと近づいた。
減圧のシューという音と共に、黒い岩の宝箱が開く。
中には、灰のクッションの上に、単一の球状の石が脈打っていた。
それはまるで星の正確なコアを閉じ込めたかのようであり、無限の熱を放射しながらも、触れても火傷しない赤オレンジ色の光で輝いていた。
システムは、レオンがこれまでに読んだ中で最も美しい通知を表示した。
【 発見:永久の火山石(品質:レジェンダリー) 】
説明:世界の原初の心臓の欠片。無尽蔵の熱エネルギーを生成することができる。魔導機関に組み込んだ場合、燃料や生命エネルギーの必要性を永久に排除し、船の最大航行速度を永久に2倍にする。
「もうボイラーを一杯にするために賞金稼ぎを狩る必要はねえな」
レオンは爪の間でその石を転がし、勝利に目を輝かせながら囁いた。
「俺たちはたった今、無限の燃料と……この海全体で最も速い船を手に入れたってわけだ」
ドラゴンの翼を畳み、アナベルが彼の横に降り立った。
彼女の赤い目が石の光を反射している。
「船長、これはすべてを変えるわ。この石があれば、私たちの弩級戦艦は誰にも止められなくなる」
レオンはレジェンダリーアイテムをしっかりと握りしめ、レザージャケットのポケットに滑り込ませた。
「その通りだ」
船長は笑い、出口の方へと振り返った。
そこでは31体の巨大な軍勢が忠実に彼を待っている。
「さあ、俺たちの愛船を取り戻しに行くぞ」
一行は、火山のトンネルを通って再び誇り高く長い登り道を歩き始めた。
レベル68のボスを引き連れているため、マグマの精霊たちでさえ恐怖に縮み上がりながら道を開けた。
出口に近づくにつれて空気は再び冷たくなり、彼らは溶岩岩のアーチをくぐり抜け、再び太陽の光の下へと出た。
湾を見下ろす岬から、彼らは海軍の軍艦が正確にどこに錨を下ろしているのか探そうと地平線を見渡した。
しかし、火山の灰が晴れた時。
ポールとアナベルの足が、ピタリと止まった。
「せ、船長……」
ポールの声がひび割れた。猫の尻尾が力なく垂れ下がる。
アナベルは膝から崩れ落ち、鱗に覆われた両手を口元に当てた。
彼女の縦長の瞳孔は、純粋な恐怖で針のように細くなっていた。
湾には、巨大な白と青の軍艦が占座していた。
だが、その水の中央に……彼らの誇り高き海賊船の姿は、もうどこにもなかった。
魔導海賊弩級戦艦。
彼らの家であり、装甲の傑作だったそれは、もはや存在していなかった。
それは文字通り砲撃され、木っ端微塵に砕け散っていた。
犬の船首像が彫られたメインマストは無惨に折れ曲がり、波の下へゆっくりと沈んでいく。
船倉の残骸と貴重な魔導機関は、炎と黒煙に飲み込まれていた。
海軍の大将たちが、執拗な重砲の砲火によって船を完全に消滅させたのだ。
完全な無傷の木の板一枚すら、残されていなかった。
ただ一隻残った軍用ガレオン船の船首で、青虎の軍旗に囲まれた海兵たちが歓声を上げている。
レオンの軍隊全体に、死のような沈黙が降りた。
モンスターたちは息を潜めた。誰も、微かな音すら立てようとはしなかった。
普段は冷徹な霊体の副船長アリックでさえ、あらゆる冷静さを失った。
彼の霜のオーラは制御不能な吹雪となって爆発し、周囲の岩を永久凍土で包み込む。
その目の青い炎は、純粋で氷のような憎悪のダーツへと変わっていた。
だが、周囲の血を最も凍らせたのは、レオンの反応だった。
船長は、ピクリとも動かなかった。
彼の犬の目は、海に飲み込まれていく黒焦げの愛船の木材をじっと見つめている。
彼の氷のような合理性は消え失せ、背後の火山のマグマすらも冷たく感じさせるほどの、純粋で、深く、壊滅的な怒りによって焼き尽くされていた。
レオンの瞳が、目を眩ませるほどの血の赤に染まる。
その剥き出しになった牙の咆哮には、もはや人間性は欠片も残されていなかった。
彼はゆっくりと、海軍の船へと顔を向けた。
巨人の島の森全体が、たった一人の激怒した個体から放たれる精神的重圧の下で、恐怖に震え上がった。
「野郎ども……」
レオンは、大地そのものを震わせるような声で唸った。
「【船長の鼓動】!!」
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