7 これが私の願いだった
どうして、こんなに私の脚力はあり過ぎるの?
天井に穴が空いて、空にはぽっかり月が見える。
月が…………光が…………眩しい……
頭の中がカッと何も考えられなくなる。
アレックス!!
目の端に、すごく驚いた顔のアレックスが見える。
いててててっ!
地面にめり込んだ脚、驚く綺麗なドレスを着た女性たち……
「きゃああああああああああ」
一斉に叫び声が響く。
「アレックス…………」
その目の前には、女性とダンスを踊っていたと思われるアレックスの姿があった。
アレックスの手には、その女性の手が……
腰にも手が回り、まさに踊っていたという姿勢が見える。
「きゃああああ」
その女性も、私をみてアレックスの後ろに隠れた。
ああ、私はとんだ化け物になってしまった――
アレックスが嫌うのは当たり前だわ
彼に守られていた私は、その彼を攻撃する危険な獣人になったんだ。愕然として、今まであった出来事が魔法が解けたように壊れていくのを感じ取る。
私は、再び自分が飛び込んで出来た穴を見つめた。
そうか、これが私の願いだったのか……
私のみた夢――婚約披露パーティーで、アレックスの婚約者としてみんなに認められながら踊る。
そして、実家も母も過去も振り切って、新しい人生を歩む……
でも、現実は……
「セラフィナ、これはどういうことだ?」
アレックスが、私に驚いたように問いかける。
「はは、どういうことだろう?多分、謝りたかっただけです。騙してごめんなさいって。」
でも、今は壊してごめんなさいよね?
私がそういうと、アレックスはハッとしたように私を見つめ、後ろの女性に向こうに行くように伝える。
アレックスは、明らかに動揺したように、口ごもり、それは違うと呟く。
「いや、僕の方こそ、君が僕を騙したんだと頭が真っ白になって、言いすぎてしまった。ちゃんと事情があっただろうに……一方的に責めてすまない。冷静になった時には、もう君は国外に……」
私は、首を横に振った。
「ううん、アレックス、ええと、もう会うことはないわ。お幸せに。その、皆さんすいません。お騒がせしました。この穴は……父に請求を……その……」
私は、ここをどう収拾つけたらいいのかわからない。
今わかるのは、アレックスにとって、自分を騙した元婚約者が、国外追放になった二日目に、再び、次の人を探すためのパーティーをぶち壊しにやってきたということだけだ。
「ま、待って!」
アレックスは、私の腕をガシッと捕える。
だが……
「お前は国外追放しただろう!なんでここに戻っておる?兵を!侵入者だ!」
国王の叫び声と同時に兵の足音が響く。
「父上、待ってください。私は彼女に弁解の機会も与えていない。それに……私にはやはり、彼女しか……」
「アレックス、いいの……」
私は彼に嘘をついたことを贖罪したかった。でも、謝っても、弁解をしても、私が獣人との間に産まれた子である事実は変わらない。
それに、先ほどから喉が渇く。
もしかしたら、これが繁殖期に入った症状なのか?
目の前のアレックスにかじりつきそうになる。
早く離れないと…………
胸がバクバクし始めている。
限界だわ――
私は、アレックスの手を振り解き、思いっきり地面を蹴り上げた。




