↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人になったら脚力が世界最強でした。婚約破棄された勢いで好きな人の家まで飛んでしまいます  作者: かんあずき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/10

3 月うさぎの本能がわたしに残したもの

「き、君の気持ちも聞かずに、私たちの一方的な思いの押し付けを失礼した」


「いえ、流石に家を壊すのはやりすぎました。そんなつもりは全くなかったのですが……」


マーカスは飛ばされて良し。

だが、母よ。父より次の男はまともだったみたいね。


私は、瓦礫とゴミに塗れた家の中を、ガルフと二人で片付けることにした。


マーカスが飛んでいった方向の空を見上げる。

今日は綺麗なまんまるに近いお月様だ。


「君は、ソフィアと同じなんだな。ソフィアは、ただのうさぎではなくて、月のウサギで神の使いなんだ。だから、満月の日が近づくとよりパワーアップしていた」


「神の使いですか?」


そういえば飛びウサギは縁起がいいと聞いたことがある。


高く跳べるから運がいいとか月にかけて、ツキを呼ぶとか……


「そう、神に望まれたうさぎで、そのウサギが産まれた家は栄えると言われてる、ソフィアが亡くなったあとはいなくなったと思っていたが、君がその血を継いでいたとは」


「そんな母(うさぎ)がどうして、人族に?」


私は、ガルフの話を聞いて眉間に皺を寄せる。


「月のうさぎは商売運がいいと言われている。だから、人族と商売の取引は彼女が行っていた。ただ、人族と恋に落ちた日は満月だったんだ」


「満月?」


「満月の夜は、月うさぎには禁忌なんだ。繁殖反応が強くなる。ソフィアは不幸にも、その繁殖の初めての目覚めが人族の国で起きた。そんな症状がでるとは周囲も本人も知らなかった不幸な事故だ」


本能には抗えないというやつね。


でも、本当に本能かしら?


父も、あれだけ獣人を嫌うくせに、貴族と養子縁組までやって、母と結婚したわけで、根回ししてるわよね?


がっつり、恋して破綻したんじゃないの?


「ああ、それは……そのうさぎの姿だろうね。人族の一部の人間にはうさぎ族の耳や行動が、弱々しく可愛く映るらしいんだ。でも、実際には、うさぎはかなり気性が荒い」


ガルフは、私が壊した壁を見つめながら、ぶるっと思い出したように震えてため息をつく


なるほど……


弱く可愛らしい臆病なうさぎな母に一目惚れした父と、本能には抗えずに繁殖日と重なった母が、ラブラブになったが、そのうち化けの皮が禿げて喧嘩が絶えなくなったと言うわけか。



「でも、言い方は悪いけど、予定外の男に引っかかったとはいえ、私がうまれるほどには、仲が良かったんでしょうに……」


本能のせいとはいえ、タイプじゃないなら、母もさっさとワンナイトな相手にして撤退したらよかったのだ。


「うさぎは繁殖能力も高いからね。それもあって縁起がいいというか子孫繁栄というか……一発命中というか……」


それを聞きながら、うさぎのいいところってどこよ?デキ婚かよとがっくり肩を落とす。


そんな止められない本能のせいで、わたしはその不幸を一人で背負うことになったわけだ。


父母の身勝手さに腹が立ち、唇を噛み締める。


「君は……その……ソフィアを恨んでいるのかい?」


「ええ」


私はキッパリ、ハッキリ言った。


父は碌でもなかったが、母も似たようなものだと思っている。


「私の人生にとって、このうさぎにされたことも含めて何もいいことはありません。あなたが人族との子なんてと言ったように、私には獣人との子でさえなかったら……そう思わずにはいられません」


母が人であれば、父があんな人であっても連れて離婚してくれたかもしれない。


少なくとも私は獣人化せず、誰か普通の人間と交際したり結婚したかもしれない。


アレックスじゃなかったとしても……


私は、唇を固く噛み締めた。


ただ悔しかった。


私から幸せを奪い、思い通りにならない私を、ただ、責める人たちだけが、私が欲しい幸せを持っている。


父も、母も、目の前のガルフやマーカスだって……



「うさぎ族というのは、半獣人の私でも受け入れてもらえますか?」


「かつて、ソフィアは人族と関係を持って君が生まれたことを相談したが、保護どころかそれを理由に勘当されたと聞いている。むしろ、半分人間なら人族の国には戻ったらどうか?獣人だからといって国外追放というのは初めて聞くが?」


もちろんウェルカムな受け入れではないことは知っているが……と言葉を濁す。


私は婚約者が、一般男性ではなく第二王子であったことや、マーカスからもらった母のネックレスの話を伝える。


「なんだって!月の雫を月に当てた!なんでそんなことを!あの馬鹿が!!」


ガルフが、マーカスに対して怒っている。


「すまない。それはああ、大変だ。とりあえずすぐにこの家を直そう。あと2日で満月だ。」


ひたすら家の崩れた壁に石をのせていく。


「そんな作りだから、すぐ壊れるんじゃないのかしら?もっと頑丈にしないの?」


「ああ、狼は満月の日によく暴れるからね。家の中も片付けることを放棄した結果、ああなったんだよ。この壁も壊れてもすぐ直せる方が合理的だ」


「合理的?あれが?」


先ほどの鹿の頭を思い出し、首をブンブンと振る。


「ソフィアがいた頃は、俺たちが暴れたら先ほどの君みたいに、俺やマーカスを蹴り飛ばしていたもんだ。だから家は片付いていたんだけどね」


ガルフはそう言って、寂しそうに微笑んだ。


「マーカスは、私の連れ子だが、彼女には生命を救われて以来懐いていたから、彼女の望みを叶えてやろうとしたんだろう」


言葉少なに、最後の家の壁の穴を塞ぐ。


「あとは、石用の接着剤を流し込めば終了だ。さあ、部屋に入ろう」


ガルフは、私を、先ほどの人が入るスペースすら怪しい汚部屋に案内する。


これは、汚すぎて無理だわ。


でも、こんなテンションで、度々家の中がぐじゃぐじゃになるなら、毎度、片付ける気にもならないのはわかる……


「ガルフさん、私とりあえずの居場所がないの。母と同じようにしていいんだったら、ここに置いてもらえないかしら?代わりにこの家を綺麗にするわ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。