表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄破棄されたので流行らない喫茶店をはじめました  作者: みずとき かたくり子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/104

94話 野次馬計画



94話 野次馬計画



---

開店の朝と“バレバレな変装”


 いつものように月は店の外へ出て、丁寧に開店ボードを立てかけた。


「お待たせしました――雪の庭、開店です」


 鈴のように透き通る声が朝の通りに溶けていく。


 すでに列ができていた客たちの最前列には、

“変装している”つもりの第一王子の姿が。


 月は(バレバレなんだけど)と内心で突っ込みつつも、外面は完璧な笑顔で対応した。


 王子は軽く会釈を返し、開店と同時に店内へ。

 迷うことなく、いつもの席で紅茶を楽しんでいた雪乃のもとへ一直線に向かった。



---


唐突な申し出


「雪乃店長」


 不意にかけられた声に、雪乃はカップを置き、ゆったりと振り返る。


「……王子様?」


 “変装失敗”を悟ったのか、王子は照れたように微笑み、深く頭を下げた。


「先日の件の謝罪も兼ねて……ぜひ、僕と食事に行っていただきたい」


「……食事、ですの?」


 雪乃はまるで猫のように小さく瞬きを繰り返す。

 本人は戸惑っているが、王子のほうはすでに全て段取り済みらしい。


「落ち着いたレストランを予約してある。君が気に入ってくれると嬉しい」


「えっ……もう予約を?」


「もちろんだ」


 雪乃の目がさらに丸くなる。


「ずるいですわ……」


 そう呟きながらも、断る気配はない。

 王子の柔らかな眼差しに押されるように、そっと頷く。


「……では、お言葉に甘えて」


 王子の顔が、ぱっと明るく輝いた。



---


聞き耳全開の店員たち


 店員たちはそれぞれ持ち場で忙しく動いている――ふりだけしている。

 全員の耳はしっかり雪乃と王子へ向いていた。


「第一王子が……食事に誘うなんて。ものすごいことですよね」

弥生が忍にささやく。


「ええ。……花様まで聞き耳立ててますよ」


 視線をやると、花が机に肘をつき、わくわくした顔で二人を見ていた。


「月姉様、これって……雪姉様が王妃になるかもしれないってこと?」


「気が早いわよ!」

月は思わず額を押さえた。


「だって、王子って結婚したら王妃を迎えるんでしょ?」


「そうだけど……雪姉様は何もわかってないのよ。ほんとに」


 花はしばらく考えてから――


「……つまり、雪姉様って鈍感?」


「だから声を大にして言わないの!」


 月が慌てて花の口を塞ぐ。


 忍はぽそり。


「いや……ほんとに鈍感ですよね」


「ね……」

弥生も苦笑で同意。


「ちょっと! そこ肯定しない!!」



---


妹たちの作戦会議(正式名称:尾行)


 王子と雪乃の会話は和やかに続き――

 その裏で妹たちの“重大議題”が始まっていた。


「これは……妹として見守らないとね」

月が腕を組み、真剣に言い出す。


「護衛のため、尾行が必要ですね!」

弥生が力強く同意。


「尾行て……」

忍が呆れながらも腕を組む。


「しかし……心配なのは確かです。第一王子と二人きりなど、前代未聞」


 クラリスとセリーヌが勢いよく手を挙げる。


「「私たちも同行します!」」


「……全員、ただの野次馬じゃない?」


 花が冷静なツッコミを入れる。


「ちがうわよ!」

月がビシッと振り返る。


「これは“姉を思う妹の責任”なの! 立派な使命よ!」


「でも、月姉様も興味あるだけだよね?」


「っ……そんなことない……はず……」


「……」


(図星だ)と花は心の中でため息。



---

尾行計画、発動


「ともかく!」

弥生が手を叩く。


「雪乃様を一人にはできません! 私たちがしっかりお守りしましょう!」


「「はい!」」


 クラリスとセリーヌの返事は軍隊並みの勢いだ。


 忍は小さく笑い、月は満足げにうなずく。


「これで完璧ね」


(完璧なのは尾行計画じゃなくて、野次馬魂なんだけど……)

と花はこっそりため息。


こうして――

王子と雪乃の食事会を“見守る”(建前)尾行作戦は、誰にも止められないまま動き出した。



---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ