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婚約破棄破棄されたので流行らない喫茶店をはじめました  作者: みずとき かたくり子


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第85話:雪乃の帰還と天才(天災)の来襲 3

第85話:雪乃の帰還と天才(天災)の来襲 3


 弥生は保温ストレージを見つめながら、ぽつりと疑問をこぼした。


「しかし、こんなに重いものを……よく運べましたね?」


 花は小さく得意げに微笑み、背負っていた布を広げて見せる。


「この布、重量制御式。マジックバッグ系の一種」


 クラリスが目を丸くする。


「えっ……つまり、この布で包めば重さが軽くなるんですか?」


「そう。いくら重くても、包めば羽みたいになる」


 花がひらりと布を振ると、本当に風に舞うほど軽い。


 忍が呆然と呟く。


「便……便利すぎますね……」


 弥生はため息をつきつつ言った。


「保温ストレージを作っただけでも驚きなのに……運搬用の布まで……恐ろしい子です」


 花は肩をすくめ、あっさり返す。


「重いの運ぶの、めんどうだから。解決策、作っただけ」


 雪乃が布を手に取って持ち上げると、驚きの声を上げる。


「本当に軽い……! 重さを感じないわね」


「仕様通り」


 花が平然と答える。


 クラリスはおそるおそる布を受け取り、近くの重たい鍋を包んで持ち上げた。


「きゃっ……軽い!? 空箱みたいです……!」


 店内の全員がしばし呆然となる。


 雪乃は感心しきった声で妹の肩を叩いた。


「本当に……あなたには驚かされるわね。こんなの、一人で作るなんて」


 花は少しだけ照れたように、視線をそらして答えた。


「雪姉様のためだから。普通のこと」


 その言葉に、店員たちは胸を打たれたように目を潤ませる。


 



---


■ とんでもない魔法使い


 弥生がしみじみと呟く。


「……本当にすごい子ですね」


 雪乃は満足そうに頷き、花の頭を撫でる。


「この子がマジックアイテムを自在に作れるのは、魔力量がケタ違いだからなのよ」


 クラリスが息をのむ。


「魔力量が……どれほどなんですか?」


 雪乃は指折りながら説明する。


「普通の魔法使いが一日で使う魔力量の……十倍? いいえ、多分もっとね」


「じゅ、十倍以上……!?」


 店員たちが一斉に固まる。


 花は頬をほんのり赤くし、控えめに言った。


「量の話、あまり好きじゃない。たくさんあるだけで、すごいとは違う」


「でも、普通の魔法を使ったら……?」

 セリーヌが恐る恐る尋ねる。


 雪乃は得意げに語り始めた。


「火の魔法なら“ギガエクスプロージョン”を放てるし、水の魔法なら津波を起こせるくらい。空も飛べるし、高度な魔法は全部無詠唱」


「…………」


 店員全員、完全に固まる。


 花はすぐさま手を振った。


「使わないよ。魔法そのまま使うの、工夫ないからつまらない」


 雪乃は優しく笑う。


「謙遜しなくていいのよ。あなたは立派な才能の持ち主なんだから」


 弥生がぽつりと呟いた。


「天才……ですね、本当に」


 忍も苦笑しながら頷く。


「その魔力量で、喫茶店にいるのが奇跡ですよ……」


 花は照れ隠しのように小声で呟いた。


「雪姉様が楽しそうだから。それだけ」


 雪乃はその言葉に目を細め、優しく花を抱き寄せる。


「花……。あなたは本当にいい子ね」


 店員たちは姉妹の絆を見守りながら、同時に思った。


(……いや、いい子なのは確かですけど、能力が反則級なんですよね……)



---


■ 勇者レベルの噂


 弥生が冗談のつもりで言った。


「もう……勇者レベルでは?」


「そうかもしれないわね。本国の魔法省から声がかかってるくらいだし」

 雪乃がさらりと返す。


 月も面白そうに続ける。


「“筆頭宮廷魔導士超え”なんて噂もあるしね」


「ひっ……!?」  セリーヌとクラリスの声が見事に揃う。


 花はぶんぶん首を振る。


「噂、大げさ。私はただ、作るの楽しいだけ。すごくない」


 雪乃は優しい笑みを浮かべる。


「でも、花が私と一緒にいたいって言ってくれるのが、一番嬉しいわ」


 花は照れくさそうに、しかしはっきり言った。


「雪姉様といるのが好き。理由は、それだけ」


 その言葉に、店内がほんのり温かい空気で満たされる。


(……本当にすごい子だわ)

(そして、自由すぎる……)


 店員たちはそう思いながら、改めて花の“規格外さ”を噛みしめるのであった。



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