第83話:雪乃の帰還と天才(天災)の来襲 1
第83話:雪乃の帰還と天才(天災)の来襲 1
早朝の「雪の庭」。
第18話:雪乃の帰還と天才(天災ではない)の来襲 3、からん……とドアベルの音。
「申し訳ありません、まだ開店前で――」
セリーヌの声が途中で止まった。
「私は――帰ってきた!」
誇らしげに宣言しながら入ってきたのは、本来の店長・雪乃。
「お嬢様!」 「店長!」 「雪乃様!」 「雪姉様!」
店員たちが歓声とともに集まる。
雪乃は軽く頷き、まっすぐに月へ視線を向けた。
「……月。あなた、どうしてここにいるの?」
月は微笑み、胸を張った。
「雪姉様の代わりに、このお店を守っておりました」
「あなたが……?」
「はい。最近はお客様も落ち着いていますので、スタードールにお渡ししましたの。
あちらの店長さん、とても喜んでましたよ」
「そう……ありがとう、月」
雪乃が素直に礼を言うと、弥生が震える声でつぶやく。
「……お、恐ろしい子……」
「弥生ちゃん?何か言った?」
「い、いえ、何も!」
弥生が慌てて否定した――そのとき。
雪乃の背後に、ひょこん、と小さな影が現れた。
「……花!? どうしてここに?」
月が思わず声を上げる。
少女は落ち着いた目で雪乃の袖を軽くつまみ、淡々と答えた。
「雪姉様が帰ると言ったから。花も来たの」
そして、月に視線を向ける。
「散歩に行くって言ってたのは……ここ?」
「うっ……えっと……」
月の動きが一瞬だけ固まる。
クラリスとセリーヌが顔を見合わせ、震える声で尋ねた。
「あ、あの……こちらのお嬢様は……?」
月が姿勢を正し、きりっと答える。
「この子は花。私たちの妹です」
弥生が補足した。
「第七王女、花姫様です」
その名を聞いた瞬間、店内が静まり返る。
「第七王女……」 「花姫様……」
クラリスとセリーヌが礼を取ると、花は彼女たちを静かに見つめた。
怯えた店員を見ても気にした様子はなく、ただ事実を述べるように口を開く。
「挨拶はあとでいい。雪姉様が先」
雪乃はその肩に手を置いて微笑んだ。
「この子が私と月の妹。王宮でも群を抜いた才能の持ち主――花よ」
「雪姉様、紹介が雑」
「褒めてるのよ?」
花は微妙な顔をしたが、それ以上は言わなかった。
忍がぼそりと呟く。
「……“雪の庭”にまた一人、規格外が……」
弥生は天井を仰いだ。
(雪乃様、月様、そして花姫様……
三人が揃うなんて……店が吹き飛ばないでほしい……!)
こうして雪乃の帰還と花の来訪により、
「雪の庭」の日常はさらに賑やかさを増していくのだった――。




