65話 カウンターの明かりが柔らかく灯る
65話 カウンターの明かりが柔らかく灯る「雪の庭」。
閉店後の静けさの中、月姫は紅茶を飲み干し、すっと椅子から立ち上がった。
そして手を軽く叩き、まるで王宮で命令を下すかのように宣言した。
「雪姉様がお留守の間、私が店長代理としてこの店を守る!」
その大仰な一言に、店員たちは電撃を受けたかのように固まる。
続けて月姫は胸を張り、堂々と言い放つ。
「それにね、雪姉様が帰ってきたときに店がガタガタだったら困るでしょ?
だから、私がしっかり守るの。」
まるで当然の義務であると言わんばかりの口調だ。
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店員たちの動揺
弥生が額に手を当て、深いため息をついた。
「ですが、月姫様。本当にそんな簡単な話では――」
月姫はすっと表情を引き締め、弥生をまっすぐ見つめる。
「弥生ちゃん。雪姉様にとって、このお店がどれだけ大切な場所か分かってる?」
その声音には、普段の無邪気さとは違う、姉への深い理解と敬意が滲んでいた。
弥生は思わず言葉を失い、口をつぐむ。
月姫は紅茶のカップに触れながら、静かに続ける。
「だからこそ、私がこの店を守る。雪姉様が帰ってくるまで、安心していられるようにね。」
その決意に、店員たちは逆らえなかった。
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◆店員4名の反応
クラリスが忍に囁き声で言う。
「どうしましょう……月姫様、本気でおっしゃってます。」
忍は苦笑しながら首を振った。
「この勢いの前では……反対したところで無意味でしょうね。」
弥生も肩を落としながら頷く。
「……仕方ありません。月姫様が本気なら、私たちが全力で支えるしかないわね。」
セリーヌも心配そうに眉を下げる。
「でも……明日、また混むかもしれませんし……。」
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月姫の作戦開始
月姫はカウンターに腰を下ろし、指先でメニュー表をぱたんと閉じた。
「まず、明日。雪姉様が帰ってくる保証はない。
だから――今日と同じように開店しましょう!」
「えぇぇぇぇ……」
店員4人の呻き声がハモる。
セリーヌが弱々しく問いかける。
「本当に……明日も開けるんですか?」
「もちろんよ! 今日だって上手くいったじゃない。
むしろお客様が増えるなら、もっと楽しくなるわ!」
月姫の無邪気で破壊力のある笑顔に、店員たちはもう何も言い返せない。
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明日のスイーツ、衝撃の決定
月姫がメニューに指を滑らせ、ぱっと目を輝かせた。
「明日のスイーツは……オペラにしましょう!」
弥生はさすがに声を上げた。
「オペラ!? それは難易度が高すぎます!」
しかし月姫は胸を張り、迷いなく断言する。
「大丈夫! 雪姉様に仕込まれた腕、見せてあげる!」
クラリスが青ざめながら忍に小声で言う。
「材料も手間も倍以上ですよ……!」
忍は苦い笑いを浮かべた。
「……月姫様の提案、断れる雰囲気じゃありませんね。」
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店内での呼び名問題
弥生が恐る恐る尋ねた。
「あの……月姫様。ここでは雪姫様も『雪乃』と名乗られています。
ですから、月姫様も呼びやすいお名前があれば……。」
月姫は一瞬考え、すぐに明るい微笑みで答えた。
「そういうことね。じゃあ――“月”でいいわ。」
セリーヌとクラリスはほっと息をつき、忍は静かに頭を下げる。
「では……月さん。よろしくお願いいたします。」
月は嬉しそうに頷いた。
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月、店長代理としての締め
月は空になったカップを置き、力強く宣言した。
「よし! 明日はオペラで勝負よ。
雪姉様が帰ってきたとき、びっくりするくらい立派なお店にしておきましょう!」
「……はい。頑張ります……。」
店員4名の不安げな返事が、店内に虚しくこだました。
だが月は気にせず、明るい声で締めくくる。
「よーし、明日は絶対に成功させるわ!」
こうして、月主導の“雪の庭・第二幕”が幕を開けようとしていた――。




