第52話 謎すぎる業務提携
第52話 謎すぎる業務提携
店長同士の対面
豪華なシャンデリアの光が反射する「スタードール」の中央。
そこに、二人の店長が対峙した。
背の高いアルベルトは、警戒するように雪乃を見下ろし、低い声で問いかけた。
「私が『スタードール』の店長アルベルトだ。……で、向かいの店長が何の用だ?」
雪乃は紅茶を飲んでいる時のような落ち着きで微笑んだ。
「お初にお目にかかります、雪乃と申します。今日は……お話があって参りました。」
「話?」
雪乃は一歩前に出て、さらりと言った。
「業務提携しませんか?」
「…………は?」
アルベルトは完全に固まった。
聞いた言葉を理解するまでに数秒かかった。
「ぎょ、業務提携? ライバル店とだぞ? 君は何を言っているんだ?」
「そちらのお店が頑張って繁盛してくださらないと、 うちが迷惑するんです。」
「………………え?」
アルベルトの理解が追いつかない。
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雪乃の“本音”提案
雪乃は平然と続ける。
「うちのお客様、ほとんどがあなたの店で待っているのよ。
『雪の庭』が開くのを、そっちの大きな窓越しにじーっと見ながら。」
「…………は?」
アルベルトの表情がますます固まった。
「だから、開店と同時にどっと押し寄せて大混雑してしまうの。非常に迷惑なの。」
「迷惑……?」
「ええ。静かに紅茶飲みたいのよ。混雑は敵だわ。」
アルベルト
(……いや、それもう“店長の理想”で動いてないか?)
雪乃は気にせず、本題を切り出す。
「そちらのお店がもっとお客を惹きつけられるよう、手を貸します。」
「……手を貸す?」
「当店で出した過去のスイーツ、レシピをいくつか提供します。
あなたのお店で出してくだされば、そちらにもお客が増えるでしょう?」
アルベルトは目を丸くした。
「つまり……君の店の人気スイーツを、うちで提供していいと?」
「そういうこと。」
雪乃は自信たっぷりに頷いた。
スタードールの店員たちはざわついた。
「えっ……敵なのに、味方してくれるんですか……?」
「普通は逆ですよね……?」
アルベルトも困惑を隠せない。
「君は……なぜそこまで?」
雪乃はさらりと、紅茶を飲む仕草をしながら言った。
「簡単よ。私は静かで暇な喫茶店が理想なの。」
「………………」
その瞬間、アルベルトの思考は完全に停止した。
「ラ、ライバル店を強化して、自分の店を……静かにしたい……?」
「そうよ。そうすれば、私は働かずにゆっくり紅茶が飲めるんだもの。」
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アルベルトの決断
しばらく沈黙が続いた後、アルベルトは深い溜息をついた。
「……わかった。その提案、受けよう。」
雪乃は優雅に微笑み、一礼した。
「ありがとうございます。これでお互い、快適な営業ができるわ。」
アルベルトは苦笑して呟く。
「……まったく、理解できない店長だな。だが……不思議と悪くない話だ。」
雪乃は満足げに店を後にした。
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■背中を見送りながら
雪乃が去っていく姿を見て、アルベルトはぽつりと呟いた。
「……あれで本当に店長なのか? ただの怠け者……いや、天才なのか……?」
スタードールの店員たちもうなずく。
「敵なのに協力してくれる店長なんて初めてです……」
「なんというか……自由すぎますよね……」
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■雪乃の本音
店の裏通りに出た雪乃は、小さくガッツポーズをした。
「これで少しは静かになるわね……!」
満足そうに紅茶屋へと戻っていく。
もちろん、この提携がまた別の混乱を呼ぶとは、この時の雪乃は知らなかった。
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