第33話 予定通り、とは限らない
第33話 予定通り、とは限らない
本来であれば、
今日は「週に二日しかない貴重な営業日」のはずだった。
忍は早めに起き、店内の換気を済ませていた。
弥生は厨房で仕込みの準備を始めている。
「……今日は営業日ですよね」 弥生が確認するように言った。
「はい」 忍は看板を見つめる。
「二日しかないうちの一日です」
二人は、自然と雪乃の様子をうかがった。
――カウンター席。
雪乃は、毛布を肩にかけたまま、紅茶を飲んでいた。
「……ねえ」
「はい、お嬢様」 二人同時に返事をする。
雪乃は少しだけ眉をひそめ、静かに言った。
「やっぱり、今日は気が乗らないわ」
「…………」
一瞬、言葉が消えた。
弥生が恐る恐る確認する。
「……それは、どういう意味でしょうか?」
「どういう意味もなにも」
雪乃はさらりと言った。
「今日は営業しないってことよ」
「お嬢様」 忍の声が低くなる。
「今日は、“二日しかない営業日の一日”です」
「そうね」
「その一日を、休むと」
「ええ」
弥生が思わず声を上げた。
「それでは、今週は一日しか営業しないことになりますが……!」
雪乃はきょとんとした顔で首をかしげる。
「そうなるわね」
「よろしいのですか!?」
「趣味だからいいのよ」
即答だった。
「趣味なんだから、気分が乗らない日にやる必要はないでしょう?」
忍が静かに言う。
「……理論は、一貫していますね」
「でしょう?」
「ですが」
弥生は頭を抱えた。
「“週休二日制”を導入した意味が、完全になくなっています……!」
雪乃は気にも留めず、紅茶を一口。
「計画は大事よ。でも、気分はもっと大事」
「……」
「それに」
雪乃は少しだけ、楽しそうに微笑んだ。
「今日は紅茶を飲んで、のんびりしたいの。
それって、悪いこと?」
二人は答えられなかった。
忍は無言で、
入口の看板を――
OPEN から CLOSE に、
静かに掛け替えた。
こうして。
二日しか営業しない予定のうち、
その一日が“気分”で消えた。
週休二日理論は、
ついに「予定通りにすら回らない」という
新たな問題を抱え込むことになったのである。
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