100話 頭上のぴよぴよさん
100話 頭上のぴよぴよさん
「……何、この小鳥?」
カウンターで紅茶を傾けていた雪乃が、不思議そうに頭上を見上げた。
そこには、小さな鳥――ぴよぴよさん――が、まるで警備員のように雪乃の頭上を旋回している。
「ずっと頭の上を飛んでるんだけど?」
首を傾げる雪乃。その視線を追って、厨房から現れた月は一瞬で状況を理解した。
「花! あんたのペット、ちゃんとしまって!」
「え? ぴよぴよさん?」
のんびり姿を見せた花が手を差し出すと、ぴよぴよさんは「ぴよ♪」と鳴き、素直にその掌へと降り立った。
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◆“魔導具ペット”という苦しい設定
「……これ、魔導具よね?」
小声のつもりが店内に響く弥生の声。
雪乃以外のスタッフは全員、ぴよぴよさんの正体――花の発明した“魔導ドローン”――であることを知っている。
(昨日の王子とのディナー、まるっと監視してたアレ……!
ぜっっったいにバレるわけにはいかない!!)
弥生は顔をひきつらせながら無理やり笑顔を作った。
「雪乃様、この子は……花様が作った“魔導具ペット”なんですよ!」
「魔導具ペット?」
雪乃の目が少し細くなる。
(ひぇぇぇぇ……!)スタッフ全員の心が同じ悲鳴を上げた。
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◆ケーブルぶっ挿し
「ちょっとデータチェック……」
花はいつもの調子でポシェットを漁り、ケーブルを取り出すと――
ぴよぴよさんの頭へガチッと挿した。
……絵面が完全にアウトである。
どう見ても小鳥の頭にケーブルが突き刺さっている。
(動物虐待案件に見えるよーーッ!!)
忍とクラリスが同時に青ざめた。
端末の画面には映像や音声ログが次々と表示される。
「……何してるの?」
雪乃の声がワントーン下がる。
「データを整理してるの」
花は画面を睨みつつ、つい独り言を漏らした。
「――バグがあるなぁ。雪姉様の追跡命令がまだ消えてない……」
「花様! 声に出して言わないで!」
弥生が慌てて花の腕をつつく。
(お願いだから!墓穴を掘らないで!!)
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◆強引なフォローと新たな悲劇
「とにかく! この子はペットのふりをして!」
月が必死にまとめる。
「……まあいいわ。可愛いから許すけど」
雪乃の鷹揚な言葉に、全員が胸を撫でおろした。
「でも早くケーブル外して、ポシェットにしまいなさい」
「わかったわ」
花がケーブルを外してポシェットを開いた――が。
「あれ?」
ぴよぴよさんは入らない。
ふわりと舞い上がり、そのまま花の頭へ着地した。
「なんで?」
「それ、まだ完全に直せてないんじゃない?」
月が呆れた声をあげる。
花は端末を見て青ざめた。
「……優先指令の順位が入れ替わってる!
“私の頭に乗る”が通常行動になってる!」
「そんなの直してよ!」
雪乃が思わずツッコんだ。
「うん……でも解析に時間がかかるから、閉店後じゃないと無理」
花は頭の上で「ぴよ♪」と鳴く小鳥を、やむなく撫でた。
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◆新たな名物店員の誕生
こうしてその日――
花は「頭に小鳥を乗せた店員」として働くことになった。
客の反応はというと、
「かわいい!」「癒し担当だ!」「この店、どこまでレベルアップするの……?」
拍手喝采である。
しかし当の本人は真っ赤な顔で、
(恥ずかしい……恥ずかしすぎる……!)
と心の中で泣き続けていた。
頭の上のぴよぴよさんは、誇らしげに「ぴよ♪」と鳴き続ける。
(……お願いだから静かにしてぇぇぇ!)
こうして「雪の庭」の新たな一日は、またしても謎の平和と騒動に包まれながら過ぎていくのだった。
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