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夜空の花は咲き誇り、目の前の“花”は美しい

「あはは〜注意されちゃったね〜」

「あはは〜、じゃないって全く……。お陰で、周りの人に若干生温かい目で見られている気がして仕方ないよ……」


 空いていたカップルシートに案内された俺と梨花はその場に座るやいなや、受付の人に注意された言葉を思い出す。


『健全な時間を過ごしますように』との言葉を。


 それではまるで、さっきまでの俺たちが健全ではないと言っているようなものでものすごく恥ずかしかった。


 が、梨花はそれよりも俺たちがオトナな関係に見えたことが嬉しいのか、彼女の顔はもうふにゃふにゃだ。


 それに加えて───


「人は人、私たちは私たちだよ〜」

「それはそうだけど」

「それよりホラ! そろそろ打ち上げ時間だよ!!」

「お、おう!!」


 相変わらずのマイペースさ。

 思わず返事してしまったが、やっぱり彼女に振り回されるのは慣れないものだ。


 かと言って、それが嫌かと問われれば首を横に降るのだからどうしようもない。



 そんなやり取りをしているうちに、時間がやってきた。


 ドォォーン! ドドーーーン!!


 豪快な音が轟くと同時に真っ暗な夜空に鮮やかな花が咲く。

 一輪、二輪。三輪、四輪。


 続々と花が咲いては瞬く間に散り消える。

 そんな光景を俺と梨花はシートに寝転がりながら見上げていた。


「おっきいね〜」

「そうだなー」

「綺麗だね〜」

「そうだなー」

「どんどん打ち上がるね〜」

「そうだなー」


 あまりにも圧巻の光景に、俺と梨花は単語単語のやり取りしか出来なくなる。

 俺に至っては、「そうだなー」としか言えてない。


 それに気づいたのか、隣で寝転がる梨花はクスリと笑う。


「さっきから同じ返事ばかりだよ〜?」


 と、俺の脇腹をつんつんと突きながら様子を確かめる梨花。


 横目で見た花火の灯りで照らされた梨花の顔が、無邪気ながら美しさも宿っているように見えて思わず目を再び夜空へと向けると

「そうだなー」

 再び、同じ単語を呟いた。


 すると、梨花は途端に慌てふためく。

「まさか、大和壊れた!!?」

 ワタワタと手をバタバタさせながら起き上がるとそのまま俺に覆い被さる。


 そのまま梨花の様子を見ていてもいいのだが、少し身の危険を感じたので今度は普通に返事をすることにした。

「壊れてないから安心しろ。振りかぶっても何もないぞ。俺は機械じゃないから叩いても何も無いからな」

 と。


「よかった正常だ〜」

 あからさまに安心する梨花に俺は心の底から安堵する。


 それと同時に、改めて彼女の顔を見つめる。

 相変わらず夜空に何輪も咲いていく花火の灯りが何度も梨花の顔を照らす。

 少し儚げで、それ以上に美しい梨花に俺はポツリと心の声を漏らした。


「やっぱりあれだな……ちょっと現実味がないな……」

 と。

「どうして?」

 梨花は俺に覆いかぶさったまま、理由を問いかける。


 彼女に押し倒されている気がして声が詰まるものかと思ったが、案外そういうことはなく

「少し前まで、梨花とこうして花火見る事になるなんて考えもしなかったからさ」

 すんなりと言葉が俺の口から出ていく。


「なるほどね〜」

 そう言って、梨花は再び俺の横に寝転がる。


 そして呟くように俺の耳元で声を出す梨花。

「でも、ソレを言ったら私もだよ?」

「梨花も?」

「そうだよ〜? というか、こんな暗い時間に外を出歩く事なんて無かったんだから〜」

「あぁ……そうだったな」



 梨花があまりにも毎日遊びに来るから、ソフト部が物凄く厳しい部活だというのを俺は忘れかけていた。


 そんな彼女に今俺ができることはなんだろうか。


 そう考える前に気づいたら、俺は声を出していた。


「じゃあ、今から現実味を感じるか?」

「いいけど……どうやって?」

「そりゃもちろん、イチャイチャだろ」


 と。


「いいの……? 大和は人前でイチャイチャするの嫌なんでしょ……?無理しなくても……」

 嬉しそうな表情半分、驚きの表情半分。そんな梨花の顔を横目で感じて思わず笑いそうになる。


「さっき無理やりキスしてきて何言ってるんだか」

「それは、あれだよ! 大和が意気地なしだったから!!」

「そうだな。俺は梨花に色々根性的なところをたたきこまれている気がするよ」

「根性って……」


 梨花はいつだって直球で、少し脳筋で、時々弱気になる。

 そんな彼女が時折可笑しくてたまらない。



「でも、梨花はさっきこう言ったろ?」


 そんな彼女が時折恨めしくも思う。

「『人は人。私たちは私たち』ってさ」


 それでも俺は、彼女を、花園 梨花を愛おしく思うのだ。


「だから、俺たちなりに花火を楽しもうぜ? 手始めに、手でも繋ぎ直すか?」

「……恋人繋ぎ?」

「もちろん」


 無数の花火が咲き誇り、散り廃れていく中で、俺と梨花は改めてお互いの“好き”を確かめ合うことにした。


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