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巫女の守護者 連載版  作者: 司馬田アンデルセン
仙痛命酔
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巫女の守護者 仙痛命酔12

 エレベーターのランプが最上階の一歩手前の階を記している。あともう少しで最上階だというのに羽黒は不思議と緊張感は無かった。しかし、それでも迷いはあった。

「もしも、もしも神喰いが雪穂の仕業なら、僕はどうすればいいんだろう・・・」

 ミャルと言うモノは何者かが神喰いをしようとしているとのだけだった。しかし、雪穂の手紙には明らかに、雪穂の執筆で美琴に害を与えるかもしれないと書いてあった。

「いいや、その時のためにも僕が止めるんだ。雪穂が背負ってる物を僕も背負ってあげればいいだけのことだ」

 羽黒は自分に言い聞かせるように、自分の決意を固めて呟いた。それと同時にエレベーターのランプが最上階を示し、同時に目的の階についたことを知らせる音も鳴った。羽黒はエレベーターの扉が完全に開いたことを確認してから足を一歩、また一歩動かして前にと進んだ。完全にエレベーターから出ると最上階の様子が段々と分かってきた。最上階は薄暗く、照明は一つも付いておらず、ただ長い廊下となっていた。そしてここ、エレベーターから少し歩いた先に更に上に行く階段がある。多分あれは屋上に行く階段なのだろう。とにかく羽黒はその階段を目指して歩くことにした。

 階段の所までは何事もなかった。一階でのことがまるで嘘のような静けさだった。しかし、その静けさも直ぐに消え去った。階段の手前まで来て直ぐに何らかのプレッシャーが羽黒の体を襲った。羽黒は直ぐ様に階段の上にと目を向けた。そこには、上が白の道着と下が黒の袴姿の女性が薙刀を持ってそこに立っていた。羽黒は彼女の放つプレッシャーに負けずと立ちただ睨んでいた。

「あなたが、羽黒様ですね。巫女様からあなたのことは聞いています。私は巫女の守護者、河江希亥(かわえきい)です。あなたも分かっての通りこの先では儀式の最中ですのでお引き取りをお願いします」

 希亥と名乗る者はただ羽黒を見つめてそう言った。羽黒はその場で立ったまま、別段と気にする素振りを見せず言った。

「なぁ、あんたは巫女の守護者でいいんだよな。だったら、そこ退いてくれないかな、僕はもうこれ以上雪穂が色々と我慢する姿なんて見たくない」

「さて、本当に巫女様は我慢をしているのでしょうか?それはただただあなたの思い込みなのでは?」

 希亥は顔を傾げ、羽黒を上から見下してきた。羽黒はすかさず雪穂の書いた手紙をかざして声量を一段と大きくして言った。

「雪穂は、手紙を書いて残してくれた。それにはここの場所が書かれていた、我慢してないって言うならこんなこと書く必要がない。あんたもしも邪魔をするなら僕はあんたを倒してから先に進む」

 羽黒はいつの間にか刀を抜ており、刀を希亥にと突き刺して言っていた。一方希亥はため息を吐き、何かを呟いた。その瞬間羽黒は何かが来ると祭りの時と同じように直感的に感じ取れ、すぐ様に横にと転がり瞬時の希亥からの攻撃を避けた。すぐに羽黒は姿勢を正し、刀を構え希亥のいる方向にと顔を移した。どうやら希亥はあの階段の上から薙刀を振り下ろしてきたのだ。

「避けるとは、少し侮っていたようですね私は。ですが、次はそうはいきません」

 希亥は薙刀を羽黒にと突き刺してきた羽黒はそれを刀で上にと弾いた。しかし、弾いた次の瞬間だった。弾いた薙刀はそのまま羽黒の下に落ちてきてそのまま羽黒の顔にと傷を残した。羽黒は傷元から出てきた血を脱ぎ取った。羽黒はそのまま希亥の所にと走り寄ろうとした。走り寄る羽黒に希亥は薙刀を横にと振るうと、そのタイミングに合わせるように羽黒は飛び上がり希亥の振るった薙刀を避けた。

 ――ミャルは確か呼吸方法だと言っていた。祭りの時に無意識にしていた呼吸方法(アレ)を意識してやってみればなぜだか分からないが相手がどんな行動をするのかが微妙だが分かる。

「へっ、どうした?僕には当たってないようだが見誤ったのか」

 希亥は舌打ちをし、着ていた白の道着を地面にと『ゴテッ』と言う重々しい音を立てて落とし、上をさらし姿にして肩を回しながら言った。

「ただの大学生にしてはよくやりますね、こちらも重りを外して行きますよ」

「今まで本気出してなかったことかよ」

 羽黒は剣道での構え、中段の構えで対抗するように構えた。すると距離があったはずの希亥がいつの間にか羽黒との距離を詰めていた。咄嗟のことに羽黒は対応できず、ただ一歩下がることしかできなかった。しかし、一歩下がった羽黒に希亥の薙刀が羽黒目掛けて突き刺さってきた。右にと転がり避けようとするも運悪くも薙刀は羽黒の肩をかすめた。

 かすめた肩を羽黒は気にせず、立ち上がり次の攻撃にと対処しようとさっきと同じように中段の構えをとりなした。しかし希亥は立ち直る羽黒に息をも付かせぬが如く薙刀を振りかざしてきた。羽黒は上から降りかかってくる薙刀の刃の下側の棒にと刀を当て振り下ろすことを阻止した。

 希亥はこの時羽黒が何をしようとするのかを理解した。しかし理解した時には遅く、羽黒の刀は薙刀の刃を支える棒に擦らせながらどんどんと刀は希亥の手にと近づいて来るのであった。羽黒は刀を希亥の手の近くで鍔迫り合いを払うように上にと薙刀を上げ希亥の腹部に隙を開けさせた。

 希亥は持っていた薙刀をすぐ様に放し逃れようとするもそれよりも早く羽黒の刀の方が早く、希亥の腹部は刀の刃によって引き裂かれ、そこからは血しぶきが上がった。

「どうやら私は最後の最後で見誤りましたね」

 希亥はそう言葉を上げてその場に倒れてしまった。羽黒は刀に付いた血を払い、鞘に納めて希亥の下にと近づいて彼女を見下ろして言った。

「なんでだ、仙痛命酔とか言う奴で痛みは感じないはずじゃ無かったのか」

 希亥は目を開けて羽黒を見上げて口から血を垂らすようにして鼻で笑い言った。

「下の奴らが言ったのですか?――えぇ、感じませんよ。ですが、しっかりと痛みは残るんですよ。ただ感じないだけで板にはしっかりと溜まります。私の強さはどうでした、剣道をやっている人から見て」

 彼女がなぜ自分が剣道をやっていることを知っているのかは分からない。それでも羽黒は心の中からの言葉を率直的に投げた。そこに同情や哀れみの言葉などは乗せずにそのまま。

「強かった、だけどあんたが言ったように見誤ったおかげで俺は勝てた。なぁ、なんで最後の最後で慢心したんだ」

 希亥は鼻で笑い、開いていた目をゆっくりと閉じてから右腕を上げて天を仰ぐようにして言った。

「さて、どうしてでしょうね。私でも分かりませんよ、それよりも早く行ったらどうですか」

 そう希亥に言われて羽黒は当の目的を思い出し、ただ静かに「あぁ」と呟いて直ぐに階段の方にと駆け足で行き、階段を駆け上がって行った。

 そうだ、ここで終わりでは無いのだ。雪穂を連れて帰るのが当の目的なのだからだ。

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