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第五章

「攻めろ攻めろ! 機も敵も逃がすな!」




兵に発破を掛ける声。自身も敵国の兵士を斬り伏せながら、味方を鼓舞する。




それに応えるかのように雄叫びが上がり、比例して悲鳴も上がる。




スキンヘッドに切れ長の瞳。赤のマントを羽織った彼の手には、剣ではなく刀が握られていた。




マントの下には着物を身に付けており、敵味方含めてもかなり異質。




そしてその力量も、異質だった。




彼の足元にはギャミック兵士が倒れており、既に山となりそうな程の数。そのどれもが一太刀の元に斬り捨てられていた。




(魔王は退いたのか。賢明っちゃ賢明だな。何しろまだ魔法が破られるタネもわかっちゃいないんだろうから)




先刻まで見えていた姿が見えなくなったことで、彼は笑みを溢した。優越感と達成感。




「覚悟っ!」




その表情を油断と見たギャミック兵が、背後から殴りかかる。杖が炎を纏っており、威力が推し量れる。




「覚悟? あんたがしたのか?」




刀を振るい、追って振り向く。胸元を一文字に大きく切り裂かれ、杖を振り上げたまま血を吹き出している男が、そこにいた。




仰向けで倒れていくのを見下ろしながら、彼は思案を巡らせる。




(さぁて。今は優勢だが、ギャミックの参謀は切れ者だからな。どこで巻き返されるかわかんねぇ)




刀を地に向けて振り下ろすことで血払いを。それから、現況を確認するために周囲を見渡した。




(長剣兵が減ってきたな……。魔法使いと言えど、腐っても軍人か……)




軽い舌打ちを。しかし戦況は未だ優勢。




「……よし。長剣兵団下がれ! 剣兵大団は前線へ! 短剣兵団は援護しろ!」




張り上げた声はよく響いた。それを点在する団長が山彦式に伝達していく。




統率は十二分に取れている。伝達速度は速く、勿論伝え損ないはない。




「ホウギ!」




誰ぞの名を呼ぶ声。それに反応したのは、着物の彼のみ。振り向けば、目の前に黒い肢体の馬が止まったところだった。




馬上に居るのは、剣帝ナモーロ。




「何故長剣兵を下げるのだ? 一気に押し込めばよかろう?」


「魔法障壁を斬れるのは長剣だけすからね。ここであんまり減らすわけにゃいかんのですよ」




丁度二人の目の前を、兵が通った。長剣を提げ手傷を負った兵を、別の兵が肩を貸しながら歩いて行く。




その先は後方。拠点にある治療所を目指しているのだと思われた。




「そうか。何しろ策や駆け引きは我輩には向かん」


「知ってますよ。なぁに、問題ねぇっす。俺もアイツもいますしね」




剣帝に対してすら砕けた口調。それは彼が高位にいる証。ホウギは、ギャミックでいうところのリブラティエの立場にいる。




つまりは、参謀。




「で。この立場から言わせて貰うとですね。剣帝にゃこのへんで引いて欲しいんすよね」




参謀としての考えがあるのだと剣帝が察すれば、おいそれと言及は出来ない。




彼の狙い通り、剣帝は表情を険しめ何か言いたげに唇を開いたが、頬に皺を刻みながら固く閉じた。




「何処までだ」


「出来れば城まで。この戦は長引くっぽいすから。今から消耗せずに、高見の見物とでもしゃれこんで欲しいんすよ」




更に皺が深くなる。唇の両端に強く力を入れている証拠だ。即座に受け入れられる案ではないと思っていたホウギは、しかし詰まることなく言葉を続けた。




「魔王は退きました。おそらく今頃は城で優雅に茶ぁしばいてる頃でしょ。……はい、復習。魔法を斬れるのは?」


「ぬ……。兵らの持つ長剣と、我輩の持つ大剣のみだ」




投げ掛けるは問い。口調は諭すように。勉学を子に教えるように。魔法を斬れるのは、長剣兵ではない。長剣が魔法を斬る。




「よく出来ました剣帝。……魔王自身を斬るのは俺の刀でも出来ます。けどね、魔王の放つ魔法を掻い潜って斬り込むなんてのはそうそう出来るこっちゃねんですよ」


「……我輩ならば出来る、と?」




剣帝の言葉に、深く頷く。これには何の含意もない。完全な事実。




「魔王を倒すのは勇者と決まってるんすよ」




にぃっ、と破顔して見せる。屈託のない笑顔は、裏表ない彼だからこそ出来る表情。




そんな顔をしながら必要な人なのだと言われれば、返す言葉もありはしない。剣帝は策の知識はなくとも、人の心の動きには人一倍敏感。




「それに、兵が気にしますよ。そんなに俺らが頼りねぇのか、ってね」


「ぬぅ……」




年齢を重ねて渋くなった顔が更に渋みを増す。それは悩んでいる証拠。良くも悪くも素直な剣帝。



 

「あいわかった。一時撤退するとしよう」


「わかってもらえて何よりすよ。あ、親衛剣士団もちゃんと連れてって下さいね?」




「わかっとる。我輩の記憶力は未だ衰えてはおらん」




些かむっとしたように眉根に皺が寄る。それを笑みで躱して宥めると、ホウギは黒馬を翻し去り行く剣帝を見送った。背中が見えなくなってから前線へと視線を移す。




長剣兵はやや後退し二列目。最前線には剣兵が出ており、投げナイフの短剣兵が援護を続けている。




敵方の中・遠距離魔法は短剣兵の投擲するナイフによって予定着弾点の遥か前に打ち落とされ、近魔法使いの中にも遠魔法使いの中にもナイフが突き刺さり倒れている者がいた。




ギャミックよりもロウズの方が、幅狭く全力を固めて侵攻している分、中央でそれは顕著に表れている。




「押し切れっかな……まんなか。どてっ腹に風穴開けて、そのまま本陣を叩き潰せりゃあこの平原、短期決着も夢じゃねぇかもな」




陣形、兵団の数、長剣・剣・短剣にどれ程の割合で兵を充てるか等、開戦前に考えることはいくつもあった。




悩みに悩んで出した結論。射程距離の広い魔法に勝つための、敢えての一点突破。




だがそれを急ぎ過ぎて兵をあたら失うようでは、参謀として失格だ。魔王を討つまでの道程は未だ長いのだから。




「でも。……向こうは長剣だけしか魔法を斬れるってのに気付いてねぇ。剣兵に守備隊ぶつけないのがその証拠だ。バレる前に打てる手を打っとくのもアリ……だな」




ひとりごちたホウギは、伝令を探す。このまま指示を出せば、最前線で戦っているギャミックの兵士にも策が露呈する。それでは意味がない。




相手を圧せるだけの何か、……こちらの勝鬨であったり、味方の優勢を伝える物……、ならば聞かせてもいいが、情報を与えてやることはないのだ。




「うし、でもまだ緒戦だ。今の内に思いきって突っ込んでおきゃ向こうもびびらせられっかも知れねぇな」




悩み抜いた末の決断。手近にいた短剣兵の一人にそれを伝え、伝令兵と団長にも口伝するように命じる。はい、と短く、しかししっかりと応え、短剣兵はナイフを仕舞い駆けて行った。




今最前線にいる兵を百として、五十を剣兵、五十を長剣兵にする。長剣兵と剣兵にて道を切り開き、ギャミック軍指令部まで攻め込む手筈。




(緒戦を落としたくねぇのはあちらさんも一緒だろ。すぐ引っ込んじまったが、魔王が自分から最前列に出て来たんのがその証拠だ)




国力も軍備も流石に歴史と伝統あるロウズが上。しかし戦が長引けば疲弊もする。短期で決着をつけられるならばそれに越したことはない。




「よぉし、攻めろ! ただし深追いはすんなよ!」




狙うは、一石二鳥。








 

 

「――――と考えてくる頃だろうな」




伝令兵に指示を出し、リブラティエは呟く。軍の物ではなく、旅人当時と同じデザインの紺の外套。新品のそれは既に彼の肢体に良く馴染んでいた。




金糸を掻き上げ、風に目を細める。




「ホウギは策を講じても真っ直ぐな物が多い。その分攻撃力と破壊力はあるが、裏を掻かれれば脆い」




笑みを浮かべるギャミック参謀。全ては彼の掌の上。




「相手を誰だと思っている? ……この僕だぞ?」




指令本部にて、彼は一人頬を歪める。それから戦力図へと目を落とした。




平原の地図。そこにはいくつかの駒が。それらには魔法がかけられており、触れずにひとりでに動いている。




横一線だったギャミック軍の陣形は中央を押され、今や下弦の形。対するロウズ軍はほぼ変わらず、長方形のまま。




「指示は出した。ここからどう成るか……。見物だ」




異変は、ギャミック軍に起こる。










伝令から指示を伝達された二人のナイトが、同じように号令を出した。




下弦の形を成していたギャミック軍が次第にコの字型へと変形していく。




最前線で戦いを繰り広げていたロウズ兵たちは面食らった。彼らは敵方の陣形の全容を把握していない。




前のみに集中していると、横合いから不意に火球が飛んで来るのだ。




虚を突かれたロウズ軍。一番被害を受けたのは中距離専門の短剣兵団だった。




彼らは二列目に入り、剣兵や長剣兵の後ろからナイフを投げることで、ギャミック兵の魔法を撃墜、近魔擲隊を攻撃していた。




つまり、一対一での戦いは想定していなかったのだ。そこを攻められてはひとたまりもない。




だが、それすらもリブラティエは把握済み。横からの奇襲部隊には魔衛隊を配置せず、八割を近魔擲隊、二割を遠魔擲隊とした。




短剣兵は近接においてナイフ、中距離においてそれを投げて応戦する。だが近距離ではナイフより魔法を併用した近魔擲隊が強く、中距離攻撃は遠魔擲隊によって弾かれた。




短剣兵団が減少するにつれて最前線の戦いも優劣が着き難くなる。今まで届かなかった遠距離魔法がロウズ軍の剣兵を捉え始めた。




長剣兵は飛来した魔法を斬り払ったが、剣兵にはそれが叶わない。




剣兵団が数を減らせば長剣兵に負荷が掛かる。一対一で戦っていた物が一対二になり、一対三になる。




「なんだってんだ!? どうした急に!」




魔力図がない上に全体を見渡せるだけの高台もない。ホウギには伝令が状況を伝えてくるまで何一つ戦況が掴めない。




「手筈は整っている。囲め。……ロウズには遠距離はない。どれだけの兵士がいようと、前線に出られなければ意味はない」




戦況は全て仕入れられる。子細が判らずとも、大局が判れば一先ず十分。それほどの数の策が、リブラティエにはあるから。




自軍の優勢を確認し、リブラティエは踵を返した。押し上げた眼鏡が光を反射して瞳を隠す。




「出番ですよ。……レイテックさん」


「待たせすぎ。腹空って来たよもう」




文句を垂れながらレイテックは腰を上げる。今まで体重を支えていた木製の椅子が彼の移動と共に軋む。




「まどろっこしいのはお嫌いで? でも見せ場ですよ」




にぃ、と口端を吊り上げて見せるリブラティエ。元から本気で不平を述べた訳ではなかったレイテックは、満足気に笑みを作った。




「最近いいこともないし、憂さ晴らしに暴れちゃおうかな、っと」




自身の長杖を地に突き立て、上機嫌にレイテックは言う。手にしているのは、鈍く銀色に輝く棍のようなそれ。外套の紺色をその身に映し、戦はまだかと光を放つ。




手を開閉するレイテックを見て、リブラティエは一層笑みを強める。




計算通りだ、と。




「全力で構いませんよ。この平原はレイテックさんに締めてもらう予定ですから」


「わ。それは責任重大だこと」




軽口を叩き、レイテックはテントを潜り抜け外へ。本陣の外には親衛隊以外にレイテックの率いる魔擲隊が控えている。




一点集中、一点突破を狙ったロウズ軍。仮にリブラティエの予想の範疇を越えた侵攻速度だったとしても、本陣にはビショップ・レイテックが控えていた。




戦は緒戦。この平原以外にも重要な拠点は幾つも点在している。




しかしそれらを放置して、リブラティエは平原にレイテックを配置した。




それはロウズ帝国がこの平原からさほど距離の空いていないことに起因する。




「……でもま。オレにはそんなの関係なし」




レイテックは魔擲隊を引き連れ先頭に立ちながらひとりごちた。戦場まではさほどない。戦う音が耳に届く。




「オレはただ……自分のために戦うだけだ」






 

 

指令部はギャミック軍の陣形の真ん中の後方にある。つまり、指令部から真っ直ぐ歩けば中央突破となる位置。




ギャミック陣形の中央へと、レイテックは歩んでいた。魔擲隊一個中隊、百名を連れて。




「お前ら、覚悟は出来てるか?」




前方を睨み付けたままレイテックが問う。後方の兵士らに向けて。




一糸乱れぬ行進ではない。足音はバラバラ、陣形はグチャグチャ。ただの集団は声も揃えず大声を張り上げて返答する。




「よーし」




戦場はもう間もなく。聞こえる音量も耳に響き過ぎる程。歩みは止めぬまま、レイテックは兵士へ語り掛ける。




「お前ら!」


「はい!」




大音量での呼び掛けに、大音量が返る。




「戦は好きか!」


「大好きです!!」




先程までとは打って変わった、揃いも揃った返事。




「悲鳴は好きか!」


「大好きです!!」




レイテックは叫びながら手にした杖を高々と掲げる。




「血が好きか!」


「大好きです!!」




兵士らもそれに続く。




「焼ける肉の臭いが好きか!」


「大好きです!!」




まるで、何かを指し示すかのように。




「骨の砕ける音が好きか!」


「大好きです!!」




高々と掲げた長杖を胸元へ当て、




「殺すのが好きか!」


「大好きです!!」




足を前へ出しながら目蓋を閉じ、




「殺されるのが好きか!」


「大好きです!!」




杖を固く固く固く握り締め、




「ならば!」




瞳を、




「己を!」




開いたその時には、




「死神と!」




普段の笑顔は無く、




「――成せ!」




瞳は狂気に血走っていた。




レイテック以下百名は、各々が手にしている長杖の先端に掌を添える。そこに魔力を注ぎ込むと、長杖の先端から刃が現れた。




大まかな形状は統一されているものの、兵士らの持つ物はディテールが異なっている。




揺らめき煌めく赤い刃は炎を圧縮して精製した物。張り詰めた輝きを持つ青い刃は氷で精製した物。




透明に近い淡い色をした緑色の刃は風を凝縮した物。鈍く銀色に光を反射するのは鋼を具現化した物。




そのどれもに見られる共通点は、湾曲した薄く長い刃。長杖の先端から地面に向けて伸びるそれは、誰しもに容易に自身の名称を知らしめる。




死神の大鎌。デスサイズ。


 

 

 






その頃、レイテックの動きを未だ知らぬ彼は、ギャミック軍の陣形に対応しようと自軍の隊列を組みかえるのに必死だった。




「隊列を組み直せ! 回の陣形だ! 被害がこれ以上拡大する前に短剣兵団を下がらせろ!」




バラバラにやってくる伝令兵にようやく指示を出し終え、ホウギは奥歯を強く噛み締める。




横一列の陣形とはいえ、ギャミック軍はその列の人数が少なかった。薄かった。押し切れる、そう思った。短期にて決着をつけようと急いた。




それが、誤算。それが、この有り様。優勢が一転して劣勢、苦境に立たされることとなった。




「……畜生っ!」




沸々と腸に湧き上がるのは後悔の念。だが今は意気消沈している場合でも己の失態を嘆いている場合でもない。




刀を片手に提げたまま、陣形の左右どちらかに加勢に行かんと見渡したときだった。




「ホウギ様!」


「なんだっ!」




呼び止めたのは伝令兵ではなく、剣兵だった。何用かと彼に向けたホウギの顔から、血の気が引く。




まるで竜巻に飲まれたかのように、剣兵の軽鎧にもマントにも顔面にも肢体にも、細かな切り傷が数多刻まれていた。




「どうしたその傷っ!? お前どこの持ち場の!」


「最前列中央部です! 一刻も早く援軍を……っ。あのままでは突破されます……っ!」




「な……ん……っ!?」




二の句が紡げない。頬を汗が伝い落ちる。勝ち負けは五分と見ていた。それがよもや、このような状態に陥るとは。




白の世界へ旅立ちたいと願う頭を全力で振り、迷いを断ち切る。今彼が指示を出さねば、この戦は虐殺へと変わる。




「……詳細を」




必死に喉から押し出した声は、掠れていた。それでも兵には届いたようで、肯定を込めて彼は頷く。




「最前列より少し後ろで私は戦っていました。すると前方より杖を高々と掲げた一団が近寄って来て……」




切迫した状況。報告する兵士の口調は自然と早口になるが、それを咎めも気にすらしないホウギ。彼にも余裕はない。




「掲げた杖が、大鎌に変わったのです。それからはもう、嵐のようでした。……いえ、というよりも……」




兵士は言葉を切った。否、続けられなかったのだ。身震いする身体を抱き締め、彼は続ける。




「青い外套を棚引かせ、大鎌を振り上げ目にも止まらぬ速さで奴らは斬りかかって来ました。目は爛々と輝き、大鎌は血を浴びて笑っているようでした」




ホウギは戸惑いを隠せなかった。「なんだそれは」「今までの報告にはないぞ」「話が違う」そう言ってしまいたかった。




「まるで……」


「……死神」




戦の動乱の音の中に、奇妙な沈黙が生まれる。互いに言葉が見つからない。




口に力を入れ、顎を引く。こうなれば形振り構っていられない。




太陽へと目をやりおおよその時刻を確認すると、ホウギは兵を見据えた。




「西の森に走れ。そして伝えてくれ。……うて。とな」


「森に……? 伏兵でも……?」




「そんなとこだ。俺は東側の応援に行く。伝令が終わり次第自分の持ち場に戻れ」


「ですが中央部は……、いえ、御意に」




西側の森まではさほど距離はない。だが中央部の劣勢は急務。反論しかけた兵士は、しかし参謀はそれをも把握した上で指示を出しているのだろうと考え、口を噤み指示の通りに動き出した。




剣兵が去ったのを見届けた後、ホウギも駆け出す。




「あんの野郎……死神部隊とはやってくれんじゃねぇか……!」




歯噛みしながら、東側の軍に加勢するために。そしてもう一つ。即座に出さねばならぬ指示があった。




「気は進まねぇが、やれるからにはやるっきゃねぇ……」




駆ける最中、彼は目当ての人物を見つけた。それは、伝令兵。




「おい! 伝令を頼む!」


「はいっ! 内容は?」




駆け寄るや否やの会話。それは短く、用件のみを伝える物。




「東に真っ直ぐ行ったところに国がある。知ってるな? 同盟国だ。事情は伝えてあっから、おそらく出張る支度をしているはずだ。救援要請してきてくれ。指令部に行けば馬がいる」


「っ! 御意!」




一気にまくしたてる参謀から、事の重大さを即座に感じとる伝令兵。強く頷くと、直ぐ様指令部がある方向へと駆け出して行った。




紅の外套が棚引くのを見遣りながら、ホウギは息を吐く。




「全部が間に合やいいんだが……」




それから彼自身も、応援のために動き出した。額に汗を浮かせながら。

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