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第九話 スライムはブレックファーストのあとで

 新しい制服に身を包み、寝癖を直すのも適当に、また布団にもぐりたい。

 っていかんいかん、二度寝するのはいかんて。

 今は……7時くらいか、ふああぁぁぁ……。

 二度寝したい気分を抑えて着替えた俺は寮の一階にある食堂に向かった。

 昨日ガウェインと別れて寮に入った後、自分の部屋を見て驚愕した。ここはどこの高級ホテルだと。

 ドアをくぐった瞬間戻ってきたのかと錯覚してしまった。でもまあアルセムから送った荷物の山を見て現実に引き戻されるのだが。

 その日は荷物の片づけをしてそのままベッドにダイブイン、ベッドの予想以上のフカフカ具合と長い一日の疲れでそのまま寝入ってしまった。

 おかげで晩飯食ってないから腹が減って仕方がない。朝だががっつり食えるもんがいいな。


「ひれぇ……」


 一階に付いた俺は、食堂と読むらしい文字の札がついている扉を開けて驚いた。

 もうこの言葉しか出ない俺のボキャブラリーに呆れてきたな。

 もはやレストランだよ。

 アルセムと違って異世界感が消滅しそう。


「いらっしゃいませ、御一人様ですか? よろしければ御席にご案内いたします」

「あ、はい、お願いします」


 入口で棒立ちしてるとウェイターのような、てかウェイターが来て空いてる席へと通してくれる。

 俺の知ってる食堂と違う。もっとこう……大衆食堂というか、そういう感じのを想像してたんだけど。

 そしてウェイターの案内で空いてる席に向かう途中で、窓際に座って外を眺めているハワードを発見した。

 もう来てたんだな。


「ようハワード、おはよう」

「あ、おはようリューマ君、頭、寝癖ついてるよ」


 こちらに気づいたハワードは自分の頭の右上を指さしながら笑って言った。

 テーブルの上にはささやかな彩として小さな花瓶に黄色い花が入っている。

 種類は知らん、多分異世界産だろうな。


「ああ分かってるよ、あとで直すって」

「失礼致します、ご合席なされますか?」


 するっと出てきてウェイターが聞いてきた。


「いいか?」

「うん、大丈夫だよ」

「じゃあそうします」

「かしこまりました。こちらメニューになります。 お決まりになりましたらこちらのベルでお呼び出しください」

「は、はい」


 メニューと呼ぶための小さなのベルを置いた後、入口へと新しい客を案内するために戻っていった。

 今いる場所が寮の中だとういうことを忘れそうになる。


「なんか、もう、すげぇよな」

「うん」

「部屋の中とか高級ホテルみたいだし、あれが一人一部屋だろ?」

「そうだと思うよ、僕のところも一人だったし」

「そんなんで部屋足りんのかね」

「多分ここに入ってる人のほとんどは、王都以外の国領から来た人だし、貴族の人は王都内のどこかに別荘を持ってる人がほとんどだと思うから結果的に数は少ないんだと思うよ」


 昔は貴族だけが使ってたって聞いたけど、今は普通の人も一緒だから貴族よりも平民の数の方が圧倒的に多いだろうに、いったい何部屋あるんだろうここ。

 ん? どうしたハワード?

 ハワードが俺の頭の上をじっと見ていた。そんなに俺の寝癖が気になるのか?


「どした?」

「あ~……おはよう」

「え? ああ、おは――ひょぉぅっ!?」


 いきなり首筋あたりにピタリ何かがくっついたから、びっくりして変な声を上げてしまった

 つーか誰だ!? いきなり触ってきたのは!?

 リアクションと共に振り向いた先には、にやけ面のフランがいた。


「にひぃ~、おはよう~」


 両手を前に出してるってことは触ったのこいつだな。何してくれやがる。

 よく見ると学校指定の制服の前ボタンがかけ違いになっていておへそが見えていた。よくその状態に気づかずにここまでこれたな。


「おはようフラン」


 とりあえずサプライズのお返しとして人差し指をそのへそに目がけて突っ込んだ。


「怒られちゃったね」

「誰のせいだあほったれ」


 奇声に続く奇声で食堂スタッフから静かに注意された。

 朝からとんだ災難だ。




 ~~~




 いい香りのするバターが塗られたトーストにトロットロのスクランブルエッグ、多分レタスっぽいのがメインのサラダにコーヒー、他色々。

 意外と量があってよかった、満腹満腹。

 朝食を食べた後、ハワードたちと共に寝癖を直しつつ学校へと向かった。


「近くていいよね~、朝早く起きても二度寝できるもん」

「だよな、分かる、あと五分が十分くらいいけそうに感じるからなあ」

「ね~」


 寮からなら急いで大体五分くらいで校舎につくから、これだけ近いと起きようという意思が弱くなるのも納得できる。

 朝特有の行くしんどさが近いってだけでだいぶ変わるからな。


「いやちゃんと起きようよ」


 はい、ごもっともです。

 くだらん会話をしながら今日の予定を確認しつつ寝癖をなしつつ……水ぶっかけたら治るかな。

 で、昇降口に到着した。


「そういやクラスとか学年とかってあるのか? こっちの学校事情は知らないんだが」


 そうハワードに耳打ちした。さすがにここら辺は人の数が多くなっているし、なんか知らんがやたら混雑している。

 こっちというのはもちろん世界的な意味でだ。


「学年は1、2、3年、クラスはその年の生徒数で変わるけど大体10以上はあるって聞いたけど」

「全体の生徒数どれくらいだっけ」

「たしか5000人前後かな」

「まあだいたい一学年1500は超えるか、この学校おかしすぎるだろ……」


 一クラス40人としても40組以上あるのか、膨大すぎる、規模が違いますよ。

 異世界ってすごい。


「とりあえず教室行こ! ここ人いっぱいいて大変だよ!」

「だな、でも俺らどこに行きゃいいのよ?」


 フランが急かしてくるが教室がどこかわからん。

 クラスがどこになるかも分かんないしな。

 と、迷っていたら人混みの奥に何か書かれたデカい掲示板を発見した。


「なあ奥のアレ、あれじゃねーか? クラスとか書かれてるの」

「え? どれ? あれのこと?」


 ハワードが目いっぱい背伸びをしながら人混みの先を確認する。

 掲示板に一番近い人たちが次々に校舎へと入っていくから、あれに書かれてるんだろう。


「わりい、ちょっと確認してきてくんねえか? こっちの文字はまださっぱりなんだ」

「分かった、ちょっと待ってて」


 そしてハワードは人混みをかき分けながら掲示板へと進んでいった。


「ハワードー! 私のもお願いー!」

「お前は自分で行かんかい!」


 楽しようとするんじゃない! 人のこと言えないけど。

 しばらくして頭をぼさぼさにしたハワードが戻ってきた。

 大変だったな、ありがとう。


「ふぅ、僕とリューマ君、フランさんも同じクラスだったよ、2階の南第3教室だって」

「おお、同じクラスだって! 良かったねリューマ、ハワード!」


 耳に近くなくてもこの喧噪に聞こえる元気ボイス。

 同じクラスでよかった、別々だったら正直挫けそうだった。


「そうだね、これだけの人がいるのに同じになれたんだから、運命の神様が手を引いてくれのかもね」

「ロマンチックな考えだ、でもフランと一緒かー、これから先大変だなー」

「えー! なにそれー!? おへそ触ったくせにー!」


 何だよそれ関係ないだろ。


「お前だって首触ったろうが」

「おへその方がエッチですー!」

「まあまあとりあえず教室もわかったことだし行こうよ」

「了解、ほら行くぞフラン」

「もう~、次おへそ見せたら私も突き刺すからね」


 フランが頬を膨らませながら人差し指で突き刺す動きをする。しかも両手で。

 服装と腹には注意しよう。

 そうしてハワードを先頭に、俺たちがこれから通うことになる教室へと向かった。

 学校と呼んではいたが、校舎の中はまるで全然違い城のようで、廊下は大理石か何かで敷き詰められ、所々に調度品が置かれており上品な印象を受ける。

 なんか歩いてるだけで変に背筋が伸びそう。

 そして何故かいろんなところを歩き回ってようやく教室の前についた。


「ふう、意外と長かったな」

「ふひ~あっち行ってこっち行ってしたからね……ちかれた~」

「ごめんね……途中で道に迷ちゃって……」


 そりゃあもうしゃーない、だって広いもん。

 校内放送が現実味を帯びてきたな、覚悟しとこ。

 目の前の教室を前に一呼吸して扉を開ける。

 中には既に数十名の生徒がいて、新しい友人や共に来た友人たちと歓談しているようだった。

 だが俺が扉を開けて入ってきた瞬間、それがピタッと止まった。

 おうなんよ?


「お、おっす、おはよう」


 今度はこそこそと話し始めた。おうスルーかいそうかい。

 うーん挨拶がダメだったのか? もっと礼儀よく畏まって言った方がよかったのだろうか。

 皆様、ご機嫌麗しゅう。なんか違う。

 気にしないことにして黒板を見るとマス目状に図が描かれていて、それぞれのマスに文字が書かれている。


「これ、座る席のようだね、リューマ君は一番右上だよ」

「おおありがと」


 ありがたいことにハワードがすぐに教えてくれた。

 名前が書かれてるこのマス目が席をあらわしてるってことは、一番右上ってことで……よりにもよって一番前か。

 小学校の頃一番前の席ってなんか苦手だったんだよな。

 まあ、右端ってだけでまだましか。


「僕はその後ろみたいだ」

「私はリューマの横だね、やったね! お隣さんだよ」

「遅刻した問題児だから一番前に置きたかったんだろうな」

「そ・れ・は、リューマもでしょー!」


 痛い痛い脇腹をぐりぐりすんな、特に左はあかんて、悪かったって。

 そして席について談笑していると次々と生徒が入ってきた。

 しかし大体のやつが俺の顔を見てあって顔をするのだ、特に一部女子はキッと睨んでくる。

 俺が何したってんだよ……。

 そして席が埋まったところで教師が入ってきた。タイミング良いな。


「えーみなさんおはようございます、私は魔物学を教えるダミアン・ダングルベールです」


 教壇に立ち挨拶をするのは初老の男性で、なんか眠たそうな眼をしているな。

 ダミアン先生が教卓に荷物を置き、本を取り出していく。


「えー本来、このクラスの担任は私ではなく、魔道学のシルヴェストル先生が受け持つことになるのですが、えー今諸事情でこちらに来ることができないので、えー代わりに今日最初の授業である、魔物学担当の私が来たということです」


 へえー、あのシルヴェストルさんが担任なのか。

 校長室であったモノクルの人を思い出した。

 しかし魔物学か、何を教えるんだろ。生物みたいなもんかな。

 ちょっと楽しみだ。


「えーではまず、教科書を配ります。 受け取ったら後ろに回してあげてください。 えー足りない所があったら教えてください」


 そして先生は教科書をその列の人数分持って、まず俺の席にどんと置いた。意外と分厚いから目の前が本タワーで遮られた。

 置かれた本は6冊、横が6人だから単純計算で36人いるのかこの教室。ここら辺は意外とふつう。

 まあとりあえず1冊とって残りを後ろに回す。


「ほいさっ」

「ありがとう」

「うわっ、すごっ!?」


 隣でどんと教科書タワーを建築されたフランが驚いている。

 俺は適当に本をパラパラとめくり、知ってたというか当然のごとく残念な気持ちに襲われた。

 読めない。ですよねー。


「大丈夫?」


 ガックリ項垂れるとハワードが声をかけてくれた。

 全然だいじょばない。


「頼む、数ページだけでいいから後で翻訳手伝ってくれ」

「ああ、わかったよ」


 マジで助かる!

 文字は分からないが要所要所に挿絵が入っているので今は雰囲気で誤魔化そう。


「えー教科書を受け取ったらページを確認して、落丁がないか、白紙のページが無いか確認してください。 えーあった場合はこちらで新しいものに交換いたします」


 先生が周りを確認してしばらくするが、交換に出す人はいないようだ。

 俺のは……わからん。まああったらあったで後で何とかしよう。


「えーではないようなので、このまま授業を始めさせてもらいます。 えーそれと今回は教科書は使わないのでしまっておいてもかまいません」


 これから授業、というところでこっそり腕時計を確認すると、時刻は大体9時。

 寮からここまで大体15分と仮定して、朝食に30分、身支度に5分、よし。

 8時くらいまでは寝れる。


「えー魔物学とは、そのまま魔物について学ぶ授業です。 魔物とは、虫や魚、鳥獣たちとは異なるものとして扱われます。 えーそれはなぜか、はいマートニーさん」


 おそらく生徒名簿であろうか、それを見ながらフランにあてる。

 さっそく問題を出してきたな。

 いきなり当てられたフランがあわてる。


「え!? 私!? えと……えーと、か、顔が怖いから!」


 なんじゃそりゃ。

 ほかの皆は分かってるのかクスクスと声が聞こえる。


「えー強面が多いのも事実ですがね、魔物が区別されるのは、その他の生き物と違い、魔力を保有するからです。 魔力を持つ生き物、だから魔物、そのまんまですね」


 あーなんとなくわかる。オークとかドラゴンとか悪魔とか。

 色々なところで簡単な? 問題を出されながら、魔物についての話しは進む。


「えーここ王都周辺では、すでに人を襲うような中型以上の魔物は、商業ルートの安全化を目的に、たびたび騎士団によって討伐作戦が組まれ、えーこの辺りはすでに人を襲うほどではない、まあ襲われたとしても、私でも軽くあしらえるような、小型の魔物だけになりました」


 騎士団はんぱねぇな。

 だから護衛なしでもここまでこれたんだな、そういえば王都に来る途中魔物らしきものは一切見なかったしな。


「えーそのため、この周辺の小型の魔物はほとんどが人畜無害です。その代表がこれ」


 これ!? これと言ったか!?

 何やらすさまじいことをのたまって教卓に大きめの瓶を乗せる。

 これ……ってなんだ? 中には何やら青い液体のようなものが入っている。

 何だあれ?


「えーこれは今朝(王都の)外で捕れたスライムです」


 スライム!? そんな鮮魚みたいに!

 あーでもスライム、スライムかー。

 スライムっていうと、あのにやけ面が出てくる。おう何わろてんねん。

 某RPGのスライムを頭の中でつついてると、キャーと悲鳴が上がる。

 なんだなんだ!?


「えー安心してください、スライムは人を襲いません」


 この教師、そのスライムを取り出して片手に乗せていた。

 ホントに大丈夫か?


「えースライムの食性は水分です、体に水分を取り込みそのまま自分の体とします。えー体のほぼ全てが水で出来ているんですね」


 クラゲみたいだな。


「クラゲみたいですね」


 居るんかい!

 新情報、クラゲはいる。


「えー体を構成する水分に自分が持つ僅かな魔力を通して、自分の体として繋ぎ止めています。 えーなので……」


 そういって先生は広げた紙にべチャッとスライムを投げつけた。

 おいおい。


「えーご覧の通り、強い衝撃を受けても液体は飛散しませんし、えーそして、スライムがいた場所にも水分は残っていません」


 落ちたスライムを拾い上げると濡れていたり、ドロドロしていたりすることはなく綺麗なままだった。


「えーこれで木の上から落ちたりしても大丈夫というわけですね、それに水分が残っているということは体がなくなっていっているということですからね。 えーこれはスライムの防衛能力の一つです」


 その通りだ、いちいち歩くたびに水分がのこってりゃどんどん体が小さくなっていずれ消滅する。

 命削りの移動とか人生ハードすぎるだろスライム。


「えーとはいえ、空気中の水分も取り込むことができるので、えーそう滅多に消えたりしませんがね」


 スライムって意外としぶといのな。

 でもアレだな、先生の手の上でプルプルと揺れてるのを見てるとつい触ってみたくなる。


「えーでは、触ってみたい人」


 ばっちタイミング! 

 女子連中から小さな悲鳴がする中、俺は迷うことなく真っ先に手を上げた。

 って俺以外誰も手を上げてない。おうフランそのばっちぃの見るような顔やめなさい。


「えーでは……リューマさん、どうぞ」

「はいなぁ……おお……! 柔らかい」


 先生からスライムを、差し出した両手の上に乗せられるとぷるるんと柔らかいい感触と少しだけのズシッとした感触と共に乗っかってくる。

 大きさは拳一つ分くらいか、小さいけどしっかりと重さを感じられる。

 そして冷たい、ひんやりしてる。 夏にもってこいじゃねえか。

 手で包み込むとしっかりとした弾力がやさしく手のひらを押し返してくる。

 片手で持ち上げてみると、もう片方の手には水気が残っていない。サラサラだ。

 聞いたり見たりしてなんとなく分かったけど、実際に体感してみるとはっきりと分かってくる。

 良いなこれ、触ってて気持ちいい。

 癖になりそうだ。


「気に入ったようですね」

「癖になる感触です」

「良ければ差し上げましょうか?」

「マジっすか!?」


 いいの!? もらっていいんですか?

 若干、否大きな期待が膨らむ。


「どうせ今日の授業のために取ってきたものですし、かまいませんよ」

「ありがとうございます!」


 よし! マジか! 異世界に来て半年以上、ここでまさかの異世界らしいものを手に入れるとは!


「えースライムは水さえあれば長生きします、そして水以外のものは一切口にしません、なにせ口すらないですしね。 えーしかし、液体を取り込むということですが、液体であれば何でも取り込みます。 それが危険な薬品であろうと、泥水であろうと、はたまた、獣の排泄物であろうとです」


 教室中からえー、やだーとか、汚ーいとか悲鳴が上がってるけど、先生、これは大丈夫なんですか?

 俺、すっげ触りまくりましたけど。


「えーこのスライムは大丈夫ですよ、今朝捕ってきてすぐにきれいな流水につけときましたので、体内の不純物は取り除かれています。 えーこの大きさですと、流水につけておけば大体2、3時間で綺麗になります」


 よかった、安心した。

 病気になったら元の世界だろうと異世界だろう困ることには違いない。


「えーですので、町の中でスライムを見つけたからといって、無暗に触ってはいけません。 どんなものを取り込んでいるのか解りませんので、病気をもらっても全て自己責任ですからね、分かりましたか?」

「はい!」


 皆が綺麗にそろった返事で答えた。


「ちなみに先生、こいつってどれくらい長生きするんですか?」

「そうですね、たしか……何年か前だったか、自宅の押し入れの中を整理していると一年くらい前に捕まえた瓶詰のスライムが出てきましてね」


 うわーお先生ったらひどい。


「密封されていたんで、中の水分が蒸発してもその水分をまた吸って生き延びてたんですね。ですので良い環境でだろうと悪い環境であろうと、水があればしぶとく長生きします。 噂では10年生きたスライムもいるそうです。 ですので、5、6年とみていいのではないでしょうか」


 密封状態で1年だ。 良環境ならそれくらいはいくか?

 ちなみにそのスライムはどうなりましたか?


「えーちなみに、見つかったスライムはまだ瓶の中で生きてます」


 えれぇしぶてえなそのスライム。


「えー与える水分についても、思い出した時にでもバケツにためた水に2、3時間つけてあげるくらいでいいです。 なんなら手ですくってかけるだけでも問題ありません」

「先生、バケツの水を全て吸収するということはないんですか?」


 斜め後ろの生徒が質問を出した。

 そういやそうだ、水分を吸収して体にするなら、バケツにつけてりゃその水全部取り込んでデカくなるんじゃ……。


「えーそれについては大丈夫です。スライムの大きさはその個体が保有する魔力量で決まります。何せ体の水分を魔力で纏めているのですから、それを超える水分を得たとしても、スライムの体とはなり得ません」


 よかった、バケツにつけて朝目が覚めたらビックなスライムに取り込まれてた、なんてことはなさそうだ。

 て、ん? なんだこれ?

 スライムの中に何かある。 これは……小っちゃいビー玉?


「先生、このスライム中に何かあるんですけど」

「おや? 珍しいですね、核持ちでしたか」

「核持ち?」

「はい、えーしかし核といっても心臓の類ではありません、ただの不純物の塊です。スライムは吸収した不純物をそうやって一つにまとめて排出するんです。 えー不純物ではありますが、自然に棲息するスライムなら、取り込んだ不純物といえど大して汚くありません。見ての通り綺麗な結晶でしょう?」


 たしかに。ラムネに入ってるビー玉みたいだ。


「ですのでほっといてもかまいません、じきに排出されてどっかに転がってますので」


 そうして今日最初の授業はスライムの生態についての話で終了した。

 いやしかし、スライム、気持ちいいな。

 指先でつついて掌の上でぷるるんと揺れると気分が癒される。

 テッテレー、俺はスライムを手に入れた。


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