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第十八話 決着

「おいおい!? いきなり魔法の直撃を受けたぞ大丈夫か!?」


 実技場の外円に並ぶ観客席の一番上でこの決闘を見ていた私たちは、開始早々魔法の直撃を受けた龍真君に肝を冷やす。

 彼は加護がないという特異体質故に、回復魔法や強化魔法等の恩恵を受けれないという致命的弱点がある。

 学校内の決闘において命にかかわるような殺意のある攻撃は禁止されてはいるが、何気ない一撃で致命傷を受けることも有りうる。


「落ちつけガウェイン、いざという時は俺が出るさ。それにほら見ろ、大丈夫なようだぞ?」


 隣で同じようにこの決闘を見届けるガラハッドに言われ視線を下に戻すと吹き飛ばされた彼がゆくっりと立ち上がろうとしていた。


「しかしメリッサ嬢も無理をするなぁ、下級の扱いは苦手だろうに」 

「ん? 苦手? 下級なのに苦手なのか?」


 確かに、さっきメリッサが放った下級魔法『フレイボム』は、数メートル先の空間に魔力を集中させ火の属性を付与し現象させる魔法だが、さっきのあれはどう見ても1m内に、しかも暴発したように爆発の形がいびつだった。


「あの子は持てる魔力量が他の同年代の子たちに比べて異様にデカいんだ。 量だけで言えば一番だ。 だが彼女は……魔力のコントロールが苦手でなぁ」

「苦手?」

「簡単に言うなら、彼女は小さなコップにバケツをひっくり返すことしかできないんだ」


 何が言いたいのかは分かった。

 環位が低い魔法は大量の魔力を必要としない。

 環位が低い=小さなコップに、莫大な魔力=バケツの水をひっくり返せば、当然溢れ零れる、つまり暴発する。

 彼女はそのバケツを少しだけ傾けることができないということか。


「さあ龍真君、この先騎士として、引いてはこの世界で戦っていくためには、この程度の障害を乗り越えられなければ到底不可能というものだぞぅ?」

「ガラハッド、言い方が悪役っぽいぞ」

「……黒マントを羽織っといたほうがよかったかな」

「バカかお前は……」


 やはり止めに行った方がいいかなと思いながら、再び私たちは下で続く決闘で万が一の事が起こらないよう願いながら見下ろした。





 ~~~~~~





 目の前で爆発した。

 何が爆発したかは分からない。

 思い切り振り上げる構えのおかげで顔への直撃は防げたが、おかげで左腕がしびれるし、左手が握れない。

 頭も体もデカい何かに叩き付けられたみたいに痛い。

 耳なりがひどい、爆音でやられたのかもしれない。

 目の前が歪む、酷い眩暈だ。


「リューマ君!!」

「ぅがっ!?」


 耳鳴りの中はっきり聞こえた声。白くなりつつあった頭の中が決闘中であることを思い出す。

 ハワードか? 視線を客席に向けると独り身を乗り出す生徒がいた。

 メリッサは、どこだ……クソっ……。


「剣は……ふん……ぐっ!!」


 ぼやける視界の中、傍らに落ちていた剣を拾い何とか立ち上がる。

 視界が徐々に戻ってきた。

 メリッサは……いた! 目の前、さっきと位置は変わってない。

 だが、どういうわけか魔法を放った思われる左手の手甲が黒く焦げていた。

 しかも、中指が変な方向に曲がっている……うわぁ……超痛ってえええ!!

 見ただけで背筋に冷や汗が流れてくる。

 自分の指は……大丈夫だ。麻痺してることを除けば。


「くぅ……だから下級は嫌なのよ……痛ぅ……」


 メリッサが左手を抱えながら蹲る。

 どうしよう、マジで痛そうにしているんだが。

 さすがに心配していると、こちらに気づいたメリッサもすぐに剣を支えに立ち上がり、再び戦闘態勢を取る。

 おいおいあれでまだやるってのか。


「なに? 同情でもしてるの? 下級もろくに使えないからって……」

「んなわけねえだろ、使えるだけマシだろうが……」


 再び剣を構えるが左手は添えるだけ。

 ちょっとまずいかもしれない。


「さあ、続きを始めるわよ」

「勇ましいけど、さすがにやめにしないか? ヤバいだろ、その指」

「指が何? 実戦ではそんなこと気にしてられないでしょ。 それに、後で治すわよ、こんなの」


 メリッサも剣を構える。

 そうかい、じゃあ遠慮なくいくぞ……!!


「だああっ!!」


 駆け出した俺はめっりさに剣を叩き付けるが、あっさりメリッサの右側へと払われた。


「ふん!」

「のわあっ!?」


 そのままナイトソードを地面に抑え込むように置いていたレイピアを滑らせ俺の頭を狙うが、体をのけぞらせてそれを回避する。

 先が地面に埋まるナイトソード左手に引っ掛けて次の薙ぎ払いを右の手甲でガードするが、軽装の薄いやつだから細いレイピアでも勢いがついた攻撃を止めきれず凹んでしまう。

 右腕に鉄パイプで殴られたような痛みが走る。

 まずい、折れる!?


「ぐう……ぐっ!!」

「さっきは野蛮な戦い方に油断したけど……今度は、そうはいかないわ」

「そうかいっ!!」


 凹んだ装甲を引っかけるようにしてレイピアを上にこじ開け、体を回転させメリッサの懐に入り、回る勢いで左の裏拳を顔に叩き込もうとするが、メリッサはそれを予測していたかのように体を逸らして避ける。


「言ったはずよ! そうはいかないと!」


 攻撃の隙を狙ったレイピアが左肩に振り下ろされる。


「があああっ!! ……ぐぅ……っそおお!!」


 激痛が走る左肩を無視して体を前に出し、メリッサの腕を丸太を抱えるように押さえつけ肉迫する。

 目の前には無防備なメリッサ、左でレイピアを持つを手を押さえ込んでメリッサの反撃を封じ、そしてその顔をぶん殴る!!


「こいつっ……きゃああっ!!」


 無意識にメリッサが顔の前に左てを突き出すが、回り込むように避けた拳が直撃する。

 相手がよろめいた隙にさらに四度、五度、六度と連続で殴りつける。


「おおおおおっ!!」

「ぐっ……が……あ"あっ!!」

「おらあああっ!!」


 全力で振りかぶった拳が直撃したメリッサが大きく仰け反る。

 だがそれでも地面に倒れることなくふらふらと体勢を立て直すメリッサ。

 クソ……まだ倒れねえのかよ……。

 左は……まだ握れない、頭上の魔法がまた動き出す前に何とかしないと。


「くそがっ!!」


 今の流れに任せまたメリッサに肉迫する。

 だが油断していた、あんな暴発をしでかしたなら、もう使ってこないだろうと。


「こん……のおおっ!!」


 頭を押さえるメリッサが涙目で右手をこっちに向ける。

 その手は緑の輝きを放っていた。

 まさか!?


「なにっ!?」

「穿つは突風!! ハンマーガスト!!」


 短い詠唱の終わりと同時に強烈という言葉では表せないほど、まるで何かの塊が腹に叩き付けらる様な衝撃に吹き飛ばされる。

 だがメリッサも案の定魔法が暴発し、突風によって反対方向に吹き飛ばされた。

 お互い数メートルを吹き飛ばされて地面へと叩き付けられる。


「グフッ……がぁ、うっ……おぇ……はぁ、はぁ」


 腹への強烈な衝撃に吐きそうになった。

 よかった、昼飯食う前で。

 クソ……ばかか俺は! 二度も同じように吹っ飛ばされるなんて!!

 あ、まずい……足が、震えて……立てない……。


「はあ、はあ、本当に……バカね、あんた……」


 その通りだよクソッ、もともと作戦なんて詠唱中に突撃しかなかったんだから。

 ふらふらと立ち上がりながらも薄ら笑いを浮かべるメリッサ。

 風の魔法を使ったからかその右手は焦げるようなことはなかったが、力なく垂れ下がっていた。


「まったくだ……、てめえもな……ぐぅ」

「そうね、でも、もう両手なんていらない、これで、最後よ……っ!!」


 そう宣言するとメリッサの頭上にある巨大な紅い魔法陣が再び回転しだした。


「そう、これで……消し飛ばす!!」


 ぐう……まずい、まずい、まずい!

 あれはくらえない、負けるとかそんなんよりももっとヤバい!

 頭の中で直感がそう告げる。


「くうっそおお!!」


 何とか、辛うじて立ち上がる。

 足が震える、まるで小鹿だな……。

 メリッサまで大体10m強、てところか、何時魔法が完成してぶっ放されるか分からない。

 走って間に合うか、いやこの距離なら……あの距離より近い!!

 腰の裏の袋に手をまわしてとっておいた秘密兵器を取り出す。

 でも使えるかな? 体中ボロボロなんだけど……。


「龍真君!!」

「っ!!」


 魔法陣の赤い輝きが降り注ぐ中、誰かが俺の名前を呼ぶ。


「ハワード?」


 視線を向けた先にはハワードとフランが最前列から身を乗り出してまで見ていた。


「龍真君、……頑張って!」

「リューーマーー!! ファイットーー!!」


 はは、単純だが……そういう応援は、嫌いじゃない……!!

 ギュッと秘密兵器を握りしめる。

 気が付くと、体の痛みが引いたように感じる。

 そして魔法陣がさっきまでよりも強く輝きだす、おそらく完成したんだ。


「さあ、沈みなさい!!」

「冗談!!」


 取り出した秘密兵器を両手で包み込み、大きく振りかぶる。

 この距離なら、


「クリムゾン……」


 キャッチャーまでよりは短い!!


「強肩なめんなあああああ!!!」


 俺はその秘密兵器、ただの鉄球を思いっきりぶん投げた。


「なっ!?」


 まさか飛び道具が出てくると思わなかったのか、目を見開くメリッサの反応が遅れる。

 真っ直ぐ飛来する鉄球を避けれず、そのまま頭部に直撃する。

 デッドボール? 知らんなあ!!


「くっ、なんてものを!! っ!?」

「もういっぱあああつ!!」


 投げると同時に走り出しナイトソードを拾い上げた俺は、相手がこっちを見るタイミングで二つ目の鉄球を投げる。

 今度の鉄球は頭を振ってかわすが、鉄球に視線が向いている隙に俺の接近を許してしまう。


「しまっ……!?」

「っらああっ!!」


 メリッサが頭を上げる前にその体に飛び蹴りを入れる。

 そして俺のナイトソードで、飛び蹴りで地面に叩き付けられたメリッサが上体を起こす前に、あの構えをとる。

 それは体を捻り、剣を肩まで回して、両足は肩幅よりやや広めに。


「く、そおお……何度も何度もおお……っ!!」


 そして相手が頭を上げるタイミングを狙って、思いっ切り、振りぬける!!!!


「ひっ!?」

「だあらあああああああああああああ!!!!」


 バットの如く振りぬかれた一撃がメリッサのボコボコになりつつあるヘルムを捉え、激しい金属音と共にヘルムが観客席に弧を描いて飛んでき、落ちる場所にいた生徒たちが慌ててそれを避けた。

 そして、メリッサの方は頭への度重なる衝撃でついに気を失って倒れていた。

 起き上がろうとする気配はない。


「は、はは……」


 乾いた笑いがせりあがってくる。

 この状況が示す意味、それは……


「かああっったぞおおおおおおおおお!!!!」


 俺は両手を振り上げて勝ち鬨を上げ、観客席からは一斉に歓声が沸き立つ。

 ああ勝った、よかった……も、もう無理……。

 だが、重くなりつつある体を休ませたくて地面に倒れようとした時、歓声に包まれる中、急に一部の生徒たちがどよめきだす。


「あ、なんだ?」


 それはハワードの方も同じだった。

 何か俺に向かって叫んでいるな。

 え~っと……に、げ……て?

 逃げて?


「うっ、なんだ!?」


 空の方がチカチカする!?

 ってあの魔法陣か!

 メリッサが作り上げた巨大な魔法陣がゆらゆらと揺らぎながら点滅する。

 更に魔法陣からは赤い粒子のようなものが吹き出している。

 何アレ、すっごいヤバい予感がするんだけど。

 魔法陣に近い生徒たちも何が起きるのか解っているようで、我先にとその場から逃げていく。


「龍真君!!」

「っ! ハワード!!」


 俺に一番近い席からハワードが呼ぶ。


「逃げて! 魔法が暴発する!!」

「はあ!?」


 上の魔法陣がピリピリと何やら放ち始めている。

 まさかまた爆発するのか!?

 てかさっきから魔法暴発させすぎだろう! へたくそかこいつ!!

 って、あのデカいやつってもしかして俺が原因じゃね?


「魔法を撃つ直前にメリッサを気絶させたから、魔力がコントロールを失って暴走してるんだ!!」


 あ、俺だ。

 くそ、なんてこったい!

 もう何度目かもしれないクソボロの体に鞭を打ってその場を離れようとするが、目の端のメリッサが映る。

 こいつまだ気絶してんのか。


「クソっ!」

「リューマなにしてんの!?」


 何するも何も、こいつも連れいていくに決まってる。

 俺はメリッサに肩を貸して引きずっていく。


「こいつにくたばられたら、下げさせる頭が無くなんだよ!!」


 だが気絶しているメリッサが重いせいで思う様に進めない。

 まずい、背中から伝わる熱気がより熱くなる。

 間に合わない!?


「龍真君伏せて!!」

「ええいくそっ!!」


 俺はメリッサを押し倒し、その上に覆いかぶさるように地面に伏せる。


「遮るは障壁、根幹に水! ストリーム・バリア!!」


 さらに俺と魔法陣を遮るように水が渦を巻きながら円形の盾を作る。

 水の魔法のバリアか、耐えられるのか!?

 そして、ついに歪んだ魔法陣が崩壊し、その中心に光が収束し爆発する。


「うあああああ…………あ、ああ……あ?」


 あれ? 爆発は?

 陣が崩れて閃光と爆音が響くところまではわかった。

 だがそのあとの衝撃が来ない。

 バリアが守ってくれた?

 確認するために振り向いた。


「な!?」


 そこには真っ黒い球体があった。

 まるで視界という写真に真っ黒な墨を落としたみたいに、その部分だけが遠近感も立体感も抱かせない黒い丸が、魔法陣も、光も、爆発も、衝撃も、そのすべてを飲み込んでいた。


「ぶ、ブラックホール……?」


 目の前の光景はまさしくそれだった。

 そして全ての爆発の残骸を飲み干した黒い丸はゆっくりと小さくなり、消えた。

 そして何もなかったかのように静けさが戻ってくる。


「え? え? いったい何が……」

「無事か?」

「いいっ!?」


 後ろから急に話しかけられた、いや、聞こえてきた?

 耳に直接聞こえてくるようなこのイヤホンボイスは……。


「お、オードラン校長?」

「うむ、わしじゃ、で、無事かの?」

「あ、はい」


 いつの間に真後ろのにアドルフ・オードラン校長がいた。

 一体何時の間に……。



ほぞぼそ微修正

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