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第十七話 ハワード・ダリルソン ハワード・エルヴェシウス

「リューマ君!!」


 叫んでしまった。

 倒れたメリッサさんに攻撃しようとした瞬間、彼女は魔法を使って爆炎を現象させ、リューマ君を吹き飛ばした。

 その魔法はどう見ても第二環位以下の下級と称される魔法だ。

 ロヨネ君の情報では、第六環位以上の上級に分類される魔法しか使えないと言っていたけど、多分嘘を掴まされたのかもしれない。

 そもそも、上級が使えるのに下級が使えないなんて少し考えればわかるはずなのに、勝てないって諦めて考えることをやめていたから。

 僕のせいだ……。


 リューマ君は言ってくれた、父さんの事も家の事も僕がここにいることには関係ないと。

 はっきりと言ってくれた、ダチと、友達だと。


 ダリルソンさんに、今の父さんに引き取られて、ガルテアで暮らしていた時は、父さんのおかげで表向きには(・・・・・)何もなかった。

 でも、裏では悪魔の子と蔑まれ、時にはわざと聞こえるようにも言われたし、父さんがいない時には露骨に無視されたり、嫌悪の視線を向けられた。

 皆町長である今の父さんに恩があるから、何も言わなかった。

 でも心の底では嫌われていた。

 父さんのやったことは本当の事だと広まってしまったから。

 怖かった、あの視線が、怒り、憎しみ、恐怖、ずっとここにいる限りこの視線にさらされる。

 でも、わざわざこんな僕を引き取ってくれた父さんには何も言えなかった。

 だから、我慢して、それで、怖くなって、逃げるように僕は中央の騎士学校に行くと言った。

 父さんは危ないと言った。本当に僕を心配してくれてるんだと、目で分かった。

 でも、母さんは……安堵していた。


 そして騎士学校に入学する日、その入学式で彼と出会った。

 その日に堂々と正面から入ってきて、遅刻したと謝った彼。

 僕の隣の席に座るはずだったから、僕は手を挙げてかれの席を示した。それでちょっと恥ずかしい思いもしたけど。いや、ちょっとどころじゃなかったけど。

 アカホ・リューマ、彼は式の後そう名乗った。

 不思議な名前だと思った。

 この辺りではリューマ家なんて聞いたことないし、アカホという名前も独特だった。

 でもどうやら違うらしく、アカホが家名でリューマが名前らしい。

 東から来たって言ったから多分列島諸国から来たのかと思ったけど、彼の反応が怪しくて多分言いたくないのかもしれないと思った。


 その後、フランさんとも意気投合? した後はリューマ君とフランさんはあのボースマン副団長と親身に会話をしながら、呼ばれた校長室に案内されていった。


 僕はその後をついて行った。どのみちオードラン校長には用があったから。

 でも、付いて行って、そこで聞こえてきた話が、彼が異世界という場所から来たこと。

 先に出てきたフランさんと共に待っていたらそんな話が出てきたのだ。

 先にフランさんがその話を盗み聞きしようとしたから、僕もつい、それを止めるふりをして聞いてしまった。

 異世界から来たこと。加護がないこと。

 その後リューマ君と話した。この世界に来た経緯、今の境遇。

 そしてリューマ君の家族が行方不明なことを。

 それを聞いてドキッとした。僕はいまだ過去が振り切れずにいる。父さんに魔法をもっと教えてもらいたかった。母さんにもっと褒めてもらいたかった。話したかった。一緒に居たかった。

 小さいころのままの感情をそのまま捨てられずにいた。

 彼も少し同じだった。

 だからつい言ってしまった、『居るのかもしれないのなら一緒に探そう』と。


 それからは、リューマ君とフランさんと共に学校生活を送った。

 字が読めない彼に字を教え、本を翻訳したり、食堂とは思えない食堂で一緒にご飯を食べたり、はしゃぐ二人を必死に止めたり。

 僕ができなかったことが今できることがすごくうれしかった。

 何気ないことがすごく楽しかった。

 でも、リューマ君は見つけてしまった。

 全てイシュベル教によって燃やされたと思っていたものを。

 それは、父さんの研究について書き記された本だった。

 そう、人の魔物化についての研究資料。

 父さんは人を救うためだと言いった。こっそり研究を除いてしまった僕に父さんはそう言った。

 でも、父さんのオオカミの様に毛深く、鋭い鉤爪を持った右腕が、切り落とされた父さんの右腕が、それを信じようとする僕の心を揺らがせていた。


 そしてバレた。

 僕の事が。

 休みの日、あの本を持って昔住んでいた家に行くところをリューマ君たちにバレたのだ。

 ゾッとした、嫌われる、あの目を向けられる。

 でも、リューマ君は言った。友達だと、相談してくれと。

 初めて言われたよ、そんなこと。

 だから信じた、彼の目を信じて、僕の過去を話した。

 まだ途中までしか話してないけど、うまく伝えきれなかった僕に、彼はお人よしだと言った。

 つい僕も君もそうじゃないかと返した。

 僕の事を聞いてもその目が変わらなかったから。

 皆は、僕の事を知るとすぐに目の色を変えた。全員。

 でも彼は違う、だから、わざといつも通りにふるまってみた。

 彼は変わらなかった、フランさんも変わらなかった。


 メリッサさんと決闘することになった時も、フランさんは僕は僕だと。

 リューマ君はエルヴェシウスだからっておかしいと。

 異世界から来たから、感性が違うからかもしれない。

 でも、それでも僕は、龍真君とフランさんと、友達になれてよかった。

 だから叫んだ。


「龍真君!!」


 勝ってほしい。

 無理かも知れなくても、僕は、この学校を、みんなと、離れたくない。

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