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8.第五話 『ポーションがおかしい!?』 後

 


 大量の作物を前に途方に暮れていると、一木さんが小屋の外からこっちを伺っていた。

 くいくいっと触腕を動かしている。


「え、『消費、手伝ってあげる』って?」


 うれしい。


 だが私の中の理性が、冷静になるよう訴えかけた。

 パンピーの私がアレ(土魔法がカチカチに。ドアをけり破り)だぞ?

 魔物に与えていいのか? 巨大化して街を襲わない? 突然変異して飛び立たない?

 そもそも植物系の魔物が野菜とか果物食べるってどうよ? 共食いじゃないの?



「じゃ、よろしくお願いします!!」



 私の中の理性は、文句だけ言って代案は言わないんだから無責任だよね。無視!

 私は小屋の外にカチカチ魔法(もうそういうもんだと開き直った)で屋根と大きいテーブルを用意した。

 一発でできた。


 新たな食卓にはいつの間にか花ちゃんも来ていて、いよいよ共食いの様相を呈していたが、私は作業に没頭すると他に何も手につかないシングルタスク人間。

 作ったスープは素材の割に微妙だった。


 あれ変だな……

 火加減? 灰汁? 何かダンジョン産は調理が違うのか?


 ちなみに二人共、最初は触腕で食べる真似をしてくれていたけど、「ええいめんどくさい」とグビグビ吸収していた。寸胴鍋いっぱいあったスープはあっという間に空になった。


 何か変化はないかと様子を窺うも「別に何もない」と逆に不思議がられた。

 魔物には効果ないのかな?


 私の方は明確に調子がいい。

 疲れないし、力があふれてくる。

 畑仕事の雑草刈りも、ちょちょいと土魔法で地面に養分を還元させ、枯れさせる。

 なんなら雑草だけ動かせるようになっていた。

 まぁ、雑草も大きく分ければ土みたいなもんよね。


 すべて順調かと思いきや、問題があったのはポーション作製の方だ。

 何せ作物は何が起きるかわからないから売れない。


 だから、普通に普通のポーションを作ったのだが、いつもと違うものができてしまった。


「なんでぇ?」


 そりゃ焦りますよ!

 こちとら10年、これでやらせてもらってましたからね!

 10年間で得た経験はメモにまとめていて、それと比較してもこれまでにない結果だ。

 まず出来上がったポーションは色が違う。

 経験則でわかる。

 こういう時は効果にも影響が出ている。他にも味、においで異変を感じ取れる。


 失敗にしては、色の濁り、刺激臭、苦みはない。

 けれど、ポーションの効果は基本的にリスクと表裏一体だ。

 用法容量を間違えたり、過剰な効果を求めればそれだけ、跳ね返る副作用や依存性も大きくなる。

 売れなくなっちゃったよ!!


 私は薬師の『調合』スキルでポーションを作っている。

 まさか、作物の効果はスキルにまで影響するの?

 確かめなきゃ……


 そこで私は自分で実験をしてみることにした。

 断食だ。


 謎の異常発達を遂げたミラクル作物を食べず、ポーションをつくっていき、元の普通ポーションが作れるようになったら作物が原因だ。

 そこから一種ずつ作物を食べて、スキルに影響する作物をしらみつぶしに探し当てる。


 という計画を立てていたところ、一木さんが肩をとんとんとした。


「ん、どうしたの一木さん?」


 最近一木さんのボディランゲージが上手くなったせいか、私が慣れたからか、複雑な会話が普通に成立するようになっていた。


「――ふむふむ、『作物は関係なくて……』、え? 『ポーションは上手に作れてるだけ』?」


 じゃあ原因は何?


「まさかの、大自然教ですか? あははは」



 一木さんがうなずいた。

 んな馬鹿な……


「一木さんも冗談言うんですね~」


 一木さんが首、ならぬ幹を傾げる。

 大自然教の教祖は私だ。私が知らぬことが起きるはずあるまいて!!

 フフ、騙す相手が悪かったですな……



 だが、私はこの時の一木さんの言葉を次第に無視できなくなっていった。


 実験してみると、作物を食べなくてもポーションの変化は止まらなかったのだ。

 黄金色に輝いていたり、真っ赤だったり、無色透明だったり、固形になったり……怖い。


 アイテムの効果が何日も持続するなんて聞いたこと無いので、ミラクル作物の効果は抜けているはずだ。

 当然使っている素材の薬草にも変化は見られない。


「まさか、本当に大自然教か?」


 仕方ないので、私はポーションを自分で試してみることにした。

 人体実験だ。



「ええい!!」



 まず指先をちょろっと切る。

 そこにポーションをかける。

 何度もやっているけど、慣れないや。


 傷の治り具合で、そのポーションの出来が推測できる。


 普通の『治癒ポーション』のつもりで作った黄金の液体をかける。


 するとあっという間に傷が塞がった。



「え?」



 私のポーションだったらあり得ない。

 それは明らかに「普通」では無かった。


 傷の治りはまず血が止まり、痛みが緩和して、それから傷が塞がっていく。

 その過程に数分は掛かる。

 私だけじゃなくて大抵そうだ。


 それが一瞬。


「もしかして、これ……上級ポーションなんじゃ……」


 絶対そうだって!!!

 私の「普通」は「下級」だ。

 私の「下級」よりちょっといいぐらいの効果じゃない。

「上級」ぐらいの効果はあるんじゃないの?

 でも雲の上のアイテムだからギルドでも見たことが無いんだよなぁ。

「上級」って言って「上級」じゃなかったらマズいもんなぁ。色々規定とかあるだろうし。


「よし、安パイで「中級」で売ろう!!」


 大丈夫だよね。副作用とかもないし。


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