↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
50/52

10.第七話 『いいこと』

 


 黒田の帰還祭りの大騒ぎも終わり、寝静まった森の夜。


 暗黒の森に佇む男がいた。



「うぅーん、黒田だった」

「一木さんですか!?」



 黒田はドキリとして、一木さんを見つめた。



 いつもの木の一木さんではない。

 ドライアドの精霊体だ。


「危ないのよ。夜は」


 一木さんに近寄られ黒田はドキッとした。


「えぇ、少しばかり、一木さんに話がありまして」


 黒田は平静を装い、眼鏡をクイクイ上げ続けた。


「トミカに内緒?」

「トミカさんには秘密なのでしょう? その姿のこと」


 一木さんは、もじもじした。

 黒田は、眼鏡をクイクイする。


「いえ、いいんです。トミカさんに言う必要はありません」

「どうして?」

「これからこのダンジョンには探索者が挑戦に訪れるでしょう。トミカさんのことですから、うっかり探索者と鉢合わせしてしまうこともあると思います」

「うぅーん。そうねー」

「その時、トミカさんから一木さんのことがバレるのが一番問題です」


 黒田は『深緑の魔女』の片割れがモンスターであると知っていて、ライセンスを発行させた。

 バレれば、黒田の立場も危うい。


「トミカは言わないと思うわ」

「あの人の場合、疑われたら隠せないでしょう。反応とか言い方ですぐわかってしまう」

「それはそうねー。あの子は素直なのよね」

「それに万が一のとき、あの人は何も知らなかった方がいいでしょう」


 黒田はいざとなれば、自分が全て被るつもりだ。


「優しいのね、黒田」


 一木さんに微笑まれて黒田は膝から崩れ落ちた。


「ついでにもう一つご相談が」

「今のなぁに?」

「いえ、こっちを」


 黒田はタブレットの口座を見せた。

 一木さんが覗き込み、黒田はドキッとした。


「黒田?」

「仮でギルドを立ち上げて、そこにポーションの売り上げを入金してます」

「ふぅん?」

「このギルドの資金が実質、トミカさんの資産なわけなんですが」

「うぅーん、それで?」

「これを見たら、トミカさんが『もう働かなくてよくない?』とか言い出しそうで」

「そうー?」


 一木さんが首を傾げた。


 黒田は胸を押さえた。


「はぁ、はぁ……はい」

「黒田に任せるわ」

「信用しすぎでは?」

「うぅーん。黒田なら、正しく使えるわ。もし使わないなら、欲しい人にあげて」

「いやそれは……寄付も検討ですね。はい」



 じっと、一木さんは黒田のタブレットを見た。



「一木さん、タブレット欲しいですか?」

「うぅーん、いらない! トミカがくれたこれがあるもの」

「そうですか」


 黒田は暗闇の中、天を仰いだ。


「うぅーん……ダンジョンでそれは死ぬわよ、黒田」



 後日、新聞、雑誌、ネットでは、『深緑の魔女』による多額寄付が話題になった。



 〈……10億ってマジか……〉

 〈いや、最初が10億で、次20億らしいぞ〉

 〈これ、ギルド『深緑』だってよ〉

 〈なんで増えてんだよww〉

 〈ポーションと不動産取引で稼いでるらしいな〉

 〈100万でいいからくれぇ!!〉

 〈まじで行動原理不明だな〉

 〈人助けして、ポーションで命救って、寄付って……聖人かよ〉

 〈『深緑の聖女』じゃん〉


 その話題をトミカも黒田が持ってきた雑誌で知った。


「豪気なお方もいるもんですなぁ……ん? この『深緑の魔女』の寄付って、ものほん? 私のお金ってどうなってるんだ?」

【黒田に寄付してもらったわ】

「そっかー。え、私知らないんですけど!! 一木さんOKしちゃったの!?」

【しちゃったの】

「くそう、黒田!! 一木さんを言いくるめたな!」


 トミカは黒田に詰め寄った。

 一木さんはあたふたとただ様子を見守る。


「トミカさん、どうぞ」

「このインテリヤクザ! 私の30億返せ!」

「あれは根回しの一環です。省庁に許可も得ましたし土地所有者との算段が付きましたよ」

「土地? 何のことよ」


 ターミナル周辺の土地買収に関する書類だった。


「ターミナルはやはり買えませんが、周囲の土地を購入しました。実質、このターミナルもトミカさんのものです」


 そのターミナルの住所にトミカは見覚えがあった。

 トミカはポロポロと涙を流した。


「黒田くん……あざす」


 トミカは20年越しに実家を取り戻した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おぉ?トミカさん日和ったな?
黒田君、、、一木さんにエナジードレインされてない?立ってられないほどの疲労感はやばいw
うーーーーーーーーーーーん?黒田くん、一木さんにまさかの○惚印?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。