6.第四話 『ポーション革命』
それは日本ダンジョン協会から突如発表された。
協会直営のアイテムショップにてS級~B級ギルド、パーティ、個人に限定で、新たなアイテムが追加された。
「これは本物なのか?」
NEW!【極上級回復薬】 税込み8千万円
NEW!【上級回復薬】 税込み2千万円
NEW!【中級回復薬】 税込み8百万円
NEW!【下級回復薬】 税込み1百万円
NEW!【極上級魔力回復薬】税込み6千万円
NEW!【上級魔力回復薬】 税込み2千万円
NEW!【中級魔力回復薬】 税込み5百万円
NEW!【下級魔力回復薬】 税込み5十万円
探索者たちにとってそれは無視できないものであり、それぞれが懇意にしている協会関係者に問い合わせた。
そこで、その供給元が新たなS級『深緑の魔女』であることを確認した。
「うーん、『極上』がアイテム屋で手に入るのはありがたいけどね~」
「高っけぇな、おい!」
「いざというときの備えにはいいが、常用できる価格ではないか……」
一般販売前、『極上』を用いた外交交渉などが行われ、その供給元が『深緑』であることは公然の事実。
しかし、その価格はおいそれと手出しできるものではない。
ポーションには当たり外れがある。
保障があっても、それが生死を左右する局面では意味がない。
「『深緑の魔女』がどれだけの供給を可能としているのかで、価格もブレるだろう」
「よし、決めた。値下がりまで待つ!!」
「とりあえず、ここは様子見といたしましょう」
多くが懐疑的である中で、率先してそれらを使い始めたギルドがあった。
〔買い物かご内〕
【極上級回復薬】 税込み8千万円 3/3個
【上級回復薬】 税込み2千万円 8/8個
【中級回復薬】 税込み8百万円 18/18個
【下級回復薬】 税込み1百万円 83/83個
【極上級魔力回復薬】税込み6千万円 6/6個
【上級魔力回復薬】 税込み2千万円 16/16個
【中級魔力回復薬】 税込み5百万円 48/48個
【下級魔力回復薬】 税込み5十万円 77/77個
計259点 合計15億8,550万円→〔購入決定〕
他の探索者が手をこまねいている間、『東京賢人会』が初回分を全て購入した。
「大丈夫なんですか、代表!?」
「いきなり大量購入なんかしなくても……」
「下級魔力回復薬でも相場よりもかなり高いですよ?」
一般のものが10万から20万円だとすると5倍から10倍の価格がつけられていることになる。
「元は取れます。サイトをよく御覧なさい」
NEW!【下級回復薬】 税込み1百万円
→【副作用、依存性がほぼなく高用量での使用が可能】
「うっそ! これ新発はほぼ副作用が無いってこと!?」
「魔力回復薬も!? つまり連続で使用できるってことか」
「確かに、これが本当なら探索が一気に……いや、わかりづらいな! みんなこれ気づいてないよ!?」
「ふふん、気付かれる前に買ってしまいましょう。これが底値で、さらに値上がりしますよ」
「いや、あんたが買い占めたからな」
「代表ったら、誠実そうな顔して腹黒~」
「前情報で知っとったやろ? 全力で役得やんな」
何を隠そう、その効果を『鑑定』したのは『黒衣の賢者』、黒田本人だ。
『深緑の魔女』と唯一コンタクトを取り、協会との仲立ちを果たす才人。
関東甲信地方最大の派閥『東京賢人会』には魔法職が多かった。
その最大のネックになるのは保有魔力量とダンジョン探索における消費量のバランスだ。
最適解を計算し、常に余力を残す戦い方は限界が早い。
魔法職は『奈落』、『龍』、そして『緑』では本気を出せない。
だがその宿命から、『東京賢人会』は脱した。
『奈落』の66階層『神魔六神将の間』における勝利。
みんなその挑戦を笑った。
「早まったな、黒田さん」
「ポーションがどれだけあろうと、S級は彼一人だものね~」
「残念だ。『深緑』とコンタクトできる彼がいなくなろうとは……」
その配信映像は公開され大きな反響を呼んだ。
ボス部屋前。
黒田の取った作戦はシンプルだ。
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
黒田はポーションを飲む。
「すっげぇ……!!」
「これだけのバフを重ね掛けするなんて!!」
「器用よね、うちの代表は……」
事前に、これでもかとエンチャントする。
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
黒田はポーションを飲む。
「あ……あの代表?」
「まだやるの……?」
「黒田さん……ちょっとあれ?」
総勢38名のメンバーを強化しまくる。
普通なら魔力が足りなくなるところを、ポーションで回復して何倍もエンチャントする。
副作用の無いポーションだからこそできる戦法だ。
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
「エンチャント『大魔道・威力増強』」
黒田はポーションを飲む。
「本気だ、この人!!」
「えげつないよ、うちの代表、怖い!!」
「いいの、こんなことして!!?」
そして、戦い開始と同時に――
「放て」
――それぞれの最大魔法一斉射撃による最大火力の初見殺し。
相手がどんな連携を見せようが、関係ない。
『神魔六神将』は開始0.5秒で消し炭となった。
「代表……これでよかったんでしょうか?」
「これが最適解です」
だが、ダンジョンはそう甘くは無かった。
『東京賢人会』を悲劇が襲った。
「え?」
エリアボスを倒した瞬間、全員が飛ばされた。
別のダンジョンボスの部屋へ。
「まさか……連続?」
「あり得るのか!? こんなことって……」
「代表があんな勝ち方するから!!」
「いや、そうか――10年前、当時のS級はこれに――」
「いや、分析してないで!!」
六神将が仕える、王。
知性と、狂気が混在する、生命体の極致の一つ。
黒田が鑑定したそのステータスは、六神将の比ではなかった。
「これはマズいですね」
まるで意趣返しと言わんばかりにその初見殺し、最大火力の攻撃が黒田たちを襲った。
『東京賢人会』は莫大な黒い魔力の波動をモロに喰らった。




