3.第二話 『魔草の脅威』
『緑のダンジョン』――いわゆる植物系ダンジョンは世界中に無数に存在するが、挑戦する探索者は少ない。
理由はシンプルである。
〈あそこはメンドクセーからな〉
探索者たちの情報交換サイト『探索者になろう』にて、プロ・アマ問わず数々の投稿で意見を交わしている。
中でも『緑のダンジョン』は万国共通いつでもホットなトピックスだ。
結論はいつも変わらない。
――『緑のダンジョン』はめんどくさい――
その原因となっているのが『魔草種』である。
ダンジョンの植生の中で完璧に擬態しているため、発見は困難。
数年前大々的な調査探索が行われた際、かろうじて戻ってきた映像には地獄絵図が映っていた。
探索者たちは殺し合った。
混乱し、または操られ、互いに殺意をぶつけ合った。
死んだ者は養分を吸われ、骨も残らない。
かろうじて生きて戻った者たちも、体内に寄生した種根が発芽すると、ダンジョンに戻ろうとして暴れ、やがて絶命した。
およそ200種類以上の魔草種が存在するとされ、未だ未解明なところが多い。
〈やっぱり『魔草』を何とか出来ればな〉
〈実は最近の学説でおもしろい説を見つけたよ〉
〈お、ナニナニ?〉
〈『魔草』、擬態バレたら襲ってこない説〉
それはあくまで仮説だった。
探索者の実証実験的経験則、ネットの噂だ。
〈それどういう理屈だよ?〉
〈いや真面目な話、やつらは不意打ちする習性があるけど、それに失敗した後、こちらから攻撃しなければ攻撃して来ないらしい?〉
だが、それは明確に否定されている。
「また、馬鹿な憶測が飛び交っているようだな」
ダンジョン協会相談役、錬金術師。
鮫島教授は注意喚起する。
「魔草の擬態は見抜くことができない。絶対に深い森を歩いてはいけない。理論的に考えて草の生えていない岩場や川を進むべき」
彼の言葉はそのまま協会の公式見解とされた。
「仮に擬態を見破れたとしても、その後戦闘になるのだから擬態を見破るなど意味がないのだ」
しかしそれを実践している者が一人だけいた。
「おはよーございまーす」
彼女は、ただ友達感覚であいさつし水をあげ続けていた。
それは『魔草』を栽培する行為であり、『魔草』たちはトミカを仲間と認識していた。
擬態を見破る人型、それは彼ら『魔草』の上位個体の可能性がある。
そして水の分配は、彼ら植物における共生関係の基本だ。
トミカは知らず知らずのうちに魔草の社会構造の中に迎え入れられ、魔草側は本能的にトミカを生かす行動をしていた。




