12.第八話 『祝・トミカ合法化』後
黒田くんの尽力のおかげで、無人販売も再開可能となった。
専用機材が持ち込まれ、設営をしてもらうことに。
「トミカさん、そっち持ってください」
「いや、こんなデカイ自販機、持てるわけ……」
持てた。
S級ってすごい。
いや、だとしても、私一人持たせるな!
オーライ、じゃないのよ。
「倒したら、借金が増えますよ」
「増えるってなに!? 私は誰においくら借りてるの!?」
「冗談です。これはダンジョン協会からのプレゼントですから」
先に言えや。
「まぁ、協会は無人販売にこだわる理由が分からないと言ってましたが」
「やっぱりね、直接役に立ってると思うとモチベーションも違うんだよね」
私じゃない。
営業部の皆さんだ。
無人販売が停止したことで、営業部の魔草のみんなは、心なしか元気を失っていた。
肥料や魔力水を持って行っても、『いや、あたしらごく潰しにはなりたくないんさ』とよそよそしく、看板の埃を払っている姿は何とも心が痛んだ。
奪われたのは、資金源じゃない。
やりがいと、地域とのつながり、そして生きる活力だった。
「では、黒田くん、どうぞ」
「僕が説明してわかるものですか?」
新たな無人販売所は転売対策が施されている。
「では……資料を回していただきまして」
整列した営業部一同がペーパーを回すのを見て、黒田くんが伝わったと喜び、話し始めた。
いや、文字は読めないよ、ひぃーひっひ。
ひーっひっひっひ。
「トミカさん、ふざけるなら帰りますよ」
「冗談だよ~」
バレた。
今後は、自動販売機で販売だ。特注だそうです。
それを私のカチカチで覆い、強化して地面に固定。奪えないようにしてある。
強大な石板みたいで、いつの時代の巨石文明だよと、探索者様方がツッコむ様子が目に浮かぶ。
でもこれ、中身はハイテクなのだ。
支払いの際は、ライセンスカードをタッチする必要がある。
データは定期的にやってくる黒田くんのスマホに同期、協会に共有される仕組みだ。
それを協会の方でチェックし怪しい購入者がいないか調べる。これでほとんど転売屋の買い占めは防げる。
万が一転売屋集団が各々のライセンスで買い占めようとした場合は営業部の方々に摘発していただく。
無傷の集団が根こそぎ持ち去れば、転売屋で間違いないだろう。
「えっと、一木さん」
【はいはい】
自販機から出てこなかったときのマニュアルがあるのだが、黒田くんはそれを説明して、半分ぐらい一木さんが通訳してなんとか伝わった。
それからカギを営業部の方に渡した。
「えぇ、ソーラーで給電を。そう、皆さんと同じです。いえ、地面から送電とかはここではできないので。動かなくなった場合は……」
どうやら質問タイムらしい。
営業部は熱心に聞いていた。やる気満々だ。
わ、聞き逃した。どうやるの? ねぇ?
私も補充するからさ。聞いとかないと。
◇
何か所か設営と説明を終えた。
「では、補充はお願いします。それから、協会に卸す分もいただいていきます」
「はいはい」
「一木さん、頼みますよ」
【見張ってる】
疎外感。
ポーションのラベル張りは一木さん担当となった。すでにラベルライターを使いこなしている。
解せぬ。
今後はそのポーションを黒田くんが取りに来る。
「運び屋だね、黒田くん」
「はいはい、あなたのパシリですよ」
「そんなつもりないけど、あっち行ったついでにお買い物頼んでいーい?」
「思い切り使いパシリじゃないですか。ま、いいですけど」
おほほ、S級様にごめんなさいね。
あら、あたくしもS級でしたわ。
成りすましですけれども、おほほ。
「魔草や緑の植生に関して、レポートを書いてください。それと引き換えです」
お、くぅ……このタイミング、条件では断れない。
この男、わかっていて言ってるな。
姑息なり、黒田!
「心得た! 紙と筆を用意せい!!」
「スマホにデータ入力してください」
「あぁそっか」
「購入リストも、スマホでまとめてください」
「はい」
一木さんと、花ちゃんにも欲しいものを聞いてみた。
一木さんは料理の食材。米とか卵とか牛乳……
花ちゃんはお酒とケーキ。
私は備蓄の補充品と雑誌や新聞を頼んだ。
『深緑の魔女』様の評判を損なえば、『貴様はもう用済みだ、カエルになれぇ』となる。
やるならちゃんと成りすます必要がある。
カエルは嫌ゲコ。
情報はあるに越したことは無いゲコ。
「多い……」
「お金はポーションの代金から差し引いてください。あ、おつりでアイスとか買っていいよ」
「クフフ、レポート期待してますよ。A評価以下は落第ですから」
「なにそれ! 知らない知らない!」
とりあえず出した、を封じられた。
買い出し没収になったら二人に私が怒られちゃう!!
何書けばいいの?
あ、みんなの観察日記でいいよね。




