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8.第五話 『コンサルタント・トミカ』 後



 ほほう、これが違法販売業者が流通させた粗悪なポーションか。


「これの厄介なところは、ポーションだと製造過程が同じなため、現物から業者を特定できないことです」

「ああ……スキルだから」

「さすがに理解が早いですね。スキルで生み出されたアイテムを鑑定しても、誰が作ったかなどわからないし、成分検査も意味がない」


 化学的に起こり得ない反応が起きている。

 それを逆算して、素材の産地まで分かれば、それはスキルによる魔法的反応や原理を全て解明したことになる。

 けれど、まだそこまで魔法の解明は進んでいない。


「どうですか?」


 ポーションを眺める。


「とりあえず、国産じゃないよね」


 黒田くんがぽかんとして一木さんを見上げる。


【ほらね?】

「……見ただけで、なぜそんなことがわかるのですか?」


 え? 見たらわかるでしょ?


「あ、あの、トミカさん、一から説明を」

「えっと、まずこの色とグラデーション、液体の粘度、気泡の具合から回復系を薄めたのはわかりますよね?」


 わかりますよね? みんながいつも使ってるやつ薄めてるんですよ。


「続けてください」

「使用されているのは、ダンジョン産の素材でまぁオーソドックスな組み合わせです。これはまぁ、国産とあんまり変わりないですよね」

「ではなぜ?」

「薄めている水はかなり硬度が高いです。なのでほら、薄めてるのにちょっと沈殿物が見えるし、下の方が濃いでしょう? 転売するのにわざわざ日本で高い硬水で薄めるとは思えないので、海外のかと……」


 ちなみに、ダンジョン産の水も硬度が高い。

 水魔法で生み出した魔力水はポーションを薄めると効果が不安定になる。

 日本は普通の水で薄めただけでもっとうまく混ざるので厄介なのだ。

 だから色のグラデーションを見極めるのはチープポーションマスターである私なら造作もないのさ!

 

「トミカさん……薄めるの、やってました?」

「いやこんな粗悪品出したことないよ!?」


 失敬な!

 ただ、濃い原液を作りそれを水で薄める工程は普通にあるし、やっていたこともある。

 その方が用法用量を個別に調整しやすいからね。

 今はもうやってないけど。


 黒田くんがパチパチと拍手した。

 え、合ってた?


「驚きました……」

【ほらね ほらね】

「あはは、一応、10年この仕事やってるのでプロのつもりなんですけどね」

「まぁ、そこまでは製薬会社の調査でわかっているんです」


 わかってんのかーい。


「それでも、ひと月はかかっていたかと……他には何かわかりますか?」


 黒田くんがめずらしく興奮した様子だ。


「ちょっと、待ってくださいね」


 においを嗅いだ。

 鼻を付く刺激臭とほのかな草の香り。


 薄めたとしても、希薄すぎる。


「……だいぶ匂いがとんでますね。製造に時間がかかりすぎ。大量に生産してるからかな?」


 こんどはちろっとなめてみた。


「うーん。さすがに時間が経っていて、水で薄めすぎたものは味じゃ分からないかも」

【原液に戻したら何か分かる?】


 一木さんできるの?

 触腕を密造ポーションに浸すとジュオと水分が吸われ、原液に戻った。

 

「うわ!」

「なるほど、その手がありましたか」


 確かに、一木さん木だったわ。


 原液を舐めてみた。

 雑味がひどい。いつも舐めてるのと全然違う。

 私が新人の頃失敗したやつよりひどい。

 

「薬師としてはあまり腕が良くない? まだ魔力の分量があいまいな感じ? いや、むしろ……」


 たぶん薬師が複数人いて、別々に作った不揃いの出来の原液を混合してるんだろう。

 これだとかなり副作用が出るはず。


「なのに素材の品質はまぁまぁ悪くないね。こんな無茶苦茶でも形にはなってるから」


 素材の良し悪しはかなり結果を左右する。

 この匂いがそれを証明してる。古かったり、素材の加工方法が悪いともっと悪臭がする。

 そうか、匂いと見た目は素材でごまかしてるんだ。

 味と効果を犠牲にして。


「どこか専門業者がポーション用に加工したものかも」

「わざわざ買っていると?」

「ダンジョンで摘んできて、乾燥させて効能別に仕分けてからすりつぶすって?」

「そんな手間暇はかけないですね」


 面倒な部分は外注でしょ。私は全部自分でやりますけどね。


「さすがに加工業者は分からないけどこの感じだと多分、薬草の仕入れ先は中央アジアの『POL』社かな」

「なぜわかるのですか?」

「大量にまぁまぁの薬草を手に入れるなら『POL』社独自の冷凍品かなって」

 

 あの冷凍品は所詮まぁまぁだから、私は自分で育ててるけどね。


「かなり大手ですね……盲点でした……原料の仕入れ先さえわかれば」


 黒田くんがニヤリと笑った。怖い。


「十分です……確認させていただきます。業者から摘発まで行ければ、全てひっくりかえせます!!」

「い、いやぁ、それほどでもぉ」



 ふう。


 ――とか言って、全然違ったらどうしよ……


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― 新着の感想 ―
主人公のカッコイイとこ初めて見た。
あぁ自分の得意なものには饒舌になるタイプ つまり俺らだな
珍しく論理的な会話してるな
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