12.第八話 『トミカの受難』 後
無人販売所は好評なようなので、場所を4か所設置している。
一回で5、6本ずつしか補充していなかったけど、今回からは倍にしてみた。
「転売されっかな?」
地上に出た時、違法転売が問題になってるとか聞いたな。
私の緊急人道支援ポーションは良心プライスだ。
これまでも買い占められていただけでは?
私の8万中級が定価の20万で売られてたら、12万円の利益だ。いや、今ポーションの価格は上がってる。3割ぐらい値上がりしてたぞ。
ってことは私のなんちゃって中級ポーションでも、27万ぐらい……?
ちょっと営業さんに相談しよう。
「どーもー。お疲れさまです~」
私は販売所の魔草営業部ポーション販売課の方々に、肥料と水と作物を持っていった。
日頃の感謝を込めてたくさん配ってまわるのさ。
「え~っと、皆さんかくかくしかじかで……転売屋には売らないようにお願いします」
説明したが、みんなフラフラと自信なさそうだ。
転売屋をどう見分けるのか難しいもんね。
多分転売屋は、安全な出口までのルートを逆走して、無傷でここまできて、マジックバックかなんかで持ち帰るはず。
あ、転売屋とは限らないか。
えっとぉ。
「おい!! 買い占める気か!!!」
「ぎょえ!!!」
急に声を掛けられてびっくりした。
探索者と鉢合わせてしまったらしい。
「さては転売屋だな!!」
「えぇ!! ちちち、違いますぅ!!」
台車に補充用のポーションを大量に入れていたから、誤解されてしまったのか。
「わ、私が作ったんですよぉ!?」
焦って言ってしまった。
私が生産者です。
「……あんたが? 『深緑の魔女』だって言うのか?」
「えぇ、それは違うけど……」
「だろうな。『深緑の魔女』は銀髪って話だ」
「うぇ……いや」
これ『深緑の魔女』が作ってることになってるの?
えぇ、誰だよ、そんな誤情報流してるの……
もしかして私のポーションが好調に売れてるのって『深緑の魔女』ブランドのおかげ?
だから自分の名前を語る私に怒ってたの!?
「これは私が作ったの!! 『深緑の魔女』だなんて一言も書いてないでしょう!?」
「しらばっくれるな!! 探索者の命をつなぐ、まさに生命線である希少ポーションを買い占めるとは、不届き千万!! 犬チクショウにも劣る所業だ!! 恥ずかしいと思わないのか!!?」
すげぇ言われようだ。私も同意だけど。
「いやだから!!!」
そうだ!
営業さんに聞いてもらえばいいんだ!!
「みんな、私がこれ作ったんだよね!? ね?」
営業さんたちが肯定する。
そうそう、私がいつも補充してるんだよ。そう言ってるじゃないか!!
「ほら?」
「……何が『ほら』だ。魔草が言ってることなんてわかるわけねぇだろ」
うわぁぁぁ、そうか!!
なんか、最近会話が成立するから忘れていた!!
普通の人は魔草と話さないんだった!!
「え、えぇーっと……」
「ライセンスカードを見せろ! 協会に通報してやる!!」
「えー!!」
それはマズい……
でもこれは冤罪だ。
なんでこの人にここまでされないといけないの?
なんか腹立ってきた!
「いいですけど。そっちも見せて下さいよ?」
「何?」
「それで勘違いだったってわかったら、それ相応の対応をさせてもらいますからね?」
相応の対応ってなんだ?
無理があるか……
「な、開き直ってんじゃねーぞ!!」
ん? 何を焦ってるんだ?
ライセンスカード見せられない理由でもあるのか?
そう言えばこの人、私とは逆方面から来た。
汚れてないし、マジックバック持ってる。
安全ルートの逆走。
怪しいぞぉぉ〜。
「カードをお互い見せましょうよ」
私は見せないけど。
探索者が後ずさりした。
冷や汗がすごい。
何か、やろうとしてる。
直感でわかった。
案の定、男はマジックバックから銃を取り出した。
いや銃って!
私はとっさに『カチカチ』で身を覆い、数発の銃弾を弾いた。
「なに!」
「ここは不戦エリアって書いてるでしょ」
「ぐあぁ!?」
雑草を地面から絡ませ、拘束したのは営業さんたちだ。
ナイスゥ~、お仕事完璧です!
「くそっ!! なんだこれ!!! おい離せ!! 犯罪だぞ!! こらぁ!!!」
もがいてるが身じろぎ一つできない男。
「なめんなよ!! ふざけやがって!! 後悔するぞ!! 触んじゃねぇよ!! 触んじゃねぇよ!」
マジックバックをふんだくって、中身を出したら私のつくったポーションが出てきた。
「転売屋はおめぇじゃねぇかぁぁ!!!」
私が殴りかかろうとしたとき、三つ止める動きがあった。
まず、営業さんたちが『不戦エリアー!?』と止めようとしてくれた。
結果これは間に合わなかった。
もう一つ、私自身だ。理性がこの男を殴るなと、ブレーキを掛けようとした。無抵抗の人間を殴るなんてひどいことだとわかっている。
私はこれを無視した。
そして、最後は物理的に止めに入った。
「うぉぉっとぉ!?」
土の壁が私の右ストレートを止めていた。
わ、私の拳を止めただと!?
悔しいねぇ! 何もんだい!?
「ぼくの壁を貫くとは」
気が付くと男が立っていた。
「あ、あんたは……」
その人がひと睨みすると転売屋が失神した。
知っている人だった。
S級高位魔法職『賢者』にして日本三大ギルドの一角『東京賢人会』代表。
「く、黒田くん」
「トラブルの経緯は見させてもらいましたが、今ので確定しました。貴女が『深緑の魔女』ですね?」
「違います」




