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8.第五話 『ただいまとおかえり』 後

 


 買い出しを終えて、必要物資を手に入れたことで生活はより快適に!


 まず、ポーション作りに必要な鍋や包丁などと、普段の食事用を完全に分けることができた。


 これで、お料理の能率が上がる。

 調味料は各種、業務用サイズで揃えた。

 お醤油は四箱買った。これ大事。

 この一か月、あれこれ工夫して素材の味を引き出してきたけど、塩味だけで間を持たせるには限界があった。味噌、コンソメ、カレーのルーも段ボール箱で買った。


 マジで塩だけあればとか考えてた私、ふざけるなよ。


 それに、小麦粉や油も大量に手に入れたから、パイや揚げ物も作れる。できればパンとかピザも焼きたい。

 私の『カチカチ』で窯と煙突ぐらい造れるでしょ。


 あとは、ご近所付き合いに欠かせない肥料でしょー、ポーションを入れる密閉式の専用アンプルでしょー、それから台車。

 収穫物を運ぶ用だ。これに折り畳みコンテナを積んで移動する。


 花ちゃんが、乗って遊んでる。

 花ちゃん、遊び道具じゃないのよ?

 え、私もやれって?

 わぁ~たのしい~……!!

 ぎゃー、カーブは無理だよー!!

 うっ、泥だらけになっちゃった。


 片付けも終わり、いつも通りの日常に戻った。

 でも一木さんが前と違う。


「あれ、一木さん、お料理は手伝ってくれるんだ? ありがとう。何か参考になった?」


 一木さんが台所に立っていた。

 触腕で野菜を切り、調味料を混ぜ、マッチで火を点け、火加減を確かめている。


 うぉぉ、私の苦手なマルチタスクを習得なさっているだとぉ!?

 一木さんがマジでお料理に目覚めた!!


 一木さんの触腕の一本があちこちを探る。

 何か探している?



「え? 『秤』? 無いよ?」


 一木さんがぺしぺし、私の頬を叩く。

 ごめんなさい。だってぇ、感覚でしょ。

 私、ポーション作りでほぼわかるし。


 あ、私が秤をやるんですね? よろこんでー!


 一木さん、結構細かいな。

 別に料理の味付けで人は死なないんだよ。


 花ちゃんにも指示を出してる。洗い物をやれと……

 なんか急にお母さんみたいだね。


 主導権を完全に奪われ、私と花ちゃんは言われるがままこき使われた。

 がんばった甲斐もあって食卓にはずらりと色々な料理が並んだ。

 今まではスープと焼いた物ばかりだったのが、煮物が食卓に出た。

 それに、白くて丸いものがたくさん積み上げられている。


 これは……


 饅頭……?


 一木さんの触腕が交差してなんか沸騰した鍋の上に置かれていたけど、セルフ蒸し器やってくれた!?

 私は蒸し料理は作ったこと無いから、完全に動画で学んだんだ。

 現代っ子じゃん。


「それでは。いただきます!」


 身体に衝撃が走った。

 饅頭のホカホカと温かくやわらかい皮と、甘辛く煮た野菜の餡が、私の身体も心も労わってくれている、そんな気がした。

 ポーションじゃ得られない、力が注がれている。

 これはきっと愛情だ。


 もうずっと、こんな風に誰かに愛情を向けられたことなんてなかったな……

 私は遠い昔、まだ子供だった頃を思い出していた。

 しくしくと涙があふれて来た。


 一木さんが私の頭をなでてくれた。

 昔もこうやって慰めてくれたよね。


 この温かく、愛情のこもった料理で『深緑の魔女』騒動での不安も吹き飛んだ。


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― 新着の感想 ―
完全にママンです 本当にありがとうございます! ママンのモノローグ回に期待
……動画の音声で色々と知識を吸収してそうだなぁ……
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