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5.第三話 『身バレ危機一髪?』 後

 



 私はまだ捕まるわけにはいかないんだ!!


 いつものコースを逸れて逃げることにした。

 気分はジャングルで特殊部隊に追われる原住民。


 なんで追ってくるだよ!! 私はここで暮らしてるんだぞ!!


 4人が追ってきている。

 自殺志願者ではないのだが、説明するとややこしいことになり最悪捕まる。

 なんとかやり過ごしてお帰りいただこう。


「ごめんなさい、ちょっと隠れさせて」


 初対面の魔草に頼んでかくまってもらった。

『いきなり何だよー』と蔓でパーソナルスペースの外にグイグイされたのだが、「悪い人に追われてるの!」とベタなセリフを言うと、『これ被ってな』とツタのカーテンで私を覆い隠してくれた。

 ツタ屋さんの間から様子を伺う。


 4人は私を見失って、来た道を引き返そうとしていた。



「くそう、見失った……」


 大柄なリーダーっぽい人がキョロキョロ辺りを見渡す。


「あれは、戦闘職の動きじゃありませんでしたよ」


 と魔女っ娘お姉さん。


「おれらが生産職に撒かれたってことかよ?」


 と槍を持った優男。


「ステータス差じゃん。信じられないけど」


 と活発そうな女盗賊。


 彼らが興味深い話をしていた。


「はぁ、あまりにも無防備で声を掛けたのが不味かったか。仕方ねぇ。引き上げるぞ」

「そうですね。あまり深入りして『深緑の魔女』の怒りを買うのは本末転倒です」


『深緑の魔女』ってなんだ?

 私は脳裏にティム・バートンの世界観を思い浮かべた。

 青白い肌、黒く長い髪。大きな赤い唇。


 私今結構カラフルだぞ。

 蛍光グリーンにショッキングピンクのラインが入った安っすいトレッキングウェア着てるし。

 箒で空も飛べないよ。


 待てよ……

 今朝ダンジョン出た時職員さんが言っていた『ネットの不確かな情報』とはこれか。


 もしかして私のことかしら?


「ああ、仕方ない。諦めよう」

「ちぇー。やっとそれっぽい人見つけたのになぁ」


 彼らの視点だと私は白黒で不気味な異端者って感じなのか?


「だが、彼女がそれとは決まっていない」


 そうなの?


「協会からは、おそらく錬金術師、魔導師、賢者に並ぶ魔法系上位職と聞いていましたが」


 ほな、違うか。

 私、薬師ですよ。


「戦闘能力は少なくともおれたち以上だろうな。大量の魔物を使役し、自在に操っている」


 え、マジで人違いっぽいぞ。

 私生産職だし、魔物の使役なんてしてない!!


「おまけに、世界屈指の生産系スキルもあって、ほとんど不死、不老らしいじゃん」


 怖いんですけど。

 そんなやつこの森にいるの?

 ちょっと待って諦めないで?


 何か物騒な奴がこの森にいるってこと?

 だから私のこと引き止めて……


 私が飛び出そうか迷っていると、彼らはあらぬ方向に歩いて行った。


 ん? なんでそっち?


 どんどん出口から離れていく。


 もしかして迷ってるの?

 おいぃ……来た道戻るだけだろ、探索者!!


 魔草の位置が動いて変わってるんだって!!

 ああ、ダメだ。

 似たような風景あったら細かいこと気にしない人たちだ。

 うわぁ、どうしよう……

 これ放置はマズいよね……


 私はこっそり後を追跡した。

 すると案の定4人は魔獣に囲まれていた。


 ひえぇぇ、なんで真正面から戦うの?

 逃げようよー!!

 正面の一匹以外にもいるんだよ!?

 この森のウルフ種は狡猾だ。

 おばあさんを食べて、赤ずきんを待ち伏せる類の奴らなのだ。


「同じ手食うかよ!!」


 ところが、私の心配をよそに彼らはウルフ種の群れにも的確に対処した。

 はぇ……やっぱりプロの探索者はすごいわ。

 連携で敵の出鼻を挫いて、的確にダメージを与えている。


 なんか私が心配なんかしてすいませんでした。

 帰ります。


 私がこっそり我が家へ戻ろうとしたときだった。

 悲鳴が聞こえた。


 蟲だ。

 でっかい蟲。


 ウルフ種を八つ裂きにして現れたのはでっかいカマキリだ。


「くそ、魔蟲の鋼蟲種か!!」


 4人の連携が機能しなくなった。

 完全に出遅れてる。

 単純なスピードの差だ。

 攻撃の速度が速すぎて、防戦一方になってる。

 カマキリが鎌を振るった後、カウンターを余裕で回避されてる。


 私の位置からだとはっきり見える。


 でもさすが探索者だ。

 大柄のリーダーっぽい人が、捨て身で攻撃を受けて、止めた。


 そこに魔女っ娘が魔法で炎上させ、前衛2人が止めを刺した。



 カマキリが一匹討伐された。

 ちょっと、何で休んでるんですか! 後ろ! みんな後ろにいるって! もう一匹だよ!!


 リーダーさんがポーションを飲んでる。


 あ、あれ私のじゃん。あのアンプル……あのラベル、間違いない。

 ってことは……



 お客様―!!!?


 仲間の死で油断させて襲う。

 この森の生物はみな狡猾だ。


 カマキリが、死角をついて襲撃に出た。



「――くっ、まだ」



 私は潜んでいたカマキリに対し、とっさに魔法を使った。


 カマキリの動きは直線的だから、動き出しに合わせれば……

 その両腕の鎌が獲物を捕らえる寸前。

 私はとっさに動いていた。


 前に魔蟲を捕獲した雑草ネット。

 地中の根っこを操り、絡ませ、ひっかけて動きを止めた。


「おお、私、こんなんできたん……?」


 巨大カマキリ、捕獲、完了!

 ん、ツタ屋さんが『止めを刺せ』と私に言ってる……?

 じゃあ、これ、このまま養分を地面に還元して……


 操る雑草ネットの根をカマキリに密着させ、養分の移動、枯らすイメージ。

 するとパキパキとカマキリの装甲がひび割れ、砕けて朽ちていった。

 どしゃり。

 巨大カマキリ、撃破!


 私、こんなんできたん……?

 あ、魔女、私っぽいな!!


「な、なんだ……?」


 探索者パーティが警戒する。

 私は隠れていたツタから姿を現した。


「へへ、いやぁ……」

「うわぁ!!!」


 驚いた四人全員に武器を向けられた。

 ちょ、ビックリした!! やめてよ。


「あの、出口まで送りますよー」

「あ、ああ。助かる」


 大事なお客様だし。

 おかしな誤解は解いておかねば!




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― 新着の感想 ―
トミティがこの性格じゃなきゃ成立しない話なんだけど、認識のズレが微妙にこそばゆくてなんかこうー 都市伝説が現実味を帯びてきた
あーお客様!いけません!!この森では狡猾なんです!!
不死、不老はどこから来た情報だろ? 薬に特化したすごい職業なら怪我も老化も自作の薬でなんとかできるだろうって推測からきたのかな?
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