4.第三話 『身バレ危機一髪?』 前
『神々のダンジョン』に行こう。
10年ぶりのお参り。
加護なんて必要なかったし、ステータスに変化の無かったこれまでは縁が無かった。
けど、今ならもらえる気がする! ケーキも買ったし!
とか思っていたら、ターミナルで通せんぼされた。
「待ってくれ」
「は」
街のチンピラじゃない。
装備を着込んで、カメラを付けてる。探索者だ。
屈強な大男と、優男、大人しそうな眼鏡の女性、それに勝気そうな女の子の4人組。
なんざましょ?
「失礼だが、あんたどこに行く気だ?」
「『神々』ですが?」
「……そうか」
変な人たちだなぁ。
まぁ、探索者って変な人多いからなぁ。
私は特に気にも留めず、『神々』に入った。
◇
白い空間。
そこに私の神様がいた。
豊穣を司る樹。
さぁ、レッツお供え。
樹に近づく。
その影から前はいなかった女の子がひょっこり姿を見せた。
雅で古風な巫女服のような出で立ちだ。
この子が神様?
前は隠れてた? いえ、見えなかった?
神様と目が合った。
目を細められたので、ヘラヘラしてみる。
へへ、ども。
神様がちょろちょろと、左右に動く。
え、何?
今度は反復横跳びした。
あ、見えてます見えてます。
「おやまぁ」
「神様、ご無沙汰しております」
「おやまぁ」
神様、かわいいな。正直持って帰りたい。
ケーキで釣って……いや、いかんいかんいかん!!
「こちら、つまらないものですが、どうぞお納めください」
おしゃれなカフェのケーキを奉納!!
こういう時は、お酒かと思い出したけどもう遅い!!
「おやまぁ」
反応はいまいち。
こうかはいまひとつのようだ。
神様は私の周りをちょろちょろして、観察している。
あれ? 私これ、忘れられてるとか?
「神様、トミカでございます」
「わかっておるわ」
ああ、余計なこと言った。
見た目が子供なだけで、『馬鹿にするなよ、おん?』という圧をめちゃくちゃ感じた。
久々にご年配に怒られた感じがしてへこむ。
加護、無理そうなので帰りまする。
「長い間、間を空け申し訳ございませんでした。神様のお力のおかげで日々慎ましいながら、何不自由なく暮らせております。本日はそのお礼に参りました」
「そうか?」
「では、ご挨拶も済みましたのでこれで」
「トミカ」
「はい?」
近こう、近こうと手招きされた。
「これを」
ぽとりと掌に落とされたのは木の実だった。
何の……いや、深くは聞くまい。
「ははーありがたくいただきまする」
帰りまする。
『神々』に現れる神様は、本物なのかという議論は未だ決着はついていない。
フレンドリーで力を与えてくれる神様を、みんなどこかゲーム的キャラクターみたいに重く受け止めない。
中にはバトルを申し込んだ者や、無礼千万なお願いしをした者もいて、そういう挑戦は数えきれない。
それでも、出てこられなかった者はいない。
しかし、私は今、目の前に本物が初めて現れたような気がした。
冷や汗を拭い扉を開けて外に出た。
すると、さっきいた四人組がまだいた。
「私に何か用なのかな?」
なんだか他にもたくさん人がおりますけども。レイドでもやるのかな。
私は参加者じゃ……
視線を感じる。このターミナルにいる人たちほぼ全員からだ。
もしかして……私自殺志願者と思われてる?
どうもそんな気がするぅ。
私の格好、探索者の中じゃ浮いてるし……
うわ、まずいな……
さっき職員さんに出てくるの見られたし、他にも見張りっぽい人もいたんだよなぁ。
『緑』から出てきて半日で戻っていくソロの女。
うん、怪しいな。そんなやつ、怪しいな。
もしかしたら入場のライセンスカードも、もう調べられてるかも。
薬師ってバレてるならなおヤバい。
かといって、違うと弁明してもダメだ。
実際、付いて来てもらって……
私の農園バレますやん。不法占拠と違法栽培、無許可販売のトリプルコンボですやん。
非常にマズいぞ。
落ち着け、ここでどう動くかで彼らの動きも変わる。
一端ここを離れて……
私はターミナルの出口へ歩を進めた。
ムリだ。私にもうあちらに戻る気力はない。
大自然が私を呼んでいる。
成せばなる!!
即、反転。
『緑』へダッシュしてエントリーした。
「ふぅ……ここまでは追ってこまい」
「待ってくれ!」
さっきの四人組だ。
「うわ、違います!!!」
これ、ただの帰宅なんです!!
「一人じゃ危険だ!! 戻れ、死にたいのか!!」
追ってきてますやん!
「お構いなく!!」
4人を撒くために、私は普段通らないルートへ。
初対面の魔草にパックンチョされそうになるのを、避けながら、森の奥へと進んだ。




