2.第一話 『地上へおでかけ』 後
無人販売所での儲けはすでに100万を超えていた。
でも、過払い金もあるし、今後のための貯蓄も大切。
ダンジョンで長く暮らしていくなら『奈落』産のマジックアイテムがあった方が便利だ。
今使っている500万マジックバックと同じく、過酷なダンジョン内で得られる便利なアイテムはすさまじい高値で、今はちょっと手がでない。
けど、お金を貯めていずれ手に入ったらなぁと思う。
とりあえず本日のところはアイテムの直売所を覗いて、カタログだけもらおう!
「あれ?」
直売所の冷蔵庫にはドリンクみたいにポーションが並んでいる。
しかし、その値段がちょっとおかしい。
「あの」
私は近くにいた店員さんに声をかけた。
「この下級治癒ポーション、一本6万円ですか?」
うちは取っ払いで2万だけど、相場は4万ぐらいだと思ってた。
「ええ、こちらは協会検閲を通過したもので……あ、ご存じありません?」
「はい?」
なんでも、今ポーションの価格が高騰しているらしい。
どこかの馬鹿なギルドが、ポーションを大量購入、使用後難癖をつけて返金をするという悪行を繰り返した。
協会は返品に際し、厳格な規定を定めて業者を守った。
「ああ、手数料で割り増しってことですか」
「それもあるんですが、価格が高騰し始め、返品がしにくくなったことで、大量購入し転売する違法転売屋が横行しているんです」
「なんと!」
許すまじ。
転売なんて、どんな品質管理かわからない。
流通を害する者は早く摘発されて欲しい。
え、私は違います。
私自分で作って、緊急時に人道に沿って適正価格より安く売ってますから。
違うんです。
私転売じゃないです。密造です。
「どうされました?」
「あ、いえいえ」
張り紙を見ると【急募! 薬師の方!】と出ていた。
私がダンジョン生活をしてからひと月ぐらいで、薬師の求人が急増?
けっ、誰が戻るか。
どうせ、市場が落ち着いたら契約解除でしょ? 無視。
私は直売所を出て、ホームセンターや家電量販店などあちこち歩き回り物資を調達してマジックバックに押し込んでいった。
ああ、どんどん諭吉さんが減っていく……
さようなら、また会おうね? 絶対だよ?
スマホも買った。バッテリーとSDカードを入れ替えられる頑丈なタイプで、これが一番高い買い物でした。
でも、一番お世話になってる一木さんのためだからね。ちゃんと花ちゃんにもお絵かきできる知育玩具を買った。お値段じゃないです。これ何度も書いたり消したり超技術だよね。
休憩がてらカフェに入り、そこの無料Wi-Fiでアカウント接続してスマホにいろいろダウンロードしていく。
店員さんがちらちらこちらを見ている。
え、いいんだよね?
隣のリーマンからも視線を感じる。
私は、周囲を自然に見渡し、においを嗅ぐフリをした。
なんか匂ったとしても私じゃないよ、というポーズだ。
それともこの服か?
セールで上下セット¥4,980円のトレッキングウェア。
これは通気性と撥水性を兼ね備えた機能性重視の衣料であり、おしゃれとかそういうフィールドにはいないのだ。
そう自分に言い聞かせ、一木さんのためとダウンロード中、恥辱に耐えた。
いいさ、笑うがいい。
大自然が与え給うた鋼の精神の前には――
何とか耐えた。
食べたショコラケーキがおいしかったのでお土産でテイクアウトした。
お店を出る。
「お姉さん、今暇すか?」
「……え、私か?」
歩いていたらナンパされた。
チャラそうな兄ちゃんが2人。
いや目が悪いのか?
私にまで声をかけるとか見境ないのか?
いえ、ナンパじゃなくて詐欺とか?
まさか私お上りさんと思われてる?
「え、シカト? ひどくない? 傷ついたんですけど?」
ここで何か言うのがよくない。
どんな会話でも、話始めると勝手に会話を続けられてしまう。
『今仕事中なんで』とでもいえば『何の仕事? じゃあ、仕事終わったらでいいよ』とか言い始める。
『関係ないでしょ』というと『そんなのわからないじゃん。確かめてみようよ』とか言い始める。
とにかく終わりがないのだ。
いや私にも10代、20代の化粧しておしゃれした時代があったんだよ!!
まぁ、あれはナンパじゃなくて夜職の勧誘だったけど。
まぁいい。
私は吐き出しかけた悪態をぐっとこらえて、2人をにらんだ。
精一杯の殺気を込めて。
しゃー、退け退けい、若造共!!
「「ひっ!!」」
男たちがそろって青天した。
え、コント?
私、そんな怖い顔してた?
傷ついたわ。
青ざめた顔の二人を無視して、私はその場を離れた。
全く、人間社会は一々ストレスに満ちている。
早く帰りたい。
あ、でもその前に『神々』には寄っていこう。
ステータス向上など、条件が揃えば加護もらえることもあるからね。
ターミナルに戻ると、前より人が大勢いた。
これ何の集まり?




