1.第一話 『地上へおでかけ』 前
畑は実り、食卓は豪華。
仕事もはかどり、ポーションは即完売。
お金に余裕があると、欲しいものも出てくる。
新しい寸胴鍋でしょうー。
食器も増やしてー。
あと、アンプルが足りないなぁ。ラベルシールもたくさんいるし。
瓶とか、保存容器もいいなぁ。
それと冷蔵庫。ポータブルのやつ。
さすがに、太陽光だけじゃ厳しいかな?
畑の収穫に対して消費が追い付かないし、ポーションも作り置きしておきたいんだよなぁ。
あと、スマホね。
一木さんに取られたから。
ダンジョン内に電波はないから、ダウンロードしたデータを見たり聞いたりだけだけど。
撮影するならカメラも欲しいなぁ。
あとは普通に塩、調味料も補充したい。主にマヨとソース。
最近私の料理がいまいちなのは、調味料が足りないせいだから。
それから肥料かな。手伝ってくれてる魔草が増えたから、量も増やしておかないと。
私は入用なものをリストアップするため、一木さんにスマホを返してもらった。
「新しいの買ってくるからね」
一木さんは素直に返してくれた。
でも、花ちゃんが通せんぼしてきた。
「いや、ちょっと買い出しいくだけ。帰ってくるから」
普段は素っ気ないのにかわいいんだから。
でも、その蔓で巻き付くの怖いからやめてね。
獲物を溶かすやつだよね、それ。
「それじゃあいってきます」
2人がいってらっしゃいと葉っぱを振ってくれた。
なんだか、新鮮だ。
お土産たくさん買ってくるからね。
慣れた道、ご近所さんにあいさつしながらターミナルに到着。
あれ?
20分も歩いてないんだけど……
森が私を強くしてくれた効果か。感謝します、大自然よ!
石の門を潜ると空気が変わった。
普段人気のない、ターミナル出口に、ちらほら人がいた。
うわぁ、私今変じゃないよね?
誰もいないと思って油断してた……
深夜のコンビニ感覚だった……そもそもメイクしてないし、今私どんな顔だ? 時々コンパクトで見るけど、ちょっと割れちゃってるからなぁ。あ、鏡買おう。
一か月ぶりの人だ。
私は顔を手で隠しながら、端を歩いた。
「すいません、お姉さん」
「へ、はい?」
いたのはタダの探索者だけじゃない。
ワイシャツの首に職員証を下げてる。協会の職員の人だ。
マズい、私捕まらないよね?
ポーションは、非常時に売っただけです。
ダンジョンの不法占拠なんてしてないです。
魔物を勝手に育てたりしてません。
私、捕まったらヤバイな。
「えっと……」
なんか、まごまごしてるな若造。人見知りか?
いや、もしかしてくさい?
ちゃんとお風呂入ってるし、ハーブで作った石鹸で洗ってるんだけど……薬くせぇっすか?
薬臭い罪で逮捕ですか?
「あの……」
「あ、すいません! 最近、『緑』に入る方が増えてます。ただ、ネットで不確定の情報もあり、備えのない方には注意を呼び掛けておりまして」
「ああ、そうなんですね。わかりました。気を付けます。ご苦労様ですぅ」
切り抜けたですぅ。
へぇ、『緑』の探索者増えてるんだ。
なんでだろう?
まぁ、私でも安全策に気づいたんだし、他の人も動いていたって不思議じゃないか。
とっとと、買い物済ませて帰ろう。
それにしても、すごいちらちら視線を感じる。
私そんなにみすぼらしいか?
郊外の丘の上から歩いてバスに乗り、物資が揃う繁華街まで移動する。
うわぁ、また見られてる。
服? やっぱり臭いですか? うわぁ、ごめんなさいぃ……許してぇ……
生きた心地のしないまま、バスに揺られて10分。
市街に降り立ち、歩いていると、ふとショーウィンドウのガラスに違和感を覚えた。
いやガラスそのものではなく、そこに映っているものだ。
「ん?」
マジックバックを背負っている、長袖長ズボンのトレッキングウェアを着た30過ぎの女。
その女は私の記憶とちがっていた。
猫背じゃないし、髪がボサボサじゃないし、首が長くて小顔だ。
「はは、いい気分」
屈折率で見栄えをよくして商品を買わせようという戦略だな。
森から出てきた私のような人間をひっかけようというあさましい資本主義の悪知恵だ。
おら、騙されんぞ。
煌びやかな服はどうでもいい。
さぁ、物資の調達だ。




