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12.第八話 『製造! チープポーション』 後



 私のダンジョン生活も1か月が過ぎ、節目を迎えていた。


「では、いよいよポーション販売をしようと思います」



 私の宣言に一木さんと花ちゃんがパタパタと葉っぱで拍手する。


 いわゆる無許可販売だが、ダンジョン内はグレーゾーンだ。

 誰かがピンチの時あげたら、その代金は?ってなるからだ。

 かといって見捨てたらそれはそれで罪になる。


 つまり、買う側がピンチの時だったらセーフ。

 そのはず。


 そこで、私は一木さんや花ちゃんと相談し、ピンチの導線を確定させた。


 魔獣がやってくる! 逃げた先が森で、蟲に群がられた!! 怪我で動けない!!


 そんなところに、ポーションがあれば買うでしょ?

 買って使って、誰が責めるの? ねぇ、何が悪いの? 正義でしょ? 正道でしょう? 善行でしょう? 


 設置場所は花ちゃんのお墨付きだ。

 悩んでいたら、地面に地図を書いて教えてくれた。

 ここに逃げてきた奴を、●●るんだって。


「いや、●●はだめだよ!?」


 仲良くしてたから忘れがちだが、魔草は魔物だ。

 魔物は戦って倒した人間を●●するんだ。

 マイルドに表現すると、逃げ込んだ人をパックンチョして、とろけさせる。大自然に還元し、循環するのだ。

 ああ無常。


 ポーション買わせてもパックンチョされちゃ意味ないぞ。


 でも彼らも生きるために養分は必要だ。

 ここは私の交渉力が試されるとき!


「花ちゃんさぁ、追ってきた蟲とかじゃだめなの? 養分を運んできてくれるんだからさ」


 それに光合成とかさぁ。植物ならそっちでいいじゃん。腐植土から栄養を取り込めばいいじゃん。

 そういうもんじゃん。

 何でわざわざ消化して吸収とか回りくどいことするのかね?

 え? 人も食べるって?

 人は光合成できませーん、残念でしたー!


 私の言い分に花ちゃんは「あたしに聞くな。好みによるでしょ」と返した。

 あ、味の好みか。まぁ確かに、花ちゃんとか見ていると魔草も結構性格分かれてるからな……


 一木さんはおっとりして包容力がある。

 花ちゃんは快活でアグレッシブ。


 うん。その場に居合わせた魔草にもよるのか……


 そこで、現場で交渉してみることにした。



「ごめんください! 突然失礼します! 私、先日あちらの奥に引っ越して参りました、榊原トミカと申します!」


 皆さん「知ってる知ってる」とあいさつを返してくれた。

 アットホームな営業先だぁ。

 ん? なんで知ってるの?

 魔草もうわさ話とかするのかな……



「実はですね、折り入ってお願いが――かくかくしかじかでございまして、何卒、平和的な解決方法による共利共生の末永く持続的なライフスタイルを模索していければと!!」



 ちなみに当たり前に話しているが、言葉はちゃんと通じているかはわからない。

 私の話を受けて、魔草同士で相談し合っているように見えるけど。


 お、なんか代表っぽい方が来たぞ。

 触手がうねうねっとする。


「ほうほう、『相手の出方次第』ですか。確かにそうですね。では、ルールを決めるのはどうでしょう?」


 ちゃんと考えて来た。

 不戦ルートの立て札を建て、探索者には獲得素材を献上させる。

 追ってきた魔獣や魔蟲を魔草の皆さんで総取りということだ。

 不戦→献上→脱出でお互いwin winとなる。



「だめですか?」



 さすがに調子が良すぎるかな?

 葉っぱを上げる代表の魔草さん。



「『ルールを守らないやつは』?、それは大自然の法に則り、如何様にもどうぞ」



 ここはダンジョンだ。

 攻撃してやり返されないなんて、人間の法みたいに甘くはない。

 それに、このシチュエーションだと必然的に魔草が探索者を助ける形になる。そこで恩知らずにも漁夫の利を狙う不届き者は成敗されてもらおう。


 交渉も成立したことだし、実験的に一か所、無人販売所を作ってみた。

『カチカチ』でパッと建てただけだけど、まぁまぁそれっぽく、田舎の畑の脇の道路にある感じの小ぶりな屋根付き台座ができた。


 そこにポーションのアンプルを並べていく。

 ちゃんとラベルに用法や効能を明記しておいた。


 安全ルートの立て札も、『カチカチ』で立てた後、文字を書き、文字以外の表面を再び、『カチカチ』でへこませた。浮彫みたいでなかなか、おつである。

 老舗の旅館みたい。


『不戦エリア 魔草と戦闘するべからず』


 と端的な内容で、詳しくは説明しない。

 それを何か所か設営した。


 ん? なんか魔草の皆さんがさっきよりしおらしいぞ。


「『襲ってこられたときに説明するものが欲しい』? ああ、そうですね!! え、『出口まで案内する』? いいですよそこまでは……『ポーション無くなったら取りに向かう』? えぇ、そんな、私が補充に参りますよ!?」


 さっきまで、バトッたらパックンチョでいいのか、と強気だったのに。

 この数分で180度変わったじゃん。


 でも確かに、説明板はあれば便利かな。


 私は色んな文言を彫り込んだ立て札を量産して、みんなに配った。

 フフ、魔草が日本語の看板で探索者と会話するの、おもしろいな。見てみたいわ。


 販売所には一本2万の普通の下級ポーションを5本用意した。

 それと、一本だけ中級も。これは思い切って一本8万円にした。

 直販大特価だ。

 一か月で、全部売れれば、18万の収益になる。


 それだけあれば、塩や肥料、その他もろもろを備蓄するには十分だ。

 なんか一木さんにスマホを取られてしまったから、別のを買わないと。

 まぁ、緑のダンジョンは不人気だから早々探索者なんて現れないだろうけど……


 なんてのんきなことを考えていた。


「え? 本当に、もう!?」


 翌日、花ちゃん経由でポーションが売り切れたと報告があった。


 疑い半分で無人販売所を見てみると、ポーションはきれいに無くなっており、さい銭箱には札束が入っていた。


「うお、なんじゃこりゃ……」


 諭吉さんが、30枚ある。

 それに手紙だ。

 な、何かの通告文じゃなかろうな?

 恐る恐る開くと走り書きで、所々読めない。

 連絡先が書いてある。あと、ただどうやら私は、誰かの命の恩人ってことらしい。


 役に立ったみたいだね。よかった……


 でも、最後に気になる一文が。


『このお礼はいつか必ず。残りは全額払います』



 相当焦っていたのだろう。

 払い過ぎてるのに、まだ払うつもりなのかな?


 

 気づいて戻って来た時のために、差額は保管しておこう。



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― 新着の感想 ―
九死に一生を得たお客さんがいたのか
180度変わったのは、話を聞いてもよくわからなかったけど形になってくると楽しくなってきた感じなのかな?
勘違いものは勘違いを楽しむのであって気づいたらそこまでなんだよ。今が楽しい時ですよ
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