表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/3

第2話 マリアのお弁当

再生すると、マリアの鈴のような声が流れた。

海外で作成された動画にマリアが吹き替えしている。

夢中になって見た。


動画はとても丁寧で分かりやすかった。


通常はモデルガンを改造しても実弾は撃てない。

強度が足りなくて暴発する。

一部の特殊なモデルを除いて。

それが、たまたま僕の持っているモデルらしかった。


マリアの声が聞ける事が嬉しかった。

時々、少し舌足らずな声。


何度も再生を繰り返した。

改造の手順は完全に記憶出来た。

お気に入りのセリフは、

「でも本当にやっちゃダメだぞ。FBIに……えっと、警察に捕まっちゃうからね」

という部分。

えっと、と言い直す所が最高に可愛かった。


満足して、一息つく。

ちゃんと動画を見たことを、マリアに報告しなければ。


LINEのチャンネルに戻る。


〈メンバーがいません〉


目を疑った。

チャンネル名を確認する。

……マリア

間違えてない。


慌てて、動画のリンクをクリックする。

〈この動画は利用できません〉

再びクリック。

〈この動画は利用できません〉


僕は焦って何度も何度も繰り返す。

同じメッセージ。


「はあっ」

力が抜けた。


さっきまで幸せだった気持ちが、一気に沈み込んだ。

頭の中で動画の再生を繰り返してみる。

覚えている。あの愛おしい声。


「そうだ。忘れないうちに」

僕はノートを取り出して、改造の手順や必要なパーツを書き出してみる。

マリアのセリフも一緒に。


パーツは近所の大工センターで買い揃えた。

そして、ホビーショップで部品取り用のモデルを3機種買い揃える。


モデルガンの改造が出来れば、またマリアに会える。

そう信じた。


出来上がっても、実弾なんて持ってない。

だから撃てない。作るだけ。

そう自分に言い聞かせた。


改造銃が出来上がるまで1週間かかった。

風邪を引いたと嘘をついて部屋に引き篭もった。

そして、両親が二人とも働きに出かけている間に、こっそりと作業を進めた。


完成した銃を手にしてみる。

ずしりと重かった。


ピンポン

家の呼び鈴が鳴った。

母親が急いで出て行く。

今日は日曜日だ。


僕はベッドにうずくまる。

マリアからの連絡はない。


カチャと部屋のドアが開く。


「ママ、ノックしてよ」

イラっとして声を荒げる。


母は上機嫌で言った。

「可愛い子ね。あなたのガールフレンド」

耳を疑った。

飛び起きる。

マリアだ。


「バカね。もう帰っちゃったわよ。あんたの風邪がうつると困るでしょ」

そして、手に持った包みを渡された。

「お弁当だって。お休みなのに間違えて作っちゃったから、アンタにどうぞって」

受け取った。

マリアが作ったお弁当。


母はふふッと笑う。

「絶対に嘘よね。アンタに食べて貰いたかったんじゃないの?」

「いいから、部屋から出て行ってくれよ」

母を部屋から追い出す。

「照れちゃって。じゃあ、ごゆっくり」

ようやく出て行った。


急いで包みを広げる。

可愛いサンリオキャラクターのお弁当箱。

包んであったハンカチとお揃いだ。


そおっと蓋を開ける。

美味しそうなおかずとご飯が並んでいる。

卵焼き、唐揚げ、きんぴらゴボウ。

ご飯には、海苔が敷いてあり、上にふりかけがかかっている。


本当にお弁当だった。

他にはメモも何も入ってない。


少し拍子抜けした。


プラスチックの箸を取り、ご飯を一口食べる。

美味しい。まだ温かい。

幸せな気持ちが体を包んだ。


おかずの卵を頬張る。

そしてご飯を口に書き込む。

咀嚼する。

それを繰り返す。


ガチッ

歯に固い物がぶつかった。

痛っ

一瞬折れたかと思った。


金属の味、口から取り出す。


それは、金色に鈍く光る金属の塊り。

銃弾だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ