189 Epilogue2 ──三つの宝
──更に時は流れて、数年後。
子育てがある程度落ち着いた頃、僕は白鳥の元を訪れた。
ずっと彼のことが、気掛かりだったのだ。
彼は出世し、神聖騎士団の総長を務めるようになっていた。
僕と再会した白鳥は、大いに驚き、目を見開いて卒倒寸前という──いつもクールな彼にしては珍しく、分かりやすいくらいの大袈裟なリアクションを返してくれた。
まぁ死んだ筈の人間が、生きていたのだから当然だろう。
そして──白鳥は、僕が生きていたことを心の底から喜んで、それを明確な破顔でもって示してくれた。
そんな彼に長い時間をかけながら、あの日から今に至るあれやこれやを説明し──やがて話題は白鳥自身の話に移った。
あの後、白鳥が応援部隊の隊長に、猛烈に抗議したこと──。
僕の亡骸が消えていたことに対し、大規模な捜索が行われたこと──。
最終的には──僕が実は“魔物”で、肉体は命とともに霧散した──という仮説が立てられ、話が落ち着いたこと──。
白鳥と部隊長が、国王からの論功行賞で膨大な領地と金品を下賜されたこと──。
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そして最後に白鳥は将来の夢を語った。
なんでも……──国の政治に直接関与出来る様な人物になりたい──とのことだ。
亜人を差別する今の体制を大きく変えて、両者にとってもっと有意義で幸せな関係を築きたい、と彼は熱弁を揮っていた。
白鳥なら、出来るだろう。
僕が最初から諦めて──果たしてあげることの出来なかった【神木】の願い──それを彼なら、きっと代わりに叶えてくれるに違いない。
そんな彼の言葉を聞いて……僕は……【神木】に対する“罪障意識”が溶けていくような安堵感を覚えた。
我ながら手前勝手で無責任な人間だと思う。恥ずべきことだ。
◇
僕と白鳥は今では年に数回、食事をしたり、互いの家を訪ねあうような間柄になっている。
彼と語らう時間は、とても幸福なものだった。
僕は彼の言葉、彼の表情、彼の仕種、それら全てを心に沁み込ませるようにして、彼との時間を過ごした。
スッカさんとの夫婦生活も、うまくいっている…………と思う。
よく怒られるが、喧嘩をしたことは一度も無い。
彼女といるだけで、僕はいつも誇らしい気持ちになることが出来た。
そして……これは非常に一方的で、身勝手で、個人的な予想でしかないのだが……僕には40年後も、この関係が続いているという、確信にも近い想像があった。
勿論、こんなことは僕の頭の中にある、只のオメデタイ妄想に過ぎない訳だが。
僕の大切な“三つの宝”の内の一つは、言うまでもなく、“スッカさんと、我が子との関係”だ。
二つ目は、“ドーサさんを含む亜人達との関係”。
そして、最後の一つは、“白鳥との関係”だ。




