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183 また逢いたいので、最終決戦5 ──No Return


 やがて白鳥が何か箱状のものと、筒状のものを、それぞれ手にしてテントから姿を現す。

 そして、手にした箱を開けると、中から小さなランプのような魔道具をいくつか取り出し、それらを地面の上に並べていった……


 それらを並べ終えると、白鳥が長い長い呪文を唱え始める。

 

 大地の上にマゼンダ・ローズの魔法陣が浮かび上がり……細緻な模様を水面みなものように震わせながら、同心円状の波紋を描く──やがてその波紋の中心部から……背中に蜻蛉かげろうのような薄いはねを生やした小さな妖精が現れた。

 身の丈は……三十センチくらいだろうか。



 僕はすかさず、【鑑定】スキルを使った。

 スキルレベルがやっと11まで上がり、ありがたいことに今ではこの距離でも、なんとか【鑑定】可能になっていた。




 ○ ○ ○


【名前】ウルエル

【種族】シルフ 【レベル】4 

【職業】郵便配達員


──コモンスキル──

【風魔法(レベル399)】


 ○ ○ ○



 そうこうしているうちに白鳥が腰を屈め、手にしていた筒をウルエルに手渡そうと手を差し伸べた。



 そうはさせるか!



 僕は渾身の【NR】※を白鳥に放った。


 ※No Return──メールをしても、返事が返ってこないスキル。


 ウルエルという名のシルフは筒を受け取ると、透き通るような風を身に纏い、あっと言う間にサバンナ上空に広がる澄んだ青の中へと消えていった。



 凛々しい表情でウルエルが消えた先をいつまでも見送り続ける白鳥。そんな彼の横顔が実に絵になる。


 僕は妙に惨めな気持ちを抱きかかえつつ、次の一手を考えるべく、脳味噌を再びフル回転させ始めた。



 ・

 ・

 ・

 


 だが夕方になっても僕は、この窮地を脱するいいアイデアを思いつけないでいた。





 一方の白鳥もイライラしているように見える。


 手紙を出した相手から、返事が返ってこないのだから、当然だろう。

 こんなことは、彼の人生で、生まれて初めてのことではなかろうか?

 

 自分でやっておいて何だけど……可哀そうに…………。



 ・

 ・

 ・



 結局、僕は……有効な打開策を見出せないまま……サバンナのその場所で二日目の夜を過ごす羽目はめに陥った。



 ・

 ・

 ・



 三日目も……四日目も……僕は相変わらず、次の手札を作れず、四苦八苦していた。



 白鳥は……分からない……。

 彼はテントの中から、何故か姿をまったく見せない。


 なんらかの……代替の通信手段を使っているのか……あるいは……



 ・

 ・

 ・



 五日目も膠着状態は継続していた。

 不気味なほどの静けさの中、一人、何かここから逃げ出すいい手段はないものか? と馬車の中の暗がりに身を横たえながら考え抜くが、その思考は結局どこにも行き着くことなく……その日も、眠れぬ夜を明かした……。







 この均衡が崩れたのは、六日目の昼だった。

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