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181 また逢いたいので、最終決戦3 ──それは果てしないチート


 やがて、薄墨色に染まった夜のとばりが降りてくる。

 

 耳が痛くなるほどの夜のしじまに包まれながら、僕は再び馬車の中で手枷足枷を施され、悄然と長椅子に座り、鉄格子の向こうの星空を眺めていた。


 紫黒しこくの空に貼りついた星たちが、今にも墜ちて来そうだ。



 そんな星々を眺めていると、僕の脳内で、今日の白鳥との遣り取りが、自然とフラッシュバックを始める。



 何故、僕だけが悪者であるかのような空気に、自然となっているのだろう?

 僕が交渉などと言う、セコイ手を使ったのが悪かったのだろうか?

 亜人とヒト族が対等な関係を築けるよう、堂々と協力を申し出ていれば、違う流れになっていたのか?



 分からない……



 そんな感じで思考のループに迷子してると、タイガー商社時代のとある出来事が、僕の脳裏を不図ふとかすめた。


 白鳥は昔から周囲の人間を惹きつける、不思議な力を持つ男だった。

 彼が語る言葉を、決して誰も否定出来ない。

 自然と全肯定してしまう。そんな魅力が彼にはあった。


 

 ◆

 

 ◆

 

 ◆



 ──ある日の昼休みの出来事だ。


 僕が缶コーヒーを買いに自販機に立ち寄ると、自販機前の小さな飲食スペースで、白鳥を中心に同年代の若者が五、六人で会話に花を咲かせていた。

 誰がいたかはもう思い出せない。仮に男A……女a……とする。


女a  「白鳥君は朝御飯はいつも何を食べてるの?」

白鳥  「僕は毎朝、トーストと水道水なんですよ」

女b  「へぇ。さすがぁ! やっぱり水道水だよね!」

男A  「ほう、流石だな、白鳥」

男B  「トーストにあうよね!」

女c  「へぇ、なんかいいね! アタシも明日から、トーストと水道水にしようかなぁ」

女a  「ずるーい。あたしもそうするぅ~」





 僕は耳を疑った。


 ジャミング症候群だから?

 だから、会話の意味が分からないのか……??

 もしくは会話の背後に流れる文脈を……正しく読み取れていないのか…………???


 彼らのやりとりの内容に、僕はどうしようもなく狼狽した。


 だが、話はそれで終わらなかった。


 僕は毎朝、判で押したように、トーストとコヒーを摂っていたのだ。

 そのことが急に恥ずかしいことのように思えてきた……。


 しかも今、僕が手にしているのは缶コーヒー。

 恥の上塗りをしているような気がして、僕は酷く惨めな気持ちになった。何もかもを投げ出して、泣き出したい。そんな気分だった。




 ◆


 ◆


 ◆




 その当時の記憶が脳内で、鮮やかに再現された。


 今日の白鳥との遣り取りは、あの日の事案と同じ根っこを持っているように思われる。

 それはステータス・ウインドウには表れない、白鳥のユニーク・スキル──否、人間としての“格の違い”とでも言うべきものなのだろう。


 持って生まれた生き物としての──社会的動物であるホモ・サピエンスとしての“格”──人と対峙したときに感じる、この人は自分より上だ。下だと感じるオーラのようなナニカ……。


 白鳥はそのナニカの──最上位のものをギフトされ、この世に生まれてきたのだ。



 だとしたら……僕がどれだけ策を練ろうが、考えようが……無駄だ。彼は果てしないチートを持っている…………。





 なんだか異世界に来て……今日が一番疲れた気がする……。

 瞬く星がお疲れ様、と言っていた。




 ……一目でいいからスッカさんに会いたい……心の底から、そんな想いが込み上げる……。


 その思いは、僕の胸を痛いくらいに締め付けた。

 そに痛みは心の深い部分をえぐり出し、瞳に溜まる涙に変わり、視界が徐々に滲んでいった……。

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