180 また逢いたいので、最終決戦2 ──卑下
「白鳥! お前は一生、そのままでいいのか!? 人としてそれでいいのか?!!」
自分のことを棚に上げ、僕は動揺のあまり、盛大に心の声を漏らしていた。
対する白鳥の声音は、落ち着いたものだ。
“──はい。構いません。元より神聖騎士団の職務は死と隣り合わせ。そして……それは常々、私が部下たちに言い聞かせてきたことでもあります”
「…………」
交渉開始早々に、僕は次に出すべき言葉を失って、口を噤むほかなくなった……。
僕と白鳥の──人間としてのレベル差を、改めて突き付けられた形だ。
そして、それはタイガー商社時代から、常日頃感じていたものでもあった。
この男と一緒にいると、自身の言動の全てが誤りであるような──もっと言うと、自分の存在そのものが赦しがたい過ちだという風に──強烈な下塵の意識を突き付けられる。
彼といると、自分のことを否が応でも卑下してしまうのだ。こんな感じで。
【白鳥】 【僕】
正 → 誤
美 → 醜
良 → 否
善 → 悪
優 → 劣
賢 → 愚
だが今この瞬間ほど、彼と僕との間に横たわる──圧倒的な人間力の隔たりに、打ちのめされたことはない。
自分が卑劣で姑息な悪の手先。
対する白鳥は、苦境に陥ってもなお正義の心を貫くヒーローのように思われた。
冷静に考えれば、僕はヒト族に囚われて、苦しんでいる亜人たちを解放するという、善いことをした筈だ。
確かにその過程でヒト族を殺めるという、悲しい事故はあった。
だが元々亜人を奴隷扱いするヒト族にも、非があるのではなかろうか?
そもそも白鳥だって、王都で反乱を起こした亜人たちを殺めている。
何故今この瞬間、僕だけが一方的に悪役にされているのだろう?
しかも、そのことを自分自身が受け入れそうになっている……
なんなんだ? この心理的なトリックは……
これこそが、健常者上位種の“nature”──特権なのか? きっと多分そうなんだろう……。
圧倒的な劣勢に立たせられ、ぐぬぬっと唸りながらも、だけど僕は必死の交渉を続けた。
「その……特殊なオーラを纏って、今の仕事を続けられるのですかっ!?」
“──この人をイラ立たせる雰囲気は、我々が職責を果そうとした証左です。この“十字架”を背負って人生最期の日まで、生き抜きます。この“業”を消すために、自らの職務を放棄することは、上司や仲間の顔に泥を塗る──何より、これまで職掌を果たして死んでいった部下たちに顔向けできない──恥ずべき侮辱的な振る舞いです!!”
「くっ!………………」
そこにあるのは、愚直なまでの高潔さだった。
一方的なワンサイドゲームだ。
……僕はパニックを起こし始めていた。




