第7夜 消えた少女
テレビ局のレポーターが街頭に立っていた。
「最近話題となっている謎の自警団、『ノワールナイト』について街の皆さんに聞いてみました。」
マイクを向けられた男性会社員が答える。
「正直、危ないと思いますね。」
「犯罪者を捕まえてるって言っても、結局は一般人でしょう?」
「警察に任せるべきだと思います。」
映像が切り替わる。
今度は若い女性。
「私は反対です。」
「いつか一般人が巻き込まれるんじゃないですか?」
「正義の味方気取りって感じがします。」
さらに別の男性。
「顔も名前も分からない人を信用しろって方が無理だろ。」
次々と否定的な意見が流れる。
一方で。
「助けられた人もいるって聞きました。」
「悪人だけを狙ってるなら別にいいんじゃないですか?」
サラリーマン。
「正直助かってますよ。」
「警察が手を出せない連中を倒してるんでしょ?」
高校生。
「めっちゃかっこいいっす。」
「本当にいるなら会ってみたい。」
そんな声もわずかにあった。
レポーターはカメラへ向き直る。
「賛否が分かれる謎の存在、ノワールナイト。」
「皆さんはどう思いますか?」
テレビ画面が切り替わった。
都内某所。
オフィスの休憩室。
蓮は紙コップのコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。
同僚たちも同じ番組を見ている。
「絶対危ない奴だろ。」
「だよな。」
「警察の邪魔してるだけじゃね?」
「そのうち捕まるんじゃないか?」
蓮は何も言わない。
ただ静かにコーヒーを飲む。
誰も気付いていない。
そのノワールナイト本人が、すぐ隣にいることを。
「おーい蓮。」
同僚に呼ばれる。
「仕事戻るぞ。」
「ん。」
蓮は紙コップを捨てると立ち上がった。
昼休み終了。
いつもの日常。
――のはずだった。
昼休みの終わり際。
何気なくスマホを開いた蓮の目に、一つの記事が映る。
【女子高生失踪 今月四人目】
蓮は眉をひそめた。
記事を開く。
失踪したのは十七歳の女子高生。
警察は現在捜索中。
事件性は不明。
蓮は画面を見つめたまま呟く。
「四人目か……。」
最近こうした失踪事件が続いている。
偶然にしては多すぎる気がした。
だが仕事の時間だ。
蓮はスマホをしまい、席へ戻った。
その日の帰宅途中。
駅前広場。
人だかりができていた。
「お願いします!」
「見かけた方はご連絡ください!」
若い女性が必死にチラシを配っている。
蓮は足を止めた。
差し出された紙を受け取る。
そこには笑顔の女子高生の写真。
昼に見たニュースの少女だった。
「妹なんです……。」
「お願いです、見かけたら連絡してください……。」
女性が震える声で言った。
「突然いなくなって……。」
蓮は黙って話を聞く。
「警察も探してくれてます。」
「でも何も手掛かりがなくて……。」
女性の目には涙が浮かんでいた。
蓮はチラシへ視線を落とす。
そして小さく息を吐いた。
「……。」
見過ごせなかった。
それだけだった。
夜。
蓮は相馬モータースの地下工房へ向かう。
「相馬さん。」
扉を開きながら言う。
「少し調べたいことがある。」
相馬は工具を置いた。
「嫌な予感しかしないな。」
蓮は失踪事件の記事を見せる。
相馬の表情が少しだけ険しくなった。
「また面倒事か。」
「かもしれない。」
蓮は静かに答えた。
「でも、放っておけない。」
相馬は深いため息をついた。
「その台詞、聞き飽きた。」
地下工房に静かな笑いが響いた。
だが二人はまだ知らない。
この事件の先に。
白い鳥が待っていることを。




