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ノワールナイト  作者: Dai


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第4夜 白い鳥

第3話の事件から数日後。

夜。

相馬モータース地下工房。

カン。

カン。

工具の音が静かに響いていた。

蓮は机の上に一枚のカードを置く。

白い鳥の紋章。

誘拐犯のアジトだった廃工場で見つけたものだった。

「相馬さん。」

相馬は作業を続けたまま答える。

「なんだ。」

蓮はカードを指で弾く。

「これ、知ってるか?」

その瞬間。

相馬の手が止まった。

ほんの一瞬。

だが蓮は見逃さなかった。

「……どこで手に入れた。」

「この前の事件だよ。」

「誘拐犯のいた工場。」

相馬は無言でカードを見つめる。

やがて手に取り、静かに返した。

「捨てろ。」

「は?」

「関わるな。」

蓮は眉をひそめる。

「知ってるんだな。」

「……。」

「ブランって何だ。」

長い沈黙。

相馬は工具を置き、背を向けた。

「知らない方がいい。」

「それで終わりか?」

「終わりだ。」

蓮は納得できなかった。

だが相馬の顔を見て、それ以上は聞かなかった。

その夜。

蓮は地下工房を出る前に装備の点検を行う。

黒いナイトスーツ。

腰にはフェザーブレード。

背中にはワイヤーガジェット。

腕にはフェザーランチャー。

そして壁際には黒いナイトバイク。

相馬が言う。

「装備に頼るな。」

「分かってる。」

「武術が主。装備は補助だ。」

「それも分かってる。」

相馬は小さく頷く。

「なら行ってこい。」

蓮はマスクを装着した。

「行ってくる。」

夜の街へ。

黒い騎士が消えていった。

――翌日。

営業中。

蓮は取引先へ向かっていた。

駅前の路地。

怒鳴り声が聞こえる。

「金出せっつってんだろ!」

高校生数人が男たちに囲まれていた。

恐喝だった。

蓮はため息を吐く。

「昼間から元気だな。」

男たちが振り返る。

「なんだお前。」

「関係ないだろ。」

「失せろ。」

蓮はネクタイを緩める。

「それ、学生相手にやることか?」

男が拳を振り上げる。

「うるせぇ!」

次の瞬間。

ドスッ。

男の腹に拳がめり込む。

「がっ……!」

二人目。

三人目。

わずか数十秒。

男たちは地面に転がった。

高校生たちは目を丸くする。

「兄さん強っ!」

「格闘家?」

蓮は苦笑した。

「ただの会社員だよ。」

その時。

高校生の一人が言った。

「最近こういう連中多いんだ。」

「ん?」

「白い鳥のマーク付けてる奴。」

蓮の表情が変わる。

「白い鳥?」

「うん。」

「なんか変な集団。」

「見たことある。」

まただ。

誘拐犯。

白い鳥のカード。

そして今の話。

偶然ではない。

蓮の中で何かが繋がり始めていた。

――夜。

ノワールナイトは動き出す。

ビルの屋上。

夜風が吹く。

シュッ!

ワイヤーが放たれる。

高層ビルの看板へ突き刺さる。

蓮は勢いよく飛び出した。

夜空を滑空する。

黒いコートが風を切る。

シュッ!

次のビル。

シュッ!

さらに次のビル。

まるで夜を飛ぶ鳥だった。

街を見下ろしながら情報を集める。

裏路地。

繁華街。

港。

倉庫街。

そして見えてきた。

薬物売買。

闇金融。

特殊詐欺。

違法賭博。

人身売買。

それぞれ別の犯罪。

だが共通点がある。

必ずどこかに現れる。

白い鳥の紋章。

ブラン。

その名だけが裏社会で囁かれていた。

しかし誰も正体を知らない。

構成員ですら全貌を知らない。

まるで影だった。

数日後。

港湾地区。

深夜。

ノワールナイトはある倉庫を監視していた。

「動いたな。」

トラックが到着する。

男たちが大量の段ボールを運び出していた。

フェザーランチャーの小型カメラで確認する。

箱の中身。

違法薬物。

「ビンゴだ。」

ノワールナイトは屋上から飛び降りた。

ドンッ!

男たちが振り向く。

「誰だ!」

黒いマスク。

黒いコート。

男たちの顔色が変わる。

「ノワールナイト!」

「来やがった!」

十数人。

全員武装している。

鉄パイプ。

ナイフ。

スタンガン。

だがノワールナイトは落ち着いていた。

「最後の警告だ。」

「その荷物を置け。」

男たちは笑う。

「一人で何ができる!」

一斉に襲いかかる。

その瞬間。

蓮が動いた。

バキッ!

肘打ち。

ドゴッ!

回し蹴り。

一撃ごとに男たちが倒れていく。

さらにフェザーブレードを投げる。

シュッ!

男の腕をかすめる。

刃から特殊な薬剤が流れ込む。

男の動きが止まる。

「うっ!?」

「安心しろ。」

「麻酔だ。」

男の身体から力が抜ける。

「動けねぇ……。」

続けて二本。

三本。

次々に無力化。

しかし。

突然。

シュン。

空気を裂く音。

ノワールナイトは一瞬早く身体をひねった。

カン!

ナイフが鉄骨に突き刺さる。

「!?」

誰だ。

視線を向ける。

倉庫の屋根。

そこに一人。

黒い装束。

顔を覆うマスク。

まるで忍者のような姿。

男は何も喋らない。

ただこちらを見ている。

「お前……。」

次の瞬間。

男は後方へ飛んだ。

そして闇へ消える。

「待て!」

ワイヤーを放つ。

シュッ!

蓮は追う。

ビルの屋上。

さらに屋上。

しかし。

姿は消えていた。

残されていたのは一枚の羽。

黒い羽ではない。

白い羽だった。

ノワールナイトはそれを拾い上げる。

「白い羽……?」

その頃。

とある地下施設。

暗い部屋。

男が頭を下げていた。

「報告します。」

「ノワールナイトが薬物ルートを潰しました。」

椅子に座る人物。

顔は見えない。

「そうか。」

静かな声。

「始末しますか?」

「まだだ。」

男は続ける。

「ではレイヴンを。」

沈黙。

やがて声が響く。

「動かすな。」

「しかし。」

「まだ早い。」

男は頭を下げた。

「了解しました。」

壁には大きな紋章。

白い鳥。

ブランの象徴。

そして部屋の奥。

闇の中に複数の人影が立っていた。

全員黒装束。

全員無言。

その部屋に立つ者たちは、ただの構成員ではなかった。

ブランの中でも選ばれた者たち。

直属暗殺部隊――

RAVENレイヴン

その中心に立つ一人の男だけが静かに目を開く。

「ノワールナイト……。」

低い声。

そして小さく呟いた。

「面白い。」

誰も気づいていない。

黒い騎士が追う闇は。

想像しているより遥かに深かった。

白い鳥は。

まだ羽ばたき始めたばかりだった。


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