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ノワールナイト  作者: Dai
第三章 壮絶決戦編

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第43夜 託された想い

――影都。

街中では、解放された悪人たちが暴れ回っていた。

その中には、神谷大地の姿もあった。

「邪魔だ、どけ!」

警察官たちが制止に入るが、RAVENの隊員たちに次々と倒されていく。

街は、混乱に包まれていた。

その頃――。

地下監獄ロックから解放された警察官たちが、街の人々を守るため、応援に向かっていた。

――相馬モータース・第二倉庫。

相馬、神崎、小郷の三人が集まっていた。

神崎の携帯電話に、ノワールナイトから連絡が入っていた。

『三人とも、ここに来てくれ』

しばらくして、倉庫の奥からノワールナイトが姿を現した。

「あなたたちに、頼みたいことがある……」

ノワールナイトは神崎に向き直った。

「まず、神崎警部。あなたには、もしものことがあった場合に備えて、この街の人々をできる限り安全な場所へ避難させてほしい」

「分かった……」

神崎は頷いた。

「だが、この街に安全な場所なんてあるのか……?」

「分からない……。だが、最後まで希望は捨ててはならない」

「……そうだな」

ノワールナイトは、一台のバイク――ノワールを神崎に託した。

「移動には、このバイクを使ってくれ。もしもの時は、このバイクの機能を頼ってほしい」

「分かった」

神崎はバイクを受け取った。

続いて、ノワールナイトは小郷に向き直る。

「そして、小郷警部。あなたには、これを託したい」

「ん……? これは……?」

ノワールナイトが差し出したのは、小型の装置だった。

「この街の通信電波を妨害する装置だ。これを起動すれば、起爆スイッチによる爆破を阻止できるはずだ」

「本当か……?」

「ああ。ただし、装置を影都タワーの屋上にある展望台まで運ぶ必要がある。そこで起動すれば、電波を妨害する電磁波が街全体に広がる」

「なるほど……」

小郷は装置を受け取った。

「分かった。なんとかやってみよう」

「移動には、奥に止めてあるナイトタンクを使ってくれ」

「了解した」

二人はそれぞれの装備を手に、シャッターを開けて出発した。

街を救うため、それぞれの任務を背負って。

倉庫には、ノワールナイトと相馬が残された。

二人は静かに目を合わせた。

「恐らく起爆スイッチは、BLANCのボスか黒羽が持ってるはずだ……」

「俺たちは、一旦店の地下ラボに戻るとしよう。そこで計画を立てないとな」

「ああ……」

その時、ノワールナイトの携帯電話が鳴った。

エマからだった。

『助けてほしい』

メッセージには、現在地も記されていた。

「すまない。エマさんから連絡が……」

「そうか。なら行ってやれ」

相馬は短く答えた。

「さっさと助けてこい!」

「ああ。このバイクを借りるよ」

蓮が選んだのは、相馬がよく乗っていた白と赤のスポーツタイプのバイクだった。

エンジンが唸りを上げる。

ノワールナイトは、エマのもとへと走り出した。

――街の一角。

数人の男たちに、エマが囲まれていた。

「やめて……。何の用なの……?」

男の一人が、下卑た笑みを浮かべる。

「ふふふ……。可愛がってやるよ……」

その時だった。

「やめろ」

低い声が響いた。

男たちが振り返る。

そこには、黒い装甲に身を包んだ騎士が立っていた。

「お前は……ノワールナイト……!」

「嘘だろ……。なんでここに……?」

ノワールナイトは、男たちにゆっくりと近づいていく。

その姿に気圧された男たちは、次々と逃げ出していった。

エマは、安堵したように息を吐いた。

「助けてくれてありがとう……」

「ああ」

「でも私、黒崎さんに連絡したんだけど……」

「その男から、俺に連絡が来た」

「まさか……知り合いなんですか?」

「そうだ」

ノワールナイトは、それ以上説明しなかった。

「それより、安全な場所に避難するんだ」

「安全な場所なんて……」

「相馬モータースがある。そこへ行こう。案内する」

「……分かりました」

ノワールナイトはエマをバイクに乗せ、相馬モータースへと向かった。

――その頃。

相馬モータース。

相馬は店に到着すると、中へ入った。

照明のスイッチに手を伸ばす。

その時、ふと足が止まった。

何かがおかしい。

誰かの気配がする。

(……蓮? いや、違う……)

相馬は気配の正体を探るように、暗闇の奥を見つめた。

そして、あえて声をかけた。

「もう着いていたのか、蓮。早かったじゃないか」

沈黙。

やがて、奥から一人の男が姿を現した。

相馬は目を細める。

「お前は……」

男は薄く笑った。

「久しぶりだな……相馬修司」

「黒羽……。何の用だ」

黒羽零司は、不気味な笑みを浮かべた。

「ふん……。今さらだが、あの時の決着をつけに来たんだよ」

「何だと……?」

「それに……黒崎蓮」

黒羽は、まるで目の前に蓮がいるかのように、その名を口にした。

「お前を殺すことで、あいつは怒りや憎しみ、そして復讐心を糧に、さらに強くなるだろう。そんな奴を完膚なきまでに叩き潰す。それでこそ、完璧な勝利だ」

相馬は、静かに黒羽を見据えた。

「確かに……俺が殺されれば、少しは動揺するだろうな」

そして、口元に笑みを浮かべる。

「だがな、黒羽……。黒崎蓮という男を見くびらない方がいい」

「……何?」

「今のあいつは、お前より強いぜ?」

黒羽の表情がわずかに変わった。

「あいつは、これまでたくさんの苦しみや悲しみに耐え、乗り越えてきた」

相馬は、一歩も引かずに言い放った。

「俺の死だって、きっと乗り越えられる……」

そして、確信を込めて告げた。

「断言しよう。黒崎蓮は、お前を必ず倒す」

しばしの沈黙。

やがて、黒羽が笑った。

「ふん……面白い。望むところだ」

黒羽は相馬を見据える。

「今は……お前との戦いを楽しもうじゃないか」

不気味な笑みが、暗闇に浮かんだ。

――相馬モータース。

ノワールナイトはエマを連れて到着した。

しかし、店内は真っ暗だった。

(……相馬さんは、まだ着いていないのか?)

不審に思いながら、ノワールナイトは慎重に中へ入っていく。

その時――。

床に倒れている人影が目に入った。

「……!」

ノワールナイトは駆け寄った。

「相馬さん!!」

そこに倒れていたのは、相馬修司だった。

蓮は相馬の身体を抱き起こす。

「相馬さん! しっかりしてくれ!」

「はぁ……はぁ……蓮……か……」

相馬は、かすかに目を開いた。

そして、蓮の手を強く握りしめる。

「すまない……。だが……恒一の時のように、お前の足手まといにだけはならなくて……良かった……」

「何を言ってるんだ……!」

蓮の声が震えた。

相馬の腹部からは、大量の血が流れ出していた。

「蓮……俺はもう助からない……。分かるんだ……」

「そんなこと……言わないでくれ……!」

相馬は、残された力を振り絞るように口を開いた。

「俺からの……最後の教えだ……。よく聞け……」

蓮は、相馬の手を握り返した。

「怒りや感情に……身を任せるな……」

「……!」

「俺の死を受け入れ……乗り越えろ……。そうすれば、お前は……さらに強くなれる……」

相馬は、苦しそうに息をついた。

「常に……冷静でいろ……。いいな……蓮……」

「相馬さん……」

「はぁ……。すまないな……」

相馬の声が、少しずつ弱くなっていく。

「結局、俺は……お前を最後まで守れなかった……。お前には……苦労ばかりかけてしまったな……」

蓮は首を横に振った。

「そんなことない……」

声を詰まらせながら、続ける。

「いつも俺を支えてくれただろ……。おかげで、今の俺がいる……」

相馬は、安堵したように微笑んだ。

「そうか……」

そして、蓮をまっすぐに見つめた。

「お前を……本当の息子のように思い……愛していた……」

「相馬さん……」

蓮の目から、涙がこぼれ落ちた。

相馬は、ポケットから一本の鍵を取り出した。

「これを……」

蓮の手に、鍵を握らせる。

「恒一の机の……引き出しの鍵だ……。これで……中を確認してくれ……」

「……分かった。分かったから……!」

相馬は、蓮の手をもう一度、力強く握った。

しかし、その力は次第に弱まっていく。

やがて――。

握られていた手が、蓮の手から静かに落ちた。

「……ありがとな、蓮……」

相馬は、静かに目を閉じた。

「……相馬さん?」

返事はなかった。

「相馬さん……?」

蓮は、相馬の身体を揺さぶった。

「相馬さん!! 相馬さん!!」

その声が、静まり返った店内に響き渡る。

「うわぁぁぁぁぁっ!!」

蓮の慟哭が、夜の影都に響いた。

そして――。

そこに、エマの姿はなかった。

――最終回まであと4話

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