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ノワールナイト  作者: Dai
第三章 壮絶決戦編

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第40夜 完敗

――夜。

影都郊外。

ノワールナイトは、ノワールを走らせていた。

やがて、目の前に巨大な洞窟が姿を現す。

岩壁に囲まれた入口の奥には、人工的な照明がかすかに見えていた。

蓮はバイクを止め、洞窟を見上げる。

ここに、黒羽零司がいる。

『気をつけろよ……蓮』

マスクの通信機から、相馬の声が響いた。

「……ああ」

短く答え、蓮はバイクを降りた。

そして、静かに洞窟の中へと足を踏み入れる。

しばらく進んだ、その時――

「止まれ!」

前方から、銃を構えた男が二人現れた。

「ノワールナイト……!」

二人が一斉に引き金を引く。

銃声が洞窟内に響き渡った。

しかし、ノワールナイトは飛んでくる銃弾を次々とかわしていく。

一気に距離を詰め、男の一人を蹴り飛ばす。

もう一人が銃を向け直すより早く、その腕を叩き落とし、強烈な一撃を叩き込んだ。

二人の男が地面に倒れ込む。

ノワールナイトは立ち止まることなく、さらに奥へと進んでいった。

やがて――

広大な空間に出た。

そこは、まるで闘技場のような場所だった。

周囲を取り囲む岩壁。

広々とした地面。

そして、その先に続く通路。

「……ここは……」

『油断するなよ……蓮』

相馬の声が響く。

『それと、怒りに身を任せるな』

「……分かっている」

そう答えた瞬間――

パッ。

周囲の明かりが、一斉に消えた。

「……何だ?」

完全な闇。

目の前すら見えない。

「くそっ……何も見えん!」

『ナイトビジョンを使え! 暗闇でも周囲が見えるはずだ!』

「……分かった!」

ノワールナイトはマスクのナイトビジョンを起動させた。

視界が切り替わる。

暗闇の中、岩壁や地面の輪郭が浮かび上がった。

だが――

「……どこだ?」

人影がない。

どこを見渡しても、敵の姿は見当たらなかった。

その瞬間。

ガッ!

「ぐっ……!」

後頭部に衝撃が走った。

ノワールナイトがよろめく。

「どこから……!」

次の瞬間、脇腹に強烈な一撃。

「ぐあっ!」

体勢を立て直そうとしたところへ、さらに拳が飛んでくる。

顔面。

背中。

腹部。

次々と攻撃を浴びせられ、ノワールナイトは防戦一方となった。

姿が見えない。

攻撃の方向すら、つかめない。

「蓮! どうした! 何が起きている!?」

相馬の声が、通信機越しに途切れ途切れに聞こえる。

しかし、答える余裕などなかった。

「そんなものに頼っているうちは、俺には勝てんぞ……ノワールナイト」

闇の中から、男の声が響いた。

「俺たちは闇そのものだ……」

再び、衝撃。

「ぐっ……!」

「黒い騎士というわりには、暗闇は苦手か?」

ノワールナイトは膝をつきかけながら、必死に立ち上がった。

「はぁ……はぁ……」

そして、拳を握り締める。

「……いいだろう!」

その瞬間――

パッ!

周囲の明かりが、一斉に点灯した。

闘技場が明るく照らし出される。

目の前には、一人の男が立っていた。

黒羽零司。

「お前の戦いやすいようにしてやったぞ、ノワールナイト」

黒羽は薄く笑った。

その時、ドローンの視界に映像が戻ってきた。

相馬のモニターに、闘技場の様子が映し出される。

「よし……映像が見えるようになった……!」

しかし、蓮との通信は途絶えたままだった。

その時――

バン! バン! バン!

銃声が鳴り響いた。

「何っ!?」

黒羽の部下が、天井付近を飛んでいたドローンに向けて何発も銃弾を撃ち込んでいた。

ドローンが制御を失い、地面へと落下する。

「くそっ……! 映像が乱れて何も見えん……!」

相馬は通信機に向かって何度も呼びかけた。

「蓮! おい、蓮! 聞こえるか! 応答しろ! 蓮!」

しかし、返事はなかった。

最初に受けた頭部への一撃で、マスクの通信機能は損傷していた。

その後の衝撃によって、ついに完全に破損したのだ。

闘技場には、静寂が戻っていた。

ノワールナイトは、目の前の男を睨みつけた。

「……お前が……黒羽零司か……?」

「ああ、そうだとも」

黒羽は余裕の笑みを浮かべた。

「……黒崎恒一を知っているか?」

その名前を聞き、黒羽はわずかに考える素振りを見せた。

「……ああ。あの男か」

そして、愉快そうに笑った。

「もちろん知っているとも……」

黒羽の口元が歪む。

「奴は、俺が今まで戦ってきた中で一番手強かったよ」

一瞬、間を置いて――

「だから、殺しがいがあった」

ニヤリ。

不気味な笑みが浮かんだ。

「……っ!」

ノワールナイトの拳が震えた。

父の最期。

守れなかった命。

そして、目の前にいる男。

「うわぁぁぁぁっ!!」

ノワールナイトが突進した。

黒羽の顔面に拳を叩き込む。

一発。

二発。

三発。

何度も、何度も殴りつける。

「死ね……! お前だけは……!」

しかし――

黒羽は、微動だにしなかった。

「……どうした?」

ノワールナイトの拳を受けながら、黒羽は冷たく言った。

「そんなものか?」

さらに殴りつける。

それでも、黒羽の表情は変わらない。

「まるで子供の喧嘩だな……」

「動きは単純で、感情的だ……」

黒羽は、ノワールナイトを見下ろした。

「がっかりだ」

「……っ!?」

その瞬間。

「次は、俺の番だ」

ドゴォッ!!

腹部に、重い一撃が叩き込まれた。

「ぐっ……!」

ノワールナイトの体がくの字に折れ、後方へ吹き飛ばされる。

「お……重い……!」

立ち上がろうとする。

しかし、黒羽は容赦しなかった。

ノワールナイトが反撃に繰り出した拳を、軽々とかわす。

直後、足払い。

「うわっ……!」

地面に倒れたノワールナイトの腹部へ、黒羽の蹴りが叩き込まれた。

「がはっ……!」

立ち上がることもできない。

黒羽はノワールナイトに近づくと、その体を押さえつけた。

そして――

拳を振り下ろした。

ドゴッ!

「ぐっ……!」

ドゴッ!

「がっ……!」

何度も、何度も。

容赦のない拳が、ノワールナイトのマスクを打ち据える。

ピシッ……。

マスクに亀裂が走った。

それでも、黒羽は殴るのをやめなかった。

ドゴッ!!

ついに、マスクの半分が砕け散った。

「……っ!」

蓮の視界が揺れる。

意識が遠のいていく。

目の前の景色が、ぼんやりと霞んでいった。

黒羽は蓮の頭を掴むと、残ったマスクを剥ぎ取った。

露わになった顔を見て、黒羽は目を細める。

「……やはり、お前か」

黒崎蓮。

相馬モータースで働いていた、あの青年。

黒羽は、ゆっくりと口元を歪めた。

「相馬のところの青年……」

蓮は、かすかに目を開けた。

しかし、体は動かない。

「……殺……せ……」

「今回は生かしておいてやる」

黒羽は立ち上がり、蓮を見下ろした。

「もっと強くなり、俺を楽しませることができたら……」

不気味な笑みを浮かべる。

「改めて殺してやる」

「そして、お前が死ぬのを認めよう」

そして、部下たちへ命じた。

「こいつをロックへ連れていけ!」

「はっ!」

部下の一人が、意識を失いかけた蓮を担ぎ上げた。

黒羽は床に転がったマスクを一瞥すると、その場を後にした。

部下たちも、その後に続いていく。

静まり返った闘技場。

砕けたマスクだけが、そこに残されていた。

やがて――

地面に落下したドローンの側面が、静かに開いた。

内部から、手のひらほどの小型ドローンが現れる。

小さな機体は浮上すると、黒羽たちが去っていった通路へ向きを変えた。

そして、音もなく追跡を開始した。


最終回まで、あと7話。

最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

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