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ノワールナイト  作者: Dai
第三章 壮絶決戦編

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第39夜 手がかり

――夜。

黒いバイクが、街を駆け抜けていた。

ノワールナイトは、前方を走るRAVENのバイクを静かに追跡していた。

そのとき、専用通信機が鳴った。

『ノワールナイト、聞こえるか?』

小郷勇気の声だった。

「……どうした?」

『神崎さんが自ら人質になって、連れていかれたそうだ』

「なに……?」

『ほかの人質たちは無事みたいだ。だが、神崎さんだけは別の場所へ連れていかれたらしい』

「……分かった」

ノワールナイトは通信を切った。

神崎が連れ去られた。

ならば、なおさら急がなければならない。

やがて、前方に一棟のビルが見えてきた。

RAVENのバイクが、その敷地内へと入っていく。

ノワールナイトは少し距離を置き、バイクを止めた。

「ここが……奴らの……」

――ビルの屋上。

そこには、複数のRAVEN隊員が集まっていた。

しかし、隊長らしき人物の姿はない。

神崎の姿も見当たらなかった。

「計画は順調だな……」

隊員の一人が、そう呟いた。

「……なんの計画だ?」

背後から声が響いた。

「……!?」

隊員たちが一斉に振り返る。

そこには、ノワールナイトが立っていた。

「ノワールナイト!?」

次の瞬間、ノワールナイトが動いた。

一人目を蹴り倒し、続く隊員の攻撃をかわして反撃する。

次々と隊員たちが倒れていった。

「お前たちのボスはどこだ!」

ノワールナイトが叫ぶ。

「計画とはなんだ……?」

倒れた隊員の胸ぐらをつかむ。

「神崎という刑事はどこにいる!」

しかし、誰も答えようとはしなかった。

そのとき――。

一人の隊員が、大型のガトリングガンを持ち出した。

「死ね! ノワールナイト!」

銃口が火を噴いた。

「くっ……!」

ノワールナイトは転がりながら、降り注ぐ弾丸をかわしていく。

だが、銃撃は止まらない。

距離が開き、反撃の隙も見つからなかった。

「くそっ……このままじゃ……!」

その瞬間。

銃声が途絶えた。

「……?」

ノワールナイトが顔を上げる。

ガトリングガンを構えていた男が、地面に倒れていた。

その向こうに、一人の女が立っていた。

黒いライダースーツ。

そして、顔を覆う黒いヘルメット。

「あなたがノワールナイトね」

女は、倒れた男を一瞥した。

「久しぶりの登場なのね。ずいぶん派手に暴れているじゃない」

「……誰だ?」

ノワールナイトは警戒を解かなかった。

女は答えず、屋上を見渡した。

「ここに隊長はいないわ」

「なに……?」

「ここは部下たちのたまり場。あなたが探している場所じゃない」

「……」

「BLANCの計画を知りたい?」

ノワールナイトは女を見据えた。

「なぜ、お前がそれを知っている……?」

「質問が多いこと」

女は小さく息をついた。

「あなたの質問には答えないわ。でも、こいつらの計画なら教えてあげる」

女は街のほうへ視線を向けた。

「BLANCは、この三年間、表舞台から姿を消していた。何もしていなかったわけじゃない。影都を丸ごと作り変えるための準備を進めていたのよ」

「作り変える……?」

「大量の爆弾に、毒ガス。それらを使って、この街を破壊するつもりなの」

ノワールナイトの目が細くなる。

「街を……破壊するだと?」

「ええ。建物だけじゃない。住民も含めて、何もかもを消し去る。そして、一から新しい都市を作り上げる」

女は淡々と続けた。

「もちろん、そこに暮らすのは自分たちの組織に従う者たち。影都を、自分たちだけが支配する街に変えるつもりなのよ」

「……!」

「三年もの間、準備を続けてきた。そして、あなたが復活する気配もないと判断した。だから、ついに計画を実行に移したの」

女はノワールナイトを見た。

「銀行襲撃も、その一環よ。資金を集めるだけじゃない。警察の注意を引きつけ、捜査を分散させる。街のあちこちで動き始めれば、警察もすべてを追いきれなくなるでしょう?」

ノワールナイトは黙って聞いていた。

銀行強盗は、単なる犯罪ではなかった。

すべては、影都を壊滅させるための計画につながっていたのだ。

「……なぜ、そこまで知っている?」

女は小さく笑った。

「さあ、なぜかしらね」

そう言うと、ポケットから一枚の紙を取り出した。

「これを」

女が差し出した紙を、ノワールナイトは受け取った。

そこには、ある場所の住所が記されていた。

「ここがRAVEN隊長の居場所よ」

「……!」

「神崎とかいう刑事も、そこにいるんじゃない?」

ノワールナイトは、女を見据えた。

「どこの誰かも知らないお前を、信用しろと?」

「別に、信用しなくていいわ」

女はあっさりと言った。

「でも、ほかに手がかりはないんでしょ?」

「……」

「信じるかどうかは、あなた次第よ」

女は背を向けた。

「それじゃあね、ノワールナイト」

次の瞬間、女は屋上の縁へ駆け出した。

「おい、待て!」

女はそのまま、ビルから飛び降りた。

ノワールナイトが駆け寄って下を覗き込む。

だが、すでに女の姿はなかった。

「……なんて身軽な動きだ」

ノワールナイトは、しばらく闇を見つめていた。

「まるで……RAVENじゃないか」

――相馬モータース。

夜。

蓮は相馬に、屋上で起きた出来事を話していた。

例の女から渡された紙も、机の上に置かれている。

相馬は紙に目を落とした。

「……やめておけ」

「え?」

「何かの罠かもしれんぞ」

「ああ……分かってる」

蓮は静かに答えた。

「それでも、行くしかない。決着をつけるんだ……RAVENと。そして、BLANCと……」

「おい」

相馬が蓮を見た。

「怒りに身を任せようとしてないか?」

「……」

「何か、焦ってないか?」

「焦ってなんかない」

蓮は拳を強く握りしめた。

「ようやく……父さんを殺した相手に会えるんだ」

相馬は目を細めた。

「それを焦っていると言うんだ」

「……」

「もっと冷静に、そして慎重になれ。そう言ってるんだ」

「十分冷静さ」

相馬はしばらく蓮を見つめていた。

「……奴をどうするつもりだ?」

「……」

「殺すのか?」

蓮は答えなかった。

「それに、相手はただの悪党じゃない。相当鍛えられた傭兵だ。なんの策もなしに勝てる相手じゃない……」

「明朝、出発する」

蓮はそれだけ言った。

「もう少し作戦を練るんだ」

相馬の声が強くなる。

「もう一度言うが、やみくもに突っ込んで勝てる相手じゃないぞ!」

「……」

蓮は何も言わず、自分の部屋へ戻っていった。

「おい、待て! 蓮!」

返事はなかった。

相馬は深いため息をついた。

「まったく……誰に似たんだか……」

――翌朝。

相馬モータース。

まだ街が静まり返っている時間。

ノワールナイトは、すでにナイトスーツを身にまとっていた。

誰にも告げず、静かに店を出る。

黒いバイクにまたがり、エンジンをかけた。

そして、走り出した。

その後方。

小さなドローンが、静かに飛び立った。

『おい、聞こえるか……蓮』

マスクの通信機から、相馬の声が響いた。

「相馬さん……?」

『まったく……世話の焼けるやつだ』

相馬はモニターを見つめていた。

『俺もドローンでお前の後を追う。できる限りのサポートをする』

「……」

『俺が直接行けば、足手まといになりかねんからな』

相馬は少し間を置いた。

『だが、お前を一人では行かせない』

ドローンのカメラが、前方を走るノワールナイトを捉えていた。

『到着したら、俺の指示に従え。このドローンのカメラで状況を確認しながら、お前をサポートする。いいな?』

「ああ……分かった」

ノワールナイトは前を見据えた。

その先にいるのは、RAVEN隊長――黒羽零司。

そして、父の命を奪った男。

蓮はアクセルを握り込んだ。

黒いバイクが、朝の街を駆け抜けていく。

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