第32夜 悪魔の策略
――翌日。
刑務所。
独房。
デビルはベッドに座っていた。
周囲を警官たちが通り過ぎる。
突然――
「ヒャハハハハハ……!」
高笑い。
警官が振り返る。
「何がおかしい!」
「少し黙れ!」
デビルは笑い続ける。
「そりゃあ、おかしいさ……」
「何もかもな」
――その時。
刑務所内のモニターが突然――
真っ黒になる。
「……?」
警官たちがモニターを見る。
そこに――
デビルの声。
『白石美咲』
そして――
美咲の写真。
『この女を殺した奴に……報酬をやる』
『一億だ』
『殺した者は、この番号に連絡しろ』
画面に電話番号が表示される。
警官たちが騒然となる。
「なんだ、この映像……!」
「誰が流した!」
「すぐに彼女を保護するんだ!」
――相馬モータース。
蓮と相馬も、その映像を見ていた。
二人の顔が険しくなる。
「……美咲」
相馬が立ち上がる。
「彼女のところに早く行くぞ!」
「ああ!」
――夜。
雨が降っている。
美咲が一人、帰り道を歩いていた。
その時――
遠くから、車の音。
「美咲!」
蓮の声だった。
美咲が振り返る。
――パンッ!
銃声。
美咲の身体が揺れる。
腹部から――
真っ赤な血が流れる。
「……」
その場に倒れる。
少し離れた場所。
銃を持った男が笑っている。
「ハハハハハ!」
「あなたの言う通り、計画を実行しましたよ」
「デビル様」
――そこへ。
「美咲さん!」
蓮と相馬が駆けつける。
蓮が美咲のもとへ駆け寄る。
「美咲さん!」
身体を抱き起こす。
「美咲さん! 返事してくれ!」
しかし――
身体は冷たい。
もう息をしていなかった。
「……」
蓮の手が震える。
そして――
男へ振り向く。
次の瞬間。
蓮が男へ襲いかかる。
「うわぁぁぁぁぁ!」
何度も。
何度も。
何度も。
男の顔を殴りつける。
顔は腫れ上がり、血に染まっていく。
それでも――
男は笑っていた。
「ハ……ハハ……」
蓮はさらに殴ろうとする。
その腕を――
相馬が掴む。
「もういい!」
「やめろ、蓮!」
「蓮!」
「いいから落ち着け!」
蓮は息を荒げる。
やがて――
ゆっくりと力を抜く。
地面には、男が持っていた銃。
蓮はそれを拾い上げる。
そして――
男へ銃口を向ける。
「おい!」
相馬が叫ぶ。
「悪が裁かれたからって、失ったものが戻ってくるわけじゃない」
蓮の目は、男を睨み続けている。
男が震える。
「わ、分かった……」
「もう許してくれ……」
「俺は……この日に動画を流して、あの女を殺せと……デビル様から命令されてただけなんだ……」
蓮の目が動く。
「……なんだと?」
「最初から……お前が殺すつもりだったのか?」
「ああ……」
「なんでそんな……」
蓮が銃を握る。
「まだ隠してることはないか!」
「言え!」
男は震えながら答える。
「あ、あとは……」
「女が最近、親しげにしていた男……」
「あれは警察官だ……」
「その男と女が付き合うように、お前が仕向けろと言われて……」
「いろいろ手回ししたんだ……」
「もうそれだけだ……」
「勘弁してくれ……」
――雨の音だけが響いていた。
蓮はゆっくりと美咲を見る。
「……美咲」
返事はない。
雨が降り続いている。
蓮は静かに銃を下ろした。




