第31夜 一年後
一年後。
街。
人々が行き交っている。
その中に――
美咲がいた。
隣には、一人の男。
二人は楽しそうに話している。
男の名は――
高瀬英雄。
警察官だった。
――その頃。
相馬モータース。
蓮はモニターに映る防犯カメラの映像を見ていた。
そこには、美咲と英雄。
相馬が蓮を見る。
「……大丈夫か?」
「俺には関係ないだろ」
蓮は映像を見つめたまま答える。
「どこの誰と話そうが……美咲さんの自由だ」
相馬は何も言わない。
「……そうか」
――昼。
蓮は昼食をとるため、ファミレスに立ち寄っていた。
店内を見渡す。
その時――
見覚えのある姿が目に入った。
白石美咲。
そして、その向かいに座っている男。
高瀬英雄。
二人は親しそうに話していた。
蓮の足が止まる。
その瞬間――
美咲と目が合った。
「……」
「……」
二人とも、気まずそうに視線を逸らす。
その様子に気づいた英雄が、美咲を見る。
「知り合い?」
「会社の先輩なの」
美咲が答える。
「そっか、そっか」
英雄は蓮を見る。
そして――
「なら、こっちに誘ってさ。一緒に食べようよ!」
「え?」
蓮は戸惑う。
「いや、俺は……」
「いいじゃん! せっかくだし!」
英雄は笑いながら蓮を誘う。
蓮は少し迷った。
しかし――
「……分かった」
二人の席へ向かう。
そして――
蓮は美咲の隣に座った。
三人で食事を始める。
しばらくして――
英雄が蓮に話しかける。
「君さ、ノワールナイトって知ってる?」
「ああ」
蓮は答える。
「今、世間を騒がせてる話題のマスク男でしょ?」
「そうそう!」
英雄は楽しそうに笑う。
「君はどう思う?」
「んー……」
蓮は少し考える。
「正直、僕はあまり良くは思わないですね」
「え?」
英雄が驚く。
「あんなの、自己満足でやってるだけですよ」
「そうかな?」
英雄は首を傾げる。
「ノワールナイトが出てきてから、実際に犯罪の数は減ってきているんだ」
「少なくとも、その存在が犯罪者たちの抑止力になっているよ」
蓮は黙って英雄を見る。
英雄は続ける。
「俺はノワールナイトのファンなんだ」
「だから――」
英雄は笑う。
「ノワールナイトのような、強い警官を目指してる!」
「そうなんですね」
蓮は短く答える。
その隣で――
美咲は静かに二人の会話を聞いていた。
――それから約三十分。
三人の食事は終わった。
店の前。
「今日は楽しかったよ! ありがとう!」
英雄が笑顔で言う。
「こちらこそ」
蓮が答える。
「それでは、また」
三人は別れる。
蓮は歩き出す。
その背中を――
美咲が静かに見つめていた。
――夜。
小さなレストラン。
窓際の席に、美咲と英雄が向かい合って座っていた。
テーブルには、二人分の料理が並んでいる。
「これ、美味しいね」
英雄が笑う。
「うん。前に来たときも美味しかったよ」
美咲も笑顔で答える。
「美咲さん、こういう店よく知ってるよね」
「たまたま見つけただけだよ」
二人は料理を食べながら、楽しそうに話を続ける。
仕事の話。
最近あった出来事。
そして――
他愛のない話。
英雄がふと、美咲を見る。
「……今日は誘ってくれて、ありがとう」
「こちらこそ。付き合ってくれてありがとう」
美咲は小さく笑う。
英雄も笑い返す。
二人の間に、穏やかな時間が流れていた。
――まるで。
何も知らない二人だけの、普通の夜だった。




