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ノワールナイト  作者: Dai
第二章 地獄のデビル編

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第33夜 黒い騎士

――数日後。

警察署。

取調室。

デビルは椅子に座っていた。

神崎が向かいに座る。

「……お前の目的は何だ」

デビルは笑う。

「ヒャハハ……」

その時――

扉が開く。

高瀬英雄が入ってくる。

その手には――

銃。

「おい!」

神崎が立ち上がる。

英雄はデビルへ銃を向ける。

「お前が美咲を殺したんだろ!」

「お前を殺す!」

「やめないか!」

警官たちが英雄を取り押さえる。

デビルは笑う。

「俺は何もしてないさ」

「だが――」

デビルは英雄を見る。

「殺すなら殺せよ」

「それで、お前の気持ちが晴れるならな」

英雄は銃を強く握る。

だが、警官たちに取り押さえられる。

「ヒャハハハハハ!」

「お前……!」

デビルが笑いながら言う。

「あの動画は、俺が捕まる前に流そうと思って撮ったやつだぜ?」

「誰かが勝手に流したのさ」

「……」

「ノワールナイトじゃないか?」

神崎が睨む。

「ノワールナイトはそんなことはしない!」

「だとしても――」

デビルは笑う。

「あの女とノワールナイトは親しかった」

「あの動画は街中に流れている」

「目には入っていたはずだ」

「なのに救わなかった」

「奴は女を見捨てたんだ」

神崎は黙っている。

「本当に悪いのは俺か?」

デビルの口角が上がる。

「お前に嫉妬して、救えた命を救わなかったノワールナイトじゃないか?」

「本当に悪いのは――」

「動画を流した奴と、女を見捨てたノワールナイトだ」

「お前に嫉妬して、奴が流した可能性だって、十分ありうる」

神崎が低い声で言う。

「耳を貸すな」

英雄はしばらく黙っていた。

やがて――

「……もういい」

「離してくれ」

少し落ち着きを取り戻した英雄は、そのまま部屋を出ていく。

神崎はデビルを見る。

「お前……」

「なぜそこまでノワールナイトに執着する?」

デビルは笑う。

「ヒャハハハハ!」

「執着なんてしてないさ」

「俺とあいつは――似た者同士なんだ」

「これはゲームなのさ」

「この退屈な世の中に、やっと骨のある遊び相手ができたんだ」

「楽しまなきゃ損だろ?」

「ヒャハハハハハハ!」

――高笑いが響く。

――その頃。

相馬モータース。

蓮は相馬から話を聞いていた。

「英雄という警官は、純粋で素直なやつだった」

「だから、洗脳しやすいと思ったんだろう」

相馬は静かに続ける。

「最初から、こうなることを狙っていたんだ」

「警官に人殺しをさせれば、それはそれで大問題だ」

「その警官に、お前への復讐心を持たせる」

「お前を精神的に追い詰める」

相馬は拳を握る。

「そんな状況を……あいつは楽しんでいるんだろう」

――そして。

英雄は――

神崎の家族を人質に取った。

廃墟。

神崎の妻と子供。

英雄が銃を向けている。

「ノワールナイトの居場所を言え!」

「分からない!」

神崎が叫ぶ。

「本当に分からないんだ!」

「さっさと言え!」

「だが……連絡はしておいた」

「だから、家族を解放してくれ……」

「そうか……」

英雄は銃を握る。

「だがな」

「俺は大切な人を失ったんだ」

「俺だけじゃ不公平じゃないか?」

「ノワールナイトと親しくしてるあんたも同罪だ」

「……」

「あんたも大事なものを失ったら、俺の気持ちが分かるはずだ」

「頼む……」

「やめてくれ……」

その時――

遠くからサイレン。

「……!」

英雄が振り返る。

「警察を呼んだのか……」

「誰も呼ぶなと言ったろ!」

神崎が答える。

「場所までは伝えていない……」

「もうよすんだ!」

――その声とともに。

闇の中から――

ノワールナイトが現れる。

「ノワールナイトか……」

英雄が笑う。

「待ってたぞ」

ノワールナイトは静かに言う。

「お前が復讐したいのは俺のはずだ」

「その人たちは関係ない」

「解放してやれ」

英雄はしばらく黙る。

「……いいだろう」

そして――

銃口をノワールナイトへ向ける。

「お前はなぜ美咲を救わなかった」

「動画を見た瞬間に、すぐに駆けつけた」

「だが……すでに殺されていた」

「デビルは動画を流した瞬間に、彼女を殺すよう男に命じていた」

「その男は……一年も前から二人を見張っていた」

「俺は超人じゃない」

「全ての人を救えるわけじゃない」

「だが……努力はしている」

「分かってほしい」

「黙れ!」

英雄が叫ぶ。

「分かるわけないだろ!」

「お前はヒーローなんだろ!」

「ヒーローは、どんな状況でも人を救えるはずだ!」

「開き直るな!」

ノワールナイトは黙っている。

そして――

「……確かにそうだ」

「俺には……謝ることしかできない」

「すまなかった」

「本当に……」

「やめろ……」

英雄の声が震える。

「やめろ……やめろやめろやめろ!」

「お前に謝ってほしいわけじゃない!」

「俺はただ……」

「救ってほしかったんだ……」

英雄の目から涙が落ちる。

「俺が憧れたヒーローなら……」

「ヒーローらしく……」

英雄はその場にしゃがみ込む。

そして――

「やっぱり、お前が許せない……」

ノワールナイトを見上げる。

――パァン!

銃声。

ノワールナイトの身体が揺れる。

膝をつく。

「ノワールナイト!」

神崎の子供が叫ぶ。

英雄は銃を自分へ向ける。

「俺も……すぐに会いに行くよ」

「美咲……」

――パァン。

銃声のあと、英雄はその場に倒れた。

神崎が駆け寄る。

「ノワールナイト!」

「大丈夫か!」

ノワールナイトは腹部を押さえる。

「俺なら平気だ……」

「早く……家族のもとへ行ってやってくれ」

神崎がノワールナイトを見る。

「……」

「奴は……俺が殺したことにしろ」

「なぜ……」

「デビルの犠牲者にしたくない」

「警察官の自殺は……この犯罪の多い街にとって、正義が悪に屈したことになる」

「あなたたち警察が……この街の希望であり、正義なんだ」

「だから……」

「何があっても、屈してはならない……」

神崎が呟く。

「何を言っているんだ……」

「ノワールナイト」

「あんたこそ……正義のヒーローじゃないか」

ノワールナイトは首を横に振る。

「俺は……ヒーローなんかじゃない」

「それに……正義なんて大層なものを背負うことなんてできない」

「俺は……ただの人間だ」

「もうこれ以上は……戦えない」

「人々の苦しむ姿を……これ以上見たくない」

「この街のために……」

「あなたたちのために利用されるなら……それでいい」

神崎は何も言えない。

「……言う通りにするんだ」

「徹底的にやれ」

「俺を指名手配にするんだ」

「正義のため……」

「この街の治安のために」

ノワールナイトは立ち上がる。

腹部を押さえながら――

ふらつく。

それでも歩き出す。

「ノワールナイト……」

ノワールナイトは振り返らない。

――雨が降り始める。


そして――

数日後。

テレビのニュース映像。

『警察官殺害事件について、新たな情報です』

画面には――

「ノワールナイト、警察官殺害か」

というテロップ。

『事件現場では、警察官の高瀬英雄さんが死亡しており、警察はノワールナイトが関与した可能性が高いとみて――』

街では人々がニュースを見ている。

「やっぱり、あいつは犯罪者だったんだ」

「警察官まで殺すなんて……」

――警察署。

捜査会議。

「警官殺しのノワールナイトを、我々が絶対に捕まえてみせるぞ!」

「はい!」

警察官たちが一斉に立ち上がる。

そして――

武装した警察官たちがパトカーへ乗り込んでいく。

サイレンが鳴り響く。


――そして、現在。

事件現場。

神崎の子供が、遠ざかっていくノワールナイトを見る。

「ノワールナイトは……何も悪いことしてないよ……」

神崎は少し黙る。

そして――

「ああ、そうだな」

ノワールナイトの背中を見つめる。

「だが……」

「これが、彼が決めた道なんだ」

ノワールナイトは振り返らない。

雨の中を歩いていく。

黒いマントが風に揺れる。

神崎が静かに言う。

「彼は……ヒーローじゃない」

少しの間。

「それを越えた存在……」

さらに遠ざかるノワールナイト。

「黒い騎士だ」

ノワールナイトの姿が――

夜の闇に溶けていく。

遠くで、パトカーのサイレンが響く。


――第二章 完。

そして、最終章へ――。


第三章 壮絶決戦編開幕――。

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