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ノワールナイト  作者: Dai
第二章 地獄のデビル編

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第26夜 救う者

静寂。

暴走していた電車は、ようやく停止していた。

ノワールナイトは先頭車両で荒い息をついていた。

「……止まった……」

肩で息をする。

全身から力が抜けていく。

「……みんな……無事か……」

その時だった。

一歩、後ろへ下がる。

ガクッ。

「……っ!」

足元が崩れた。

車体の端から、身体が滑る。

「くっ……!」

落ちる――

その瞬間。

ガシッ!

誰かの手が、ノワールナイトの腕を掴んだ。

「大丈夫か!」

ノワールナイトが振り返る。

「……!」

一人の乗客だった。

「こっちだ!」

別の乗客も手を伸ばす。

「掴まれ!」

「みんなで引っ張れ!」

一人。

また一人。

次々と手が伸びてくる。

ノワールナイトの腕を掴む。

肩を掴む。

身体を支える。

「せーの!」

「引っ張れ!」

「うおおおおっ!」

そして――

ノワールナイトは、乗客たちによって車内へ引き上げられた。

ドサッ。

しばらく、誰も言葉を発さなかった。

ノワールナイトも何も言わない。

ただ、荒い息を整えている。

その時。

一人の乗客が口を開いた。

「……ありがとう」

ノワールナイトが顔を向ける。

「助かったよ」

「本当にありがとう!」

「あなたが来てくれなかったら、俺たちは……」

「ありがとう……!」

一人。

また一人。

感謝の言葉が広がっていく。

そして――

パチ……

誰かが手を叩いた。

パチ……パチ……

その音が、少しずつ大きくなっていく。

パチパチパチパチ……!

車内に拍手が響き渡る。

ノワールナイトは、何も言わなかった。

ただ、その光景を見つめていた。

自分を支えてくれている人たち。

守るはずだった人たち。

その人たちが――

今、自分を支えている。

そして、その中に――

見覚えのある姿があった。

「……」

白石美咲。

美咲もノワールナイトを見つめていた。

ノワールナイトは、何も言わない。

言えるはずがない。

ただ――

ほんの少しだけ、頷いた。

美咲の目が揺れる。

「……え……?」

なぜか、蓮の姿が頭に浮かんだ。

「……そんなわけ、ないよね……」

だが、ノワールナイトは何も答えなかった。

ゆっくりと立ち上がる。

そして、乗客たちへ背を向ける。

ふらつきながらも、電車を降りていく。

その先には――

ナイトタンク。

ノワールナイトは、ゆっくりと乗り込んだ。

車体に乗り込む直前――

ナイトタンクから伸びていたワイヤーが次々と外れる。

ガシャン。

ガシャン。

そして、役目を終えたワイヤーが地面へ落ちていく。

ノワールナイトは何も言わない。

ただ、ナイトタンクを走らせる。

遠ざかっていく黒い車体。

美咲は、その後ろ姿を見つめ続けていた。

ナイトタンクは街へ消えていく。

その頃。

相馬モータース。

地下整備場のモニターには、先ほどの事件の映像が流れていた。

相馬は黙って画面を見つめている。

そこには、電車を止めたノワールナイトの姿。

そして――

市民に助けられるノワールナイトの姿が映っていた。

相馬は小さく息を吐く。

「……やったな、蓮」

誰もいない地下整備場に、その声だけが響いた。

一方――

まだ明るい街。

ナイトタンクが走っている。

その運転席で、蓮は静かに前を見つめていた。

まだ身体は重い。

腕も痛む。

それでも――

もう、立ち止まるつもりはなかった。

ドリームランドで救えなかった人たち。

その記憶は、消えない。

きっと、これからも消えることはない。

それでも――

蓮は前を見る。

まだ、戦いは終わっていない。

ナイトタンクは、朝の街を走り続けていた。


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