↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノワールナイト  作者: Dai
第二章 地獄のデビル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/47

第23夜 敗北

――あと50分。

ノワールナイトは、ナイトバイクを走らせていた。

夜の街を、猛スピードで駆け抜けていく。

「相馬さん!」

通信機から相馬の声が返ってくる。

『どうした?』

「ドリームランドに爆弾が仕掛けられた!」

『何だと!?』

「デビルが仕掛けた。あと一時間程で爆発する!」

『分かった。こっちでも情報を集める!』

その頃。

神崎と、その部下である高瀬英雄たちも車でドリームランドへ向かっていた。

神崎は通信機を手に取る。

「こちら神崎。ドリームランドに爆弾が仕掛けられている可能性がある!」

『本当ですか!?』

「確証はまだない。だが、すぐに避難命令を出すよう上に報告してくれ!」

『了解しました!』

神崎は通信を切る。

「急げ……!」

車のアクセルが踏み込まれる。

一方、ノワールナイトはナイトバイクをさらに加速させていた。

赤信号。

止まらない。

交差点を抜ける。

車の間をすり抜け、狭い路地へ入る。

少しでも早く。

少しでも近くへ。

頭の中に、デビルの言葉がよみがえる。

――子供や家族、年寄り……。

――多くの死者が出るな!

「……絶対に間に合わせる」

ノワールナイトは、さらに速度を上げた。

相馬から通信が入る。

『蓮!』

「何だ!」

『ナイトバイクに爆発物探知機を搭載してある。ドリームランドに着いたら、それを使え!』

「分かった!」

『爆弾処理も俺たちの仕事だ。忘れるな!』

「分かってる!」

『教えた通りにやれよ!』

「了解!」

ノワールナイトは前方を見据える。

そして――

「あと30分……」

小さく呟いた。

時間だけが、刻々と過ぎていく。

* * *

ドリームランド。

園内は、騒然としていた。

「皆さん、係員の指示に従って避難してください!」

「こちらへお願いします!」

突然の避難命令。

何も知らない客たちは混乱していた。

泣き出す子供。

叫ぶ人々。

不安そうに家族の手を握る親。

何が起きているのか分からず、周囲を見回す人々。

その頃――

ノワールナイトがドリームランドの近くへ到着した。

「……あと15分」

ナイトバイクを止める。

すぐに探知機を取り出す。

「爆弾を探さないと……」

ノワールナイトは探知機を手に、走り出した。

その時――

ドンッ!!!

凄まじい爆発音が響いた。

「!?」

次の瞬間。

轟音。

爆風。

炎。

すべてが一瞬で飲み込まれていく。

「ぐあっ……!」

ノワールナイトの身体も爆風に吹き飛ばされる。

地面を何度も転がり――

瓦礫の中へ叩きつけられた。

そして――

静寂。

その後を追うように、遠くからサイレンが響き始めた。

救急車。

消防車。

パトカー。

何台もの車が現場へ駆けつけていく。

崩れ落ちた建物。

立ち上る黒煙。

炎に包まれた瓦礫。

そして――

そこには、多くの犠牲者が残されていた。

* * *

その頃。

どこかの暗闇。

一人の男が立っていた。

デビル。

その手には、小さなスイッチが握られている。

「ヒャハハハハハ……」

デビルは笑っていた。

「どうだ……ノワールナイト」

「間に合わなかっただろう?」

スイッチを見つめながら、楽しそうに笑う。

「これが……俺からのプレゼントだ」

「ヒャハハハハハハハハハ!」

* * *

しばらくして。

瓦礫の中から、ノワールナイトがゆっくりと身体を起こした。

「……う……」

頭を押さえる。

視界がぼやけている。

ノワールナイトは立ち上がった。

そして――

目の前に広がる光景を見つめる。

崩れた建物。

炎。

瓦礫。

救助に走る消防隊員。

ノワールナイトは、何も言わずに立ち尽くした。

「……間に合わなかった」

拳を握る。

そして――

瓦礫へ駆け寄った。

「誰か……!」

瓦礫を持ち上げる。

「誰かいないか!」

さらに瓦礫をどかす。

「返事をしてくれ!」

しかし――

返事はない。

ノワールナイトは別の場所へ走る。

瓦礫をどかす。

また探す。

それでも――

生存者は見つからない。

「……誰か……」

声が震える。

「誰か、いてくれ……」

だが――

誰もいなかった。

一人も。

* * *

それからしばらくして。

神崎たちが現場へ到着した。

車から降りる。

目の前に広がる惨状。

神崎は言葉を失った。

「これは……」

高瀬英雄も、呆然と現場を見つめる。

「……間に合わなかったか」

神崎は拳を握る。

「くそっ……」

英雄が瓦礫を見つめる。

「こんなこと……よくできたもんだ……」

唇を噛む。

「これが人間のやることかよ……」

そして――

小さく呟いた。

「まるで……悪魔だ」

神崎が答える。

「ああ……」

「俺たちが相手にしている者は、化け物だ」

「一筋縄ではいかない……」

英雄は辺りを見回した。

「ノワールナイトは……どうしたんでしょうか?」

神崎はしばらく黙っていた。

「さあな……」

「どこかで……悔やんでいるかもな」

英雄は拳を握った。

「神崎さんは、ノワールナイトにいつも会っているんですよね?」

「ああ」

「俺も……会っていいでしょうか?」

神崎は英雄を見る。

「今日は会えるか分からんぞ」

「……はい」

その後ろで、別の部下が呟いた。

「俺も……会ってみたい」

そして――

「……何がヒーローだ」

* * *

深夜。

街を流れる川。

その橋の上に、ノワールナイトは一人で座っていた。

眼下を流れる川を、ただ見つめていた。

何時間経ったのか分からない。

ただ、動けなかった。

ドリームランドで起きたこと。

救えなかった命。

デビルの笑い声。

何度も頭の中をよぎる。

そしてーー

ノワールナイトは、一人で悩み続けていた。

いつもなら――

神崎と会う屋上へ向かう時間だった。

だが、今日は違う。

長い時間、ノワールナイトは川を見つめ続けていた。

深夜。

いつもの屋上。

神崎たちは、そこにいた。

英雄が辺りを見回す。

「ノワールナイトは……まだ来ないんでしょうか?」

「ああ……今日は、会えなそうだな」

「仕方ない……」

その時だった。

ノワールナイトが現れる。

「……来たのか」

だが――

一人の部下が前へ出る。

「……あれだけ犠牲者を出しといて」

「よくのうのうと現れることができたな!」

ノワールナイトは何も言わない。

「お前が救えなかったせいだ!」

「生存者は一人もいなかったんだぞ!」

「一人もだ!」

英雄が拳を握った。

「……爆発が大きすぎた」

神崎が部下を睨む。

「やめないか!」

「みっともない!」

「救えなかったのは俺たちも同じだ!」

「責任を擦り付けるな!」

「……くっ」

部下は拳を握り、黙り込む。

しばらくの沈黙。

そして――

英雄がノワールナイトを見る。

「ノワールナイト……」

ノワールナイトは俯いたまま答えた。

「……すまなかった」

神崎が眉をひそめる。

「俺は……」

「もう、ノワールナイトをやめる」

「……何を言ってる」

「もう限界だ」

声が震える。

「この勝負は……デビルの勝ちだ」

「どうあがいても、俺はデビルには勝てない」

神崎が一歩近づく。

「あんたがいなくなったところで、奴は殺人をやめはしない!」

「やつは……イカれた快楽殺人鬼だ」

ノワールナイトは黙っていた。

やがて――

「ああ……そうだな」

「だが……」

拳を握る。

「これ以上、俺のせいで犠牲者を出したくない」

「俺が戦い続ければ、また誰かが殺される」

神崎は何も言えない。

その時。

英雄が叫んだ。

「逃げるのか! ノワールナイト!」

「あんたはヒーローだろ!」

「一度失敗したからって、全部を投げ出すのかよ!」

「俺たちには……あんたが必要だ!」

ノワールナイトは静かに答える。

「……俺の存在が、あの悪魔を生み出した」

英雄が目を見開く。

「これ以上は……無理だ」

「すまない……」

そして――

ノワールナイトは背を向ける。

「ノワールナイト……」

英雄が呟く。

神崎は、その背中を見つめる。

「……これは荒れるな」

やがて――

ノワールナイトの姿は、夜の闇へ消えていった。

* * *

数日後。

テレビでは、ドリームランド爆破事件が連日報道されていた。

『ドリームランド爆破事件について、警察は現在も捜査を続けています』

『現場にはノワールナイトも駆けつけていましたが、多数の死傷者が出ました』

『世間からは、ノワールナイトに対する厳しい声も上がっています』

街では、人々が事件について話していた。

「ノワールナイトがいたのに、なんで救えなかったんだ?」

「そもそも、あいつが犯罪者を刺激してるんじゃないのか?」

「警察に任せればいいんだよ」

その言葉を――

蓮は何も言わずに聞いていた。

自分自身も、同じことを考えていた。

「俺が……もっと強ければ」

「俺は……」

蓮は俯く。

「何のために……ノワールナイトをやってるんだ……」

* * *

それから――

蓮は会社を休んだ。

一日。

二日。

一週間。

部屋に閉じこもる。

カーテンも開けない。

スマートフォンにも、ほとんど触れない。

美咲から何度も連絡が来ていた。

だが――

蓮は電話に出なかった。

相馬も、何も言わなかった。

言えなかった。

慰めの言葉も。

励ます言葉も。

今の蓮には、ただ苦しませるだけだと分かっていたから。

* * *

数週間後。

テレビ。

『ノワールナイトが姿を消してから、数週間が経ちました』

『その間、各地で犯罪が相次いでいます』

『ノワールナイトは今――』

『どこで何をしているのでしょうか』

街の人々からは、様々な声が上がっていた。

「戻ってきて!」

「ノワールナイトがいなくなって、犯罪は増える一方だろ?」

「あんなヒーロー気取りの奴なんていらない!」

「警察に任せればいいのさ!」

「ノワールナイトなんて必要ない!」

テレビの画面を――

相馬は黙って見つめていた。

そして――

テレビを消す。

部屋が静かになる。

相馬は小さく呟いた。

「……蓮」

その声だけが、静かな部屋に残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。